ネットが政治を動かす。SOPA/PIPAのDNSブロック条項削除へ

2012/1/15-1

ネット上での激しい反対運動のプレッシャーを受けて、アメリカで進んでいたオンライン海賊行為防止法(SOPAおよびPIPA)に含まれていたDNSブロッキング条項が削除される方向に動いているようです。 PIPAでDNSブロッキング条項が削除される方向に流れ、その次の日にSOPAでも同様の条項が削られると発表されました。

SOPAは、オンライン海賊行為を取り締まるための法案です。 DNSブロッキングによってオンライン海賊行為を行っているサイトを遮断したり、検索エンジンへの掲載をとりやめさせたりできるようになります。 広告ネットワークやクレジットカードなどの決済サービスの停止によって資金流入をストップすることも可能です。 SOPAは、外国のサイトをターゲットにしているという名目でありつつも実際はアメリカ国内も対象に入おり、かつ1件でも著作権侵害行為があればサイト全体を止めてしまうことも可能なので、「インターネットを壊す」という反対意見があり、ネットメディアを中心とした激しい反対運動が行われていました。 PIPAも類似した内容ですが、SOPAの上院版(SOPAは米国下院で審議中)と言われています。

ホワイトハウスも現状案に反対

各種抗議活動は、ホワイトハウスも動かしたようで、DNSブロッキングなどによって言論の自由を制限するような検閲が可能となる法案は支持しないという声明が出ました。 そのなかで、アメリカ合衆国の権限が及ばない外国に対するものとして対象を限定する必要性も述べられています。 しかし、一方でオンライン海賊行為への何らかの対応の必要性が強調されています。

反対派は運動を継続

EFF(Electric Frontier Foundation)は、今回のDNS条項削除を前進としつつも、広告ネットワークの遮断などが残されているSOPA/PIPAそのものを廃止させる必要があるとしています。

Reddit、Major League Gaming、Boing BoingなどのWebサイトが抗議として1月18日に1日サイトを停止する予定になっていますが、今のところ、DNSブロッキング条項が削除されたことによって、これらの抗議活動が中止されるという話にはなっていないようです。

ネットが政治を動かした

昨年11月ぐらいからSOPA/PIPAへのオンライン抗議活動が活発に行われています。 Tumblrでの抗議活動によって議員へネットユーザの意見が届けられたり、SOPAを支持していたGoDaddyの不買運動が広がり支持を取り下げざるを得なくなったり、その状況を見て他のSOPA支持企業が支持を取り下げるなどが、ここ数ヶ月でありました。 それら以外にも、様々な抗議がネット上で行われるとともに、アメリカ国内のオンラインメディアはSOPA/PIPAの話題が連日のように書かれています。

SOPA/PIPAへの抗議活動が徐々に成果を出しつつあり、一時は法律が成立しそうな空気でしたが、今は潮目が変わりつつあるように見えます。 有権者からの意見が相次いだため、SOPAに反対する議員も増え始めました。

1月24日に上院でPIPAの投票が予定されています。 その結果によって、また状況が変わる可能性もあります。

SOPA/PIPAが廃案になっても恐らく議論は続く

今回、SOPA/PIPAが非常に大きな話題になりましたが、ネット上での著作権侵害行為をどのように取り締まるかに関しての議論はSOPA/PIPAが廃案になったとしても続きそうだというのが私の感想です。 むしろ、これがその議論の開始なのかも知れません。

今回のSOPA/PIPA賛成組織が音楽/映像関連の権利者が多く、反対組織の多くがWeb2.0的IT企業が主だったというのが非常に特徴的なのですが、DMCAのセーフハーバー条項を本丸とした(と思われる)綱引きはSOPA/PIPAが廃案になっても継続して行われるものと予想しています。

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