アカマイの新たなバックボーンネットワーク
RIPE 75のライトニングトークで、アカマイが、自社トラフィックを運ぶための専用バックボーンネットワークを構築していることを発表しました。
アカマイは、ユーザに近いところにCDN用のキャッシュサーバを置くために、世界各地に拠点を構築しています。 そういった拠点は、たとえば、ISPの中に構築されたりしています。 これまで、アカマイは拠点間の通信にはパブリックなインターネットを利用していました。 発表では、個々に孤立していたことを示すために各拠点を「島 (islands)」と表現しています(islandsという表現は、RFC等でも割と良く使われます)。
世界中の様々なAS内に拠点を築き、その拠点間トラフィックもパブリックなインターネットを利用していたことは、アカマイの非常に大きな特徴であったとも言えます。 しかし、最近になって、キャッシュサーバ間のトラフィック等を運ぶために、独自のバックボーンネットワークを構築しはじめたとのことでした。
発表では、「Similar to FB, Microsoft, Google, it transports our own traffic between our own equipment (訳:Facebook、Microsoft、Googleのように、それは、我々の機器間のトラフィックを運ぶ)」とあります。 他社と比べて、同様の取り組みを行うことが遅かった理由としては、既に同様のことを行っている他社と比べて拠点やサーバが多地点に分散しているためであると説明していました。
「アカマイはインターネットそのものになろうとしているのではないか」という風に警戒されてしまうことを避ける目的のように思えましたが、発表内で、「What are we not doing (我々は何をしないのか)」というスライドがあり、以下のことを「しない」と言っています。
- IPトランジット、L2VPN、L3VPN、または類似する製品
- パートナーやピアとの競合
- Tier-1になること
- 音声通話やfractional STM1の販売
さて、その新しいバックボーンの構成ですが、発表では「3個の分離されたバックボーン」という風に表現していました。 北米、ヨーロッパ、日本の3箇所で、それぞれ都市間バックボーンが構築されているようです。 これらは、ビジネス的に利益がある箇所に構築されているとありますが、日本では東京と大阪を結ぶ東阪間のバックボーンになっています。
RIPE75発表資料より
発表では、世界の3箇所で個別のバックボーンネットワークを構築した、現段階を「Phase 1」としており、それは完了したとあります。 2018年からは、3箇所のネットワークを互いに接続、BGPでのピアリングを開始、より多くの都市に広げる、通信帯域の拡張、などを行う「Phase 2」に入るとあります。
RIPE75発表資料より
アカマイがキャッシュ間の通信を独自ネットワークで開始するようになったことで、日本国内でも、ISP内やISP間を流れるインターネットトラフィックが変化していたのかも知れません。
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