PIX-IE [INTEROP Tokyo 2014]

2014/6/11-2

マルチホームを行いつつ、フルルートを受け取るための強力なBGPルータを運用するのが、これまでの教科書的なAS運用でした。

JPNICからAS割り当てを受ける条件として「複数の自律ネットワークとの間でBGPにより接続し、外部経路制御情報の交換を行うこと」とあることからも、複数ASとのマルチホームが基本とされていることがわかります。 マルチホームが必要ない場合には、ASの割り当てを受けてBGP運用を行うのではなく、インターネットプロバイダからIPアドレスブロックを受け取るという方法でした。

しかし、昨今は、上位ASをデフォルトルートとしつつ、シングルホームでBGP運用を行いたいというASが登場しています。 基本的な経路は全て上位ASに依存しつつも、非常に強く繋がりたいASとはピアリングを行いたいというニーズが増えているためです。

こういった背景を踏まえつつ、設計されているのがINTEROP Tokyo 2014のShowNetです。 AS 290がフルルートを持つキャリアASです。 AS 131154はAS 290を上位ASとして利用しています。

AS 290とAS 131154は、大手町にあるProgrammable Internet Exchange In Edo (PIX-IE)で接続されています。 PIX-IEは、INTEROP Tokyo 2014開催と同時に発表された実験的IXです。 PIX-IEの実態は、OpenFlowを活用したIXです。

AS 131154は、AS 290からデフォルトルートを受け取っています。 AS 131154は、DIXIE、NSPIXP23、JPIX、BBIXの4 IXで接続し、そこで合計約40 ASとBGPピアリングを行っています。 ここで注意が必要なのが、AS 131154が行っているのは個別のピアリングであり、AS 131154はBGPフルルートを持っていないという点です。


INTEROP Tokyo 2014より

AS 131154のような運用を行うことで、ルータコストやオペレーションコストを削減することが可能となる設計です。

BGPピアリングに限定されないPIX-IE

PIX-IEは、BGPによるピアリングに限定されないことも大きな特徴です。 従来のIXは、IXが用意したスイッチに接続して、そこに参加するASがBGPピアリングを行う場でした。 一方、PIX-IEは、OpenFlowによってL2セグメントをそのままの状態で直接接続し合うこともできます。

L2セグメントを直接PIX-IE経由で接続できることで、PIX-IEを経由して遠隔地で同一セグメントを運用できるようになります。 これにより、たとえば、PIX-IEを超えて仮想マシン(VM)のライブマイグレーションなどが行えるようになります。

この他、異なる組織間(ASを持っていない組織を含む)でセグメント同士を繋ぐようなこともできます。 PIX-IEはOpenFlowを利用しているので、アドレスレンジを全く意識せずにネットワーク同士を接続可能です。 たとえば、組織Aと組織Bが全く同じ10.0.0.0/8というプライベートIPv4アドレスで運用されていたとしても、OpenFlowによるパケットヘッダ書き換え機能を活用して、相互に通信ができます。

今後PIX-IEは、OpenFlowをはじめとしたSDN(Software Defined Networking) 技術を活用し、(1)細かな経路制御、(2) セキュリティ、(3) 柔軟なパス交換の3つを柱として機能の拡張と改善を行っていくとのことでした。

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