スポーツ上達をデバッグ作業として捉える

   このエントリをはてなブックマークに登録    2017/12/15-2

スポーツ上達はデバッグ作業に似ているのではないか、最近はそう思うようになりました。

スポーツ上達を考えるとき、普通は、スポーツに関連するスキルを上達させることを真っ先に考えます。 たとえば、サッカーであればボールを使った練習だったり、野球やソフトボールだとバッティングやピッチングという感じです。

しかし、何らかの「エラー」が発生していて、スポーツにおいて必要なスキルを獲得しづらい状況が発生していたり、そのエラーが原因となって強くパワフルに動けないことによる不利益が発生することがあります。 そういったときに、そのエラーを発見したうえで修正するというデバッグ作業を行うことで、スポーツを行う能力を向上させられます。

どういったものがエラーになるのかに関しては、様々なノウハウが色々なところにあります。 ときとして、そういったエラー発見方法がテストやスクリーニングと呼ばれることもあります。 テストなどを通じて発見できた手がかりをさらに深堀しつつ、問題点を評価したり推測することがアセスメントと呼ばれることもあります。

そして、そういったテストを通じて浮かび上がった問題点を修正するコレクティブエクササイズ(Corrective Exercise)を行ったり、場合によっては筋の過緊張を和らげる「リリース」と呼ばれるようなことを行うことで、スポーツの直接的なスキルを練習せずに「デバッグ」が行えます。

運動音痴にこそデバッグ作業を

エラーは結果や自信に直接影響を与えてしまうこともあります。 「運動音痴」と言われる場合があったり、どうもスポーツをするのが苦手という場合もあります。

ときとして、そうなってしまっているのは、何らかのエラーがあり、そのエラーに気がつけず、または気がついてくれる人が近くにおらず、「私はダメなんだ」と思ってしまっているということもありそうです。

デバッグとしてスポーツを捉えると、何らかのスポーツでうまかったり高いレベルにある人をさらに上達させるだけではなく、うまくできない人の原因を発見して取り除くことで上達させることもできるというのが私の感想です。 バグだらけのいわゆる「伸びしろだらけ」という状態だと、デバッグにかかる時間も多くなるかも知れませんが、そのデバッグをすることで、非常に多くの人が上達できる可能性があるのです。

バグを愛でることで子供に優しくなれるかも

そして、エラーを発見してデバッグするという視点を持つことで、スポーツをする子供に対して親が優しくなれるような気もしています。

子供の試合を見ていて、「そこで負けるな!」とか「何でそこで負ける!」とか「勝て!」とか「気持ちで負けているんだよ!」というような応援をしている親を良く見ます。 子供が試合に負けると、子供を叱る親もいます。

視点を変えて、「あー、この部分でこういう課題があるから、それが目の前の"負けた"という結果になっているんだな」という分析ができると、「負けるな」ではなく、「次に負けないために、後日、このエラーをデバッグしよう」と考えることができそうです。

注意が必要なのが、エラー箇所だけにフォーカスせずに、デバッグ方法を含めて考える必要です。 エラーそのものだけに着目すると、結局は「何でできないんだ!」みたいな話になりがちです。 明確なエラーを発見できて、その治し方を含めて考えられるのであれば良いですし、もしデバッグの方法もしくはそもそもデバッグの必要があるのかを含めてわからないのであれば、それがわかる専門家に依頼するなどしつつ、少しずつ探っていくこともできます。

ちょっと視点がマニアックかもですが。

我が家でのデバッグ作業例

さて、自分の子供がスポーツをおこなっていて、それのサポートをするために色々と調べ始めたのですが、いまのところ我が家でうまくいったと思われるデバッグ作業としては、例えば、上半身のアライメント調整によって逆立ちの能力が向上した、オスグッドになりかけていたので姿勢を矯正して膝の痛みをでなくした、腰椎分離症になりやすいと思われる反り腰を改善した、かかとの痛みを訴えていたので下肢のリリースを行いつつストレッチを行わせて痛みを出なくしたといったことがあげられます。 あと、扁平足を改善すべく現在トレーニングを続けています。

以下、我が家でやったことの例をいくつか紹介します。

上半身のリリース

小1息子は体操教室に行っているのですが、逆立ちが苦手だったり、逆上がりが全くできなかったり、他の子と比べて動きが悪いのです。

何だろうなぁ、と思っていたのですが、スポーツ系のセミナーに参加したときに、僧帽筋のリリースによって肩のアライメント調整をする方法というものを知りました。

そして、帰宅して小1息子の肩の高さに極端な左右差があることに気がつきました。 あれ?ナンダコレハ!?と。事実はずっと目の前に存在し続けていたのですが、その事実を解釈して咀嚼する「目」が私にはなかったのです。

小1息子に色々試しつつ、僧帽筋、固有背筋、胸筋群、胸鎖乳突筋などへのアプローチをしてみました。 過緊張を起こしている筋をリリースする方法は色々ありますが、筋腱移行部を軽くさすることで過緊張を緩和できることがあります。表層筋の場合には、アプローチしたい筋に対してストレッチをかけながら圧をかける場合もあります。

そうすると、それまで存在していた極端な左右差が、すすすすっと改善しました。 そして、肩の極端な左右差が改善された直後から、小1息子の壁倒立が改善し、それまでできなかった倒立前転ができるようになりました。


