JAIPAインタビュー - World IPv6 Launch対応

2012/4/25-1

社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA) 会長補佐 NGN-WG 主査  木村孝氏にWorld IPv6 Launch(W6L)対応に関するお話を伺う機会を頂けました。

以下、質問および頂いた回答です。


Q: JAIPAとはどういった組織ですか?NTT IPv6閉域網との関わりや、今回の協議に参加されている経緯を教えて下さい。

JAIPAは、基本的にISPの事業者団体です。 接続事業者の他に、ホスティング事業者やヤフーやDeNAなどのコンテンツ事業者 も入っています。

ISP事業をやっていないNTT東西のようなキャリアは入っていませんが、169の正会員にNTTコミュニケーションズさんやKDDIさん、ソフトバンクさんなどのキャリアを含め、大手ISPも多く含まれています。

JAIPAは2008年から2009年にかけてISPを代表する立場でNTT東西と協議を行い、当時、案2や案4と言われた現在のフレッツ光のIPv6インターネット接続方式の策定に関わりました。


Q: 先日発表されていた内容と中間報告との差分を教えて下さい

JAIPAが今年2月8日に行った説明会(2月24日公表)で出した第1版では案が沢山出ていますが、4月18日に記者向けに行った説明会では主要なもの数案に集約されました。

ここでの説明では詳細は公表していません。 一般に公開していませんが、INTERNET Watchや日経ITProで報道されていますので参照してください。

案の詳細は5月に発表する予定です。

(取材者注:今回の記者発表会の内容は4月8日時点で私が書いた記事の内容と同じようです)


Q: 日本のISPはどこまでIPv6化に積極的なのでしょうか?

ISPにより温度差があります。

IPv6に関して、非常に積極的な日本のISPとしては、NTTコミュニケーションズ、フリービット、KDDI、ソフトバンクBBとIIJがあげられます(取材者注:ただし、IIJはJAIPA会員ではありません、またソフトバンクテレコム、ソフトバンクモバイルはJAIPA会員ですが、ソフトバンクBBもJAIPA会員ではありません)。

設備投資やコストがかかるのに、値上げができず、売上も伸びないことからやりたくてもやれないところもあります。

大きなISPでは、ISPの中にも積極推進派と消極派がいるところもあるようです。


Q: 海外でIPv6サービスを提供しているISPはどれぐらいありますか?

W6L参加ISPはユーザ普及率1%を超えていて、オプション購入なくIPv6対応できる事業者です。

フランスの大規模プロバイダFreeはすでに大半のユーザにIPv6展開を終えているようですが、6月6日以降はComcastやAT&Tなど米国の大手プロバイダも標準対応する予定で、すでに展開が始まっている状況です。

地域的に設備更新されたところから始めていたり、CPEの交換やアップデート、それに局側設備の入れ替えなどがあるので、全体としてはまだまだこれからのようですが徐々に普及してくるのではないかと思われます。


Q: Googleは、NTT IPv6閉域網によるフォールバック問題によって発生する遅延は受け入れ難いということと、日本のISPは積極的にIPv6化を推進すべきであるという、2つの要求を出していると理解しているのですが、そのような理解で正しいですか?

はい、そうです。


Q: Googleは「AAAAフィルタは長期的な解決案として受け入れられない」と発言していますが、今回の対策は基本的にAAAAフィルタが主流です。AAAAフィルタによる対策は、Googleなどのコンテンツ事業者の要求を満たせる内容でしょうか?

今回のNTT東西とJAIPAで合意した案はデュアルスタックユーザー用とIPv4だけのユーザー用にDNSを分けることが内容です。 ISPからすれば、IPv4だけのユーザーのDNSにはAAAAフィルタをすることでとりあえずはフォールバック問題が解決できます。

Googleからすれば、IPv4だけのユーザーのDNSは遅延や失敗が生じる率が高いと分かるので、そのDNSの利用者だけGoogle側からブラックリストにのせてAAAAレコードを出さないようにすると言っています。 ですから両方とも自分の都合よく利用できる2面性があります。

もっともISPがAAAAフィルタをしてしまえば、Google側では遅延や失敗が生じないため、統計的に把握できず、ブラックリストに載せることはできないと私は踏んでいます。

また、仮にISPがAAAAフィルタをしなくても、GoogleについてはそのDNSをブラックリストにのせてAAAAレコードを出さないようにすればフォールバック問題は生じなくなります。 しかしGoogle以外でそういう仕組みを持たないコンテンツには効きません。


Q: 2月に公表されていた中間発表資料(World IPv6 Launchへ の対応について(第1版))に、IPv6 IPoEに関するものも含まれていました。 JAIPAは2009年時点では案4(当時名称。現在はIPv6 IPoE)に大枠で反対されていたと思いますが、現在のIPv6 IPoEに関してどう思われますか?

当初は反対していましたが、ISPの中にはIPoE方式を提供しているところも多数あり、またVNE事業者であるJPNEさんやBBIXさんもJAIPA会員ですので、現在は両方式については中立の立場です。

JAIPA一貫して当初から案4の接続事業者の数を3社から増やすべき、という主張をしてきました。


Q: JANOGでAAAAフィルタリングによってDNSSECに問題が発生する可能性が指摘されていましたが、AAAAフィルタリングによって発生する可能性がある障害について教えて下さい。

端末側でDNSSEC検証している場合、存在するはずのレコードを削除してしまうと検証時に不正な応答とみなされてしまうため、ユーザ側からDNSSEC要求の付与されたDNS問い合わせがあった場合にはAAAAレコードを応答することになると思います。その場合はまたフォールバックが再発することになります。


Q: NTT IPv6閉域網問題は根本を辿ると10年近く前にさかのぼると思いますし、ISPが提供するインターネット接続サービスとの競合という意味では、2007年にBフレッツでIPv6が流れた時点で問題は発生したと推測しているのですが、当時ISP側から問題提起はなかったのでしょうか?

はい、2007年の当時からJAIPAでは注意喚起してきました。

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