オーム社電子書籍直販サービス終了に関して
オーム社が電子書籍直販サービスを終了するというお知らせがでていました。 同社では、マスタリングTCP/IP RTP編(2004年)、インターネットのカタチ(2011年)、マスタリングTCP/IP OpenFlow編(2013年)の3冊で関わらせていただいたこともあり、今回廃止される電子書籍直販サービスで拙著も販売されていました。
電子書籍直販サービスが終わるということは、ネット上で話題になっていることで知りましたが、「そのうちこうなるだろうと思っていた」ということが起きました。
10月29日に「運営スタッフ退任のお知らせ」というお知らせが出ており、eBook Store企画運営担当の森田さんが「運営スタッフ退任」とあります。 そのお知らせからは社内異動のようにも読めますが、実際は運営スタッフ退任だけではなく、10月末で退職されたようです。 最後の砦であった森田さんも、もうオーム社にはいないのです。
IT系の方々にとっては、オーム社が出す本は「尖っている」という感想を持っている方々が多いと思います。 今回、電子書籍直販サービスが大きな話題になったのも、そういった背景があります。 私も、著者として同社と関わると同時に、同社のファンでした。
とはいえ、実際はオーム社ではなく、オーム社開発部の4名によるチームが尖っていたのです。 マスタリングTCP/IPシリーズ、リファクタリング、エクストリームプログラミング、達人プログラマー、テスト駆動開発、ハッカーと画家、アジャイルサムライ、情熱プログラマ、などを手がけていたチームは、森田さん、鹿野さん、高尾さんの3人の編集者と、その上司である宇津さん(マスタリングTCP/IP入門編に関わったかた)です。 その4名のチームが尖っていたのです。
何があったのかは私は詳しくは知りませんが、2015年7月に鹿野さんが同社を去りました。そして、宇津さんが2015年11月、高尾さんが2016年7月、森田さんが今回の10月末です。 尖ったIT系書籍を作っていた編集者は、実質いなくなってしまいました。 マスタリングTCP/IPシリーズの新刊はおそらく今後は出ないように思えますし、これまでのような尖ったIT系書籍が同社から出ることも考えにくいです。
電子書籍直販に関しても、そのチームが行っていたことでした。 DRMなしの電子書籍を実現することに関しても、その熱い想いを当時聞いていました。 私が関わった書籍をDRMなしで販売することに関して、当時、迷わずにOKを出しました。 しかし、電子書籍直販の開発や運営を行っていた人材がもう誰も同社に残っていないのです。
今回の電子書籍直販サービス終了は、表向きはサービスの終了ですが、実際は人材流出を止められなかった結果だというのが個人的な感想です。 今回のニュースを見て、電子書籍直販そのものが抱えている構造的な問題のような感想を書かれている方々もチラホラ目にしていますが、これは電子書籍の直販がうまくいかない事例というよりも、単に、運営スタッフが社外に流出してしまっただけかも知れません。
ラムダノート株式会社
オーム社を去った鹿野さんと高尾さんは、いま、IT系の尖った書籍を作る新しい会社を立ち上げています。 現時点で発売されている本のラインナップを見ていただくと、尖った出版社であることがわかると思います。
いま、私はクラウドファンディングで無償で読めるIPv6本を書いています。 クラウドファンディングという手段を選択したのは、電子版を無償で誰でも読めるようにしたいという想いと同時に、また鹿野さんたちと本を作りたいという想いもありました。
ということで、IPv6本の執筆がんばります。
追記
オーム社の電子書籍直販サービスは終了しますが、達人出版会での電子書籍販売は続きます(ただし、扱っていない書籍もあります)。 達人出版会も素晴らしいので、是非!
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