ShowNet 2024 ローカル5G
Interop TokyoのShowNetで行われるローカル5G企画は、今年で3回目です。 2022年はシールドテントの中でデモが行われ、2023年は会場内でいくつかの機器がローカル5Gで通信を行うデモが行われました(参考)。 2022年と2023年は来場者が実際にローカル5Gに触れるという企画ではなかったのですが、2024年に行われた企画は来場者がローカル5Gの機器を手に取れるような内容も含まれているというのが大きな特徴です。
「ローカル5Gはエンタープライズ向けの技術なので、ぜひ来場者の方々にも触ってもらいたい」という想いによって実現した企画だったとのことでした。
ShowNetウォーキングツアーでの利用
ShowNet 2024では、ShowNetウォーキングツアー(以下、ウォーキングツアー)をローカル5Gを使って会場内で配信していました。 ウォーキングツアーは、1回20人から30人ぐらいの参加者がいますが、会場内を歩き回りながらラック前に立ち止まってツアー担当のNOCメンバーが説明を行います。 このとき、ラックの前に数十人のウォーキングツアー参加者が集まる状況になりますが、説明が行われている間にラックの中にある機材を見ることができるのは先頭の人々だけで、後方の参加者の方は説明中にラック内を観察できないことが課題でした。
ShowNet 2024では、ウォーキングツアー参加者にローカル5Gを利用できる端末を貸し出し、ブラウザで映像を見られるようにしてありました。 各ウォーキングツアーに撮影スタッフが同行し、撮影カメラ一台によるウィーキングツアーのライブ中継が行われました。 撮影された映像はSRTプロトコルによってローカル5G網を通って,ShowNetのMoIPネットワークに設置されたデコーダを経由してスイッチャに入り、スイッチャで発表スライドを入れる編集もリアルタイムで行われたため、ウォーキングツアー参加者は、ツアー中に説明されているラックの様子だけではなく、関連する内容を紹介するためのスライドも同時に見ることができました。 スイッチャで編集後、参加者端末への映像配信は低遅延ライブ配信プラットフォームであるSmart vLive (NTTコミュニケーションズ) を用いて行われていました。
ShowNetで、Wi-Fiを利用して同様のことを行うのは困難ですが「ローカル5Gであれば低遅延かつラインセンスバンドの良さを生かしたギャランティの環境を作れる」というのが強みとして紹介されていました。
動画品質の測定
ローカル5Gを使ったShowNetウォーキングツアーの映像品質を評価するために、中継映像を受信しているスマホ画面をHDMIで出力し、ユーザ体感を推定するMOS値(Mean Opinion Score/平均オピニオン評点)を評価するデモも行われていました。 MOS値は、Spirentの機材で計測されていました。
ネットワーク
ShowNet 2024のネットワークトポロジの左下にローカル5G企画を構成するネットワークが描かれています。 ShowNet 2024のローカル5G企画は、3つの免許(3種類の周波数帯)で行われているため、ネットワーク図としてもローカル5G部分は3本の縦線状になっています。
3つの免許とSub6基地局
ShowNet 2024では、コントリビュータが免許を取得してローカル5Gのデモが行われています。 取得された免許は実用局が2局と実験試験局が1局の、計3局の免許です。 2023年に行われたデモは、実験試験局によるものだったので、実用局によるローカル5GデモはShowNet初でした。
実験試験局と実用局には様々な違いがありますが、ShowNetでの運用上の違いとしては実験試験局の場合は基地局だけではなく、そこに繋がる端末も申請が必要という点があげられます。 実験試験局での運用を行う場合、ローカル5Gの基地局を利用する端末側となる個々のスマホやタブレットにラベルを貼って管理する必要があります。 このため、申請を行っていない私物のスマホを繋げたりするのはNGです。
一方で、実用局であれば、端末ひとつひとつの申請は不要です。 このように、実験試験局と実用局の免許は出来ることに差があるようです。
さて、ShowNet 2024で行われたローカル5Gシステムですが、免許を受けたシステム単位で、NTT-A、NEC、NTT-Bという名称をつけていました。 NTT-AとNECが実用局で端末へのツアー映像配信と一部出展社のローカル5G端末収容をになっていました。NTT-Bが実験試験局で、ツアーでのカメラ映像のアップロード用リンクとして活用されていました。
無線エリアのイメージ
無線エリアのイメージとしては、次の図のようになっています。4ホールと5ホール向けに、4箇所の基地局が4ホールに設置されていました。
漏洩の有無などを確認するための電波状況のモニタリングは、ローカル5G企画が行われた一昨年および昨年に続き、今年も行われています。
ShowNetとは別に、出展社が免許を取得しローカル5Gでデモを行う場合もあり、双方の電波干渉有無を把握するためにもモニタリングが必要だったとのことでした。
NEC
ローカル5Gシステム「NEC」では、オールオンプレ構成のローカル5GパックをShowNetで構築するというものでした。 基地局、オンプレ5Gコア、コントローラの機器3種によるスピード構築が行われたことが展示されていました。
NTT-A
ローカル5Gシステム「NTT-A」では、Celonaという日本初展示のモバイルメーカーの機器を利用してローカル5GをShowNetに構築していました。
NTT-B
ローカル5Gシステム「NTT-B」は、自称「世界一複雑なローカル5G」とのことでした。 UPFとCore、クラウド、の三位一体で、それが全部別ベンダーによって構成されるというものです。 docomoで使っているコアネットワークのアプリと同じものを使っているとのことでした。 さらに、APN(All Photonics Network)の要素技術としてFDN、オンプレの資産の上でAWS k8sと同じことができるAWSサービスのEKS-Anywareなど、様々な要素が詰まっているようです。
ShowNet 2024ローカル5G企画のNTT-Bラインに関して詳しく記事を書こうとすると、その部分だけで凄い文章量になってしまいそうなので、動画取材という形にしました。
PTP
ローカル5Gの運用には、精度の高い時刻同期が求められます。 精度の高い時刻同期のために、GPSに代表されるGNSSを利用した時刻同期が行われますが、ShowNet 2024でホール内にある全ての基地局にGNSSアンテナをつけるのは難しいので、PTPが使われています(PTPに関しては2022年と2023年のローカル5G解説記事もご覧ください)。
GNSSアンテナの冗長構成も大切なポイントのひとつです。 たとえば雷がGNSSアンテナに落ちてしまうなどの問題が発生すると、そのアンテナや、そこと接続している機器に問題が発生してしまうことが考えられます。 そのような問題が発生してPTPによる時刻同期が提供されなくなると、イベント全体に影響を与えてしまいます。 そのため、GNSSアンテナの冗長化もShowNet 2024で行われていました。
さらに、ShowNet 2024では、PTPのGMに接続するためのGNSSアンテナからのケーブルでも面白い機器が使われていました。 同軸と光のメディアコンバータです。 同軸ケーブルに流れる信号を光に変換する機器が使われ、GNSSアンテナと接続するケーブルの途中が光ファイバになっていました。 光による信号は分光器を使って複数の機器とへ届けられていました。
光による信号は、メディアコンバータを利用して、再度同軸に変換されてから分配されていました。 分配後の同軸のひとつに時刻測定器を挿して時刻同期の確認も行なわれていました。
なお、ShowNet 2024でPTPを利用していたのは、ローカル5Gだけではありません。 Media over IP企画でも重要な役割を果たしています。
特殊なSIM
特殊なSIMに関するデモも行われていました。 SIMカードにJavaアプレットが含まれており、SIMカードがサーバとの通信を行って、SIMカードが入れ替えられたときに検知ができるというものです。
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