(たまたま、「何が原因ですかねー」みたいなことを知り合いのトレーナーや理学療法士の方々と相談しながら写真を撮ったりしていたので、BEFOREとAFTERの写真が残っています。)

リリースしてから次の日に同じ状態に戻るかどうか気になっていたのですが、肩の左右差については、一度リリースしたらそのまま治ったようです。

こういう感じで効果が出ると、親としては非常に面白いです。

扁平足のデバッグ中

最近1ヶ月半ぐらい取り組んでいるのが、小1息子の扁平足(過回内足)のデバッグです。 小1息子は、サッカーをしているのですが、足が遅く、足が速い子がドリブルをすると全く追いつけません。 全体的になぜか動きがもっさりしていて遅かったのです。

何でだろうなぁと思いながら、色々調べたり、息子を観察していたりしたのですが、10月に「あ!何だこの足は!!!」という発見がありました。 アキレス腱を後ろから見たときに、過回内(オーバープロネーション)になっているのを発見したのです。 それに伴い、極度の扁平足でX脚で内股だったのです。 X脚で内股になっており、歩く度につま先が内側に入るのはずっと気になっていたのですが、やっと原因の一部を発見できた嬉しさが溢れてドキドキワクワクが加速した瞬間でした。

扁平足の治し方を調べたところ、EBFAのBarefoot trainingをすることで改善が期待できることがわかりました。 それに含まれるショートフットエキササイズ(ショートフットトレーニング)を行ったり、並行してFRC的なBig toeのモビリティ改善エキササイズ、足首周辺のモビリティ改善を目指したエクササイズ、足指を全部開く練習、拇指球+小指球+踵の3点を同時に意識するスクワットやランジなどを少しずつ行っています。

そういったトレーニングを行うようになってから、息子の走り方が改善してスピードがあがったように思えますし、ボールに対するキック力も上昇したように思えます。 半年、1年と、これにはまだまだ時間がかかりそうですが、扁平足のデバッグを続けようと思います。

なお、私も扁平足でした。40歳を超えてから気がつきましたが、私も日々自分のデバッグを行っています。

ムーブメントスキル

小3息子は、小1息子と比べると激しいエラーも少ないので、加速・減速・方向転換を行うムーブメントスキルの練習も行っています。 動きのデバッグです。 (小1息子は、もうちょっと各種調整ができてきてから行う予定です。)

ムーブメントスキルに関しては、スクールオブムーブメントの朝倉全紀さんのMovement Fundamentalsの内容を子供にインプットしようと試みています。

ただし、子供達に大人のノリで本気な感じでトレーニングを強制するようなことは避けています。 本人の気分が乗らなければやらせませんし、本人の意思であるかのように大人が表現しつつも事実上は強制するような雰囲気にもしたくありません。 本人の意思や意識が大事なのです。 なので、子供にそういったものを行わせる場合には、少しでもうまくいった場合にとにかく褒めまくるようにしています。 そうすると調子にのって、ほっといても勝手にマニアックな練習をしはじめることがあります。 息子達はサッカーチームに入っていますが、サッカーそのものの練習時間を減らして、スクワット、ウォールドリル、縄跳び、マット運動とかを遊び感覚で自分で追及するように誘導する方が効果でるんじゃないかというのが最近の感想です。 ただし、どういったエキササイズをするのかとか、そのエキササイズを行うときの注意点などは最初に教える必要はありますが。

私自身もスクールオブムーブメントが教えるムーブメントスキルを修行中です。 先日も、DOME ATHELETE HOUSEで行われたトレーニングセッションに参加してきました。

ここ2年ぐらい、子供のスポーツを強化するためにという言い訳を自分自身に言い聞かせつつ趣味のトレーニング勉強として自分でまずは実行するようなことをしていたら、以前よりも体力がついたようです。 原稿執筆でハードなときの体力の消耗具合が、最近は軽減されたような気がしています。

選手本人は無自覚である場合も

リリースを行ったり、可動域を改善させたり、コレクティブエキササイズで体のパーツごとの調整を行ったり、連動性を改善させたり、といった部分は、本人が自覚していない部分のデバッグの場合もあると私は考えています。 デバッグ作業を行っている人は目的を持って何かをするわけですが、本人は「よくわからないけど自分の動きが良くなった!」と自覚することはあっても、何をどうしたからどう改善したのかは理解してないことも多いのです。

修正したい部分を本人に意識させてしまうと、逆にその部分をデバッグできない場合もあります。 そのため、意図的に修正したい部分を本人に伝えずにコレクティブエキササイズだけをやらせることもあるのです。

色々とそういった方面のことを調べたり試したりしていて思ったのが、「こういう要素があるから選手が指導者になってもダメな場合があるのかも」ということです。 選手は自分が自覚させられている範囲内でしかトレーニングを理解していない可能性があるのです。 選手本人が無自覚の部分で、実は指導者がデバッグ作業を行っていることも考えられます。 そういった意味で、トレーニングを行うノウハウと、特定の競技のスキルを教えるノウハウは異なるものだと最近は思います。

トレーニング系の話もハマると面白いですね。デバッグという視点で見ると、対象がコンピュータであるか人体であるかという違いはあるものの、IT系のエンジニアにとってスポーツ(トレーニング)系のノウハウは相性が良いかも知れません。

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