上昇するネットモヒカン濃度

2011/12/14-1

ネットにおけるオープンな空間での情報発信は、「生涯現役」なネットモヒカンによって発言しにくい場所になるという構造を持っている気がします。

「ネットモヒカン」という単語は5年以上前に一部ネット界隈で流行った古い単語です。 また、ここで表現している「ネットモヒカン」は当初の意味を拡大しています。 というか、ここで表現している「ネットモヒカン」は、いわゆる「ネットモヒカン」よりも「汚物は消毒だー!」的な「ヒャッハー!」に近いものとも言えそうですが、現時点におけるネットの状況を見ながら色々と再考してみました。

地雷だらけのネット空間

いわゆる「祭り」や「炎上」が、徐々に職人芸化しているような気がしています。 昔よりも炎上開始から特定までの速度が上昇しているように思える事例が色々あります。 「何が炎上になり得るか?」に関するノウハウも含みます。

ソーシャルメディアやWeb2.0といった流行から、意図せずにネット上にホイホイと個人を特定可能な情報がバラまかれてしまうという背景はあるものの、情報を探る側も能力向上も要素としてある気がしています。

たとえば、ブログなどに掲載されたJPEG画像から位置情報が含まれるか調べるなど、どうやれば炎上対象の個人情報を抜き出せるのかというノウハウも蓄積されています。 数多くの炎上を見たり参加したりしている歴戦のネットユーザが過去に見聞きしたノウハウを総動員している洗練されたネットイナゴだと思うと納得できる部分もあります。

(NNTP的な)ネットニュース時代からのネットユーザである30代、40代、50代の歴戦の勇者的なネットユーザが跋扈しつつ、ときに人肉検索的な活動に従事している空間が今のネットだと思うと「ネットは地雷だらけだなぁ」と思うこともあります。

いわゆる「高齢化」について

最近、色々なところで「IT業界におけるエンジニアの高齢化」という話題を聞くようになりました。 たとえば通信事業者系の飲み会でこの話題がよく出ます。 曰く、「新しい人がなかなか入って来なくて、昔からの人が現場に多い」ということのようです。

このような話題を聞くと、私の持つ感想は「新しい業界は業界立ち上げ当初からの人が現役であり続ける年数が長いからなぁ」というものがあります。 IT以外でも、いわゆる「立ち上げメンバー」が長期間トップであり続けて、「下が育たない」と嘆いているのを目にすることがあります。 個人的には、「下が育たない」という現象は、トップがトップであり続ける時間が数十年単位で続くという状況が作り出しているのではないかと思うことがあります。

2ちゃんねるに書き込みをする層の高齢化が何度か話題になっていますが、私が知る10代20代ぐらいの「若者」は2ちゃんねるを直接見るよりも、2ちゃんねるまとめサイトを読む傾向があるように思えます。

デジタルネイティブ以前に、現役のアーリーアダプタおっさん

現在のネットでは、ネットどっぷりの高齢者は少ない印象がある一方で、デジタルネイティブ世代以前から長期間現役な「アーリーアダプタおっさん」が跋扈している印象があります(Google先生によると私のブログ読者の8割強が男性であると予想されることや、私のまわりのネット界隈では男性が多いので「おっさん」と表現しています。ただ「ネットモヒカンは全て男性である」と言っているわけではありません。)。

30代を含めて「アーリーアダプタおっさん」だと考えると、多分、これから一生現役でネットモヒカンバリバリな方々も多そうです。 そうなると、ネットモヒカンおっさんはリアルで様々な経験をしつつネットを続けることになり、70代80代の現役バリバリネットモヒカンが大量に跋扈するネット社会が数十年後に到来しそうです。

地雷だらけのネット上で、多くの人生経験をした生粋のネットモヒカンが徘徊すれば、それを恐れて若者はオープンではなく多少安全性が高いと錯覚できる場所に安住の地を求めるかも知れません。 そうなると、新しい息吹がオープンなネットに入り込まずに、ネットモヒカン的な思想の濃度が上昇しそうです。 考え方としては、ゲーム理論で紹介されることが多いトーマス・シェリング氏による住み分けの動学的モデル(Dynamic Models of Segregation)のように、ネットモヒカン的ではない人々が徐々にオープンな空間を避けるようになるという感じです。

ブログ等の主張で年齢の上昇を感じることがある

なんでこんなことを思うようになったかというと、数年前と比べると意見をガラリと変えるブログやソーシャルブックマーカーをチラホラ見るようになったからです。

20代中盤と比べると30代だと恐らく社内での立場が上昇していてそれまでなかった視点を持ったのだろうとか、「何故できないのか」というような問題の真相を垣間みたりして経験を積んだのかなと思った事例もあります。 「以前よりも保守的な表現になったなぁ」と。

その一方で、「ネット上で声が大きい人」というのは、ある程度定着している感があり、「声の大きい人の平均年齢が徐々に上がってないか?」と思います。

で、「Web2.0だ!」とか「ブログだ!」とか「ソーシャルブックマークだ!」とか、これまではある程度の「若者」が強い勢力だった分野で、徐々に高齢化していくような雰囲気を感じていて、2ちゃんねるの高齢化と同じような構造を持っている気がしてきました。

結果、若者は、大量のネットおっさんが跋扈する無制限にオープンな場所を敬遠し、ニコニコ動画/生放送や、SNS的なサービスに居心地の良さを求めつつ、その若者がおっさんになるまでその空間で楽しみそうだなと。

きっと私もネットおっさん

こんなことを書いている私もきっとネットモヒカンなオッサンだろうと思います。

ふと10年前の自分の写真を見ると「若いなぁ」と思うのですが、きっと10年後に今の写真や文章を読んだら「若いなぁ」と自分で思うだろうと考える今日この頃です。 (10年後もネット上で恥ずかしい文章を書き散らし続けているかどうかは現時点ではわかりませんが)

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