豚インフルエンザと炭疽菌と負荷分散

2009/4/28-1

現在、豚インフルエンザの話題がニュースで多く放映されていますが、アメリカCDC(Centers for Disease Control and Prevention,病気抑制防止局)で公開されている情報「CDC : Swine Influenza(Flu)」を見ている人も多そうです。

実は、豚インフルエンザ情報と、昨日公開したアカマイ社に関しての記事は多少ですが関連があります。 CDCは2001年12月からAkamai社のコンテンツ配信サービスを購入し続けています。

Akamai Press Release : January 22, 2002, The Centers for Disease Control and Prevention Deploy Akamai EdgeSuite for Continuity of Global Web Operations」に以下のように記述されています。

Akamai Technologies, Inc. (NASDAQ: AKAM), a leading provider of secure, outsourced e-business infrastructure services and software, today announced that The Centers for Disease Control and Prevention (CDC) have implemented EdgeSuite to reduce IT complexity, expand its Internet infrastructure capacity and global reach, and improve overall site performance while ensuring effective delivery of all types of content on www.cdc.gov.

「CDCのWebサイトのコンテンツ配信をアカマイ社がやりはじめた!」というプレスリリースです。

きっかけは炭疽菌事件

Akamai社がCDCのWebサイトのコンテンツ配信を行い始めたきっかけは、911の後の炭疽菌テロ事件のようです。

Government Computer News : Load Balancing」によると、911と炭疽菌テロ以降はアメリカCDCがバイオテロ情報に関してのデファクトスタンダードとなり、世界中から情報へのアクセスが集中するようになったそうです。

当初CDCはAkamai社に依頼しておらず、米国内2カ所でWebサーバを運用していたようです。 2001年10月にハードウェアトラブルによる数時間のダウンの後にAkamai社のサービスを購入するようになったと記事で述べられているように読めます。 記事にCDC CIO Jim Seligman氏のコメントとして「Long before 9-11, Akamai had approached us, and we had expressed interest in their technology」とあるので、Akamai社は911のずっと前からCDCへの営業活動を続けていたようです。

記事中には、2002年時点でAkamai社のサーバは13000とあり、現在は40000なので「どんどん増えている」と思いました。

Akamai社はCDC以外も顧客として抱えているようです。 アメリカ政府の他の機関のDNS情報を見て行くとAkamai社のサービスを購入しているところが多い気がします。 なお、Akamai社のサービスをうけていなさそうな機関も結構ありました。 また、他社のCDNサービスなどを購入しているかどうかを知る方法を知らないので、Akamai社しか調べられていません。

日本国内ってどうなんだろう?

で、問題は日本の官庁のWebサイトってどうなっているのだろうか?という点です。

例えば、今回の豚インフルエンザが国内で広がってしまった時に、特定の政府公式発表Webページにアクセスがバースト的に集中し過ぎてサーバが落ちて、焦った人々に情報が伝わらないという事態はあり得るのでしょうか?

インターネットによるバイオテロ情報の公開に関する研究 2006年度報告書」には以下のように書かれています。

バイオテロに関する情報へのアクセスは、関連する事象が発生したときには、 通常のアクセス数からは予想できない程の数になることが予想され、 このことを想定したシステム構築をおこなわなければ、 システムが機能しなくなることが予想される。 事実、米国で炭疽菌事件が発生した際、米国CDCのWebサーバは、 炭疽菌に関する情報を求める利用者のアクセスにより、システムに障害が発生した。

(中略...)

米国の炭疽菌事件と同様なことが発生したときのWebサーバへのアクセス数を予測することは、 なかなか難しいが、米国炭疽菌事件が起きた頃のアメリカのインターネット利用者数が、 約1億6000万だとすると、約5%の利用者がアクセスしたことになる。 日本の利用者数が約1億人であると想定すると、 その5%すなわち500万人の利用者が短期間にWebサーバへのアクセスをおこなうことになる。

現在は、5年前よりもインターネットで情報検索をする習慣が広がっていることなどを考えると、 アクセス数集中の度合いは上がる可能性が高いため、アクセスの集中を考慮した情報公開システムを開発する必要性が高まっている。

問題はバースト的に発生するトラフィックだと思われます。 定常的に高負荷である場合には状況を見ながらサーバ等をアップグレードできますが、いつもはトラフィックが少ないところに急激に大量のトラフィックが発生するという鉄砲水のようなアクセスに弱い官庁系Webサイトは非常に多いと思われます。

個人的には、CDN化された官庁ページの話はあまり聞いた事がありません。 例えば、「インターネットによるバイオテロ情報の公開に関する研究 2006年度報告書」は2006年度の報告書であるため、2007年の3月に提出されたことが予想されます。 ということは、2007年時点で「CDN考えた方がいいですよ」と言っているわけであり、2006年時点で政府から発信される情報発信のためにCDNが活用されていたという話では無さそうだと予想しています。

ざっと見たところでは日本政府関連Webサイトが例えばAkamai社のサービスを購入しているようには見えません。 選択肢はいくつかあるので、もちろん他のCDN企業のサービスを利用するという方法もあります。 英語ではなく、日本語で書かれたページが世界中から一気にアクセスを集めるという事は少なそうなので世界で分散できるAkamai社ではなく、国内複数箇所のデータセンターでも十分と言う試算もあるかもしれません。

でも、何かが発生した時にアクセス過多で官庁ページが落ちるということがありそうだなぁと思う今日この頃でした。

追記:「dig www.mhlw.go.jp」をすると以下のようになりますね。。。。 私の勘違いでした。 申し訳ありませんでした。

; <<>> DiG 9.3.4-P1 <<>> www.mhlw.go.jp
;; global options:  printcmd
;; Got answer:
;; ->>HEADER<<- opcode: QUERY, status: NOERROR, id: 7197
;; flags: qr rd ra; QUERY: 1, ANSWER: 4, AUTHORITY: 9, ADDITIONAL: 0

;; QUESTION SECTION:
;www.mhlw.go.jp.			IN	A

;; ANSWER SECTION:
www.mhlw.go.jp.		3600	IN	CNAME	www.mhlw.go.jp.edgesuite.net.
www.mhlw.go.jp.edgesuite.net. 21600 IN	CNAME	a1772.g.akamai.net.
a1772.g.akamai.net.	20	IN	A	XXX.XXX.XXX.XXX
a1772.g.akamai.net.	20	IN	A	XXX.XXX.XXX.XXX

;; AUTHORITY SECTION:
g.akamai.net.		1800	IN	NS	n8g.akamai.net.
g.akamai.net.		1800	IN	NS	n0g.akamai.net.
g.akamai.net.		1800	IN	NS	n1g.akamai.net.
g.akamai.net.		1800	IN	NS	n2g.akamai.net.
g.akamai.net.		1800	IN	NS	n3g.akamai.net.
g.akamai.net.		1800	IN	NS	n4g.akamai.net.
g.akamai.net.		1800	IN	NS	n5g.akamai.net.
g.akamai.net.		1800	IN	NS	n6g.akamai.net.
g.akamai.net.		1800	IN	NS	n7g.akamai.net.

;; Query time: 1031 msec
;; SERVER: 127.0.0.1#53(127.0.0.1)
;; WHEN: Tue Apr 28 18:01:05 2009
;; MSG SIZE  rcvd: 297

CDCはtwitterを使っているらしい

余談ですが、アメリカではtwitterを使って豚インフルエンザ情報を伝えているようです「CNET : 米政府、豚インフルエンザの最新情報をTwitterで発信」。

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