AS番号申請のマルチホーム要件撤廃案
これまで、BGPの運用を開始することは、すなわちマルチホーム化であるという暗黙の前提がありました。そのことは、AS番号(ASN)を申請する際の条件にもあらわれています。
技術的な視点でみたとき、BGPそのものはマルチホームでの運用が必須ではありません。しかし、BGPを利用してインターネットの一部になるためにはAS番号の割り当てを受けるには、最低2つのASとのBGP接続ができることを申請時に示す必要があります。
しかし、最近、その前提が変化しつつあります。
LACNICでのポリシー案
ラテンアメリカ及びカリブ海地域のRIR(Reigonal Internet Registry)で今年4月に提案されていた、AS番号申請時のマルチホーム要件撤廃に関するポリシー案が、数日前にコンセンサスに達したうえで最終コメント待ち状態になりました。
- APNIC Mailing Archives: [sig-policy] Policy Outcomes from LACNIC 22
- LACNIC: Modification to the text describing ASN distribution requirements
従来のLACNICポリシーでは、AS番号申請時に互いに独立した2つ以上のASとのBGP接続を準備することを申請者に求めていますが、改定案ではAS申請時に事前に準備するBGP接続は1つで大丈夫になります。
RIPE NCCでのポリシー案
RIPE NCC(ヨーロッパ、中東、中央アジア地域のRIR)でも今年3月から同様の議論がされていますが、そちらはまだコンセンサスには至っていません。
日本での状況
日本のNIR(National Internet Registry)であるJPNICでも、AS番号を申請するにあたって2つ以上のBGP接続を用意する必要があります。アジア太平洋地域のRIRであるAPNICでも同様です。現段階においては、JPNICおよびAPNICで、申請時のBGP接続数を変更する提案は行われていないようですが、LACNICやRIPEでの動きをうけて、同様の提案が今後行われる可能性も考えられます。
今年7月にGREEの取材記事で紹介したように、「フルルートって本当に必要なの?」という議論が一部界隈で徐々に盛り上がっています。BGPを利用してインターネットに接続することは、「組織単位でインターネットの一部になる」という意味を持ちますが、その仕組みが変わるということは、インターネットに参加する組織が多様化していることを示しているのかも知れません。
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