大学の研究室と宣伝活動

2008/6/25-1

大学の研究室は宣伝活動が少ないのではないかと最近思い始めました。 恐らく昔から状況は変わっておらず、単に自分の視点が変わっただけだとは思いますが。。。

プレスリリース

非常に大きな成果が出たときにはプレスリリースを出してメディアに取り上げてもらおうとする場合もあります。 しかし、多くの研究室にとっては非常に稀なイベントだと思われます。 学校という単位で見ると、ちょくちょくプレスリリースを出しているかも知れませんが、研究室という単位で見るとそのような事は滅多に発生しません。

「メディアに出して恥ずかしくない」と思える内容でなければ出さないということもあり、プレスリリースを出すという正式な形は非常に敷居が高いです。 ちょくちょくと継続的に行いにくいのが難点です。

そして、一回のプレスリリースは長期的効果があまり期待できないと思われます。 どっと波が来て、しばらくするとまた平穏な毎日が訪れる事が多いと予想されます。

さらに、あまりに内容が専門的過ぎると、載ってもざっと簡単な記事が載るだけで多くの人の興味を引く事はありません。 また、技術のみを語る傾向が強くなるため、ストーリーとしての記事になる事が少なく読者数も伸びない傾向にあると予想しています。 (もちろん、研究に関するプレスリリースでは技術を中心に語るべきだと思います)

何故研究室が宣伝活動をするのか

大学に所属する研究室が独自に何らかの宣伝活動をする必要性は大きく分けて以下の2点だと考えています。

学生獲得

研究室にいる学生はいつかは去っていきます(博士まで行って教員になる人もたまにはいます)。 一般的には毎年コンスタントに構成メンバーが変わって行きます。 新人が入らなければ研究室は衰退していきます。

まず、研究する人数が減るため研究するテーマが減ります。 そして、深さも同時に減少します。 活気もなくなり、さらに人数が減っていきます。

研究室に所属する人数が減る事は実は死活問題だと思うのですが、あまり本腰を入れていないところが多いと思います。 もちろん、シラバスに書いたり説明会を開いたりはしていますが、それ以上はあまりしないのが一般的ではないでしょうか。

そのため、メディアに出ているような有名な先生の所に学生が殺到する一方で、全く人気が出ない研究室というものも発生しているのだと思います。 人数が少なくてもやっている事は非常に面白い研究室も多いと思いますが、それを外部から知るのは難しいと思われます。

「これだけ最先端の事をやっているのに何故学生が門を叩きに来ないのだろう?」と言っている先生もいました。 「最先端な事をやっていると知っている人は、既に研究室に入った後の人だけだからだと思います」と思いました。

共同研究

ある程度目立っている方が共同研究の機会が増えると思われます。

共同研究が増えれば、予算も増えるので出来る事の範囲が大きくなります。 この点が結構切実な研究室も中にはあると思われます。

じゃあブログか?

では、宣伝活動はどのように行うのが正しいのでしょうか? 安直に思いつくのはブログです。

確かにブログはうまくやれば強力なツールです。 誰もが安価に運営できるという面で現状では最強だと思われます。 研究室を持つ先生が自らブログを書き続け、それを多くの人が読む形態が現状でのベストプラクティスと言えるのかも知れません。

しかし、先生にそんな暇と情熱が無い状態で、ブログで研究室宣伝をうまくやるのは結構難しい面がありそうです。

研究室に所属する個人がブログを運営している例はかなり多くあります。 しかし、「研究室」という看板を宣伝するためにブログを運営すると思うと、ある程度の覚悟を決めて品質を継続的に保つ努力をしなければなりません。 「品質」を保つという話になると、恐らくその研究室が研究を行っている分野に関する内容がメインになります。

自分が専攻している分野であっても、真面目に公表するための文章を練るのは時間がかかります。 効果があるかどうかわからないブログでの研究活動報告を継続できる人は非常に少ないと思います。 そして、それを続ける事に対する教員の理解が得られるかどうかという問題もあります。

研究の種となる部分を公表し過ぎてしまうと、自分の研究の芽を自分で潰してしまう可能性も排除できません。 自分だけではなく、仲間内の研究テーマを知らない他人に奪われてしまうという危険性もあるのが難しいところです。

さらに、ある程度ディープなその道の研究者以外の人にも読んでもらおうと思うと急激に敷居が高くなります。 これから研究室に来る新人を勧誘したり、その道には精通していないという理由で共同研究をしたいと申し出てくる企業とのコネクションを得たいと思うと、その道では無い人々の視界に入る事も要求されます。

何がいいのだろうか?

今のところマトモな一般解は思いついていません。

いや、でもやっぱり中にいる人が「楽しい」と本心から思いながら活発に活動し、その活動を広く外に公表することなんですかね。 「報告書がつらい」とか「最近の若い者は」と教員的立場の人が学生の前では愚痴らない等の細かい点も実は効いてくるのかも知れません。 本心では楽しいと思っていても、恥ずかしさから「つらさ」を前面に出し、「俺の背中を見ろ」的な職人肌研究者も結構います。 それはそれで大好きです。 ストイックさは必要だと思います。 「言わなくても」の前提が正しく伝わるような何かが出来ればいいのですかね? でも、結局はケースバーケースですね。

理系離れやIT離れが叫ばれ続けています。 理系の研究室が楽しそうに色々な情報発信を行ってattentionを集めて行けば、理系に興味を持ってくれる人が今までよりもちょっとだけ増えてくれるかも知れないと思った今日この頃です。

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