トランプ大統領令の影響でIETF米国開催できなくなる?

   このエントリをはてなブックマークに登録    2017/1/31-1

TCP/IPに関連する仕様の多くは、IETF(Internet Engineering Task Force)という場で議論されてます。IETFで作られた文書はRFC(Request For Comments)という形で公開されています。インターネット上の通信仕様を記載した文章がRFCであり、RFCを作るための議論を行う場所がIETFなのです。

IETFでの議論は、インターネットを活用したオンラインでの議論として行われるとともに、年3回の物理的なミーティングの場で行われます。インターネットに関連する仕様等を議論するために、約1週間行われる物理的なミーティングに世界各国からエンジニアなどが集まります。

IETFの物理的なミーティングは、これまで世界各国で行われてきましたが、インターネットは米国で誕生したこともあり、これまで最も多くIETFミーティングが開催されたのは米国です。

トランプ大統領が中東・アフリカの7カ国の国民の米国入国を一時禁止する大統領令を出しましたが、それによって米国でのIETFミーティング開催が今後は困難になってしまう可能性などが、IETFのメーリングリストで指摘されています。

メーリングリストでの問題提起

議論は、以下のメール投稿から開始しています。イスラム教徒が米国に入れなくなってしまった場合、IETFが何らかの行動をすべきか?という内容です。

内容としては、MIT(マサチューセッツ工科大)学生や、IETFに参加しているメンバーで今回の大統領令の影響を受ける可能性がある人々がいることを紹介しつつも、IETFとして何らかの声明を発表するなどの行動を起こすべきかどうかというものです。米国外からIETFにリモート参加しやすくするような方法なども案として述べられています。

そのメールの最後には、新大統領に関しての賛否は議論せず、大きな国家が多くのメンバーに対してビザ発行を拒否した場合の議論を行おうとしています。

様々な人々が意見を述べましたが、IETFメーリングリストの議論では、米国外に住む人だけではなく、米国内にいる人が海外のIETFに参加した後に米国に戻れなくなる可能性も指摘もあります(参考)。

状況によっては、現段階で開催地が決まっているものを除き、将来の米国開催が困難になるのではないかという意見もあります(参考)。

mtvenue WGでの議論

IETF開催地に関しては、昨年段階から別の議論が進んでいます。

今回の大統領令の話題とは別に、IETFの開催地に関してMeeting venue working group (mtvenue)で昨年から議論されています。

mtvenueは、2016年2月にBOF(BOFは同じ興味を持つ人の集まり。語源はBird of a feather flock togetherということわざ)という形でグループが形成され、いまはワーキンググループになっています。

現在RFC化に向けて議論中となっているInternet Draft (draft-ietf-mtgvenue-iaoc-venue-selection-process)には、以下のような文が含まれています(version -04段階)。

Every country has limits on who it will permit within its borders. However the IETF seeks to:
(中略)
2. Avoid meeting in countries with laws that effectively exclude people on the basis of race, religion, gender, sexual orientation, national origin, or gender identity

上記を訳すと、次のようになります。

全ての国は、その国境を越えるための許可を誰に出すのかに対する制約がある。しかし、IETFは次のことを目指す:
(中略)
2. 人種、宗教、性別、性的指向、国籍、ジェンダー・アイデンティティーを差別する法律が存在する国でのミーティングの開催を避ける。

現段階では、mtvenueにおける議論はRFC化に至っていませんが、この内容が正式に決定したときに、トランプ大統領による大統領令が続いていた場合、IETFを米国で開催すべきではないという意見が多数派になる可能性があります。

シンガポール開催に関する議論

2017年11月にシンガポールで行われるIETF 100に関しても昨年段階で議論になっています。

2016年4月に行われるIETF 95のプレナリで、IETF 100のシンガポール開催が発表されたときに、会場からの質問としてシンガポールにはLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ジェンダークィア)を差別する法律があるという指摘がありました。

その質問を受け、IOAC(IETF Administrative Oversight Committee)とIETFのChairが認識不足に関する謝罪メールを出しています。

IETF 100の開催に関しては、現段階では明確な結論が出ていませんが、トランプ大統領による大統領令とともに議論が続くものと思われます。

さて、どうなるんですかね。。。

今後の動向によっては、米国がIETFミーティングの開催地候補にならない可能性があります。 インターネットが生まれた米国で、IETFが開催できなくなってしまう可能性があるなんて、数年前は全く想像したこともありませんでした。

米国では、IETF以外のミーティングや、国際学会等も多く開催されています。IETF以外でも、今回の大統領令に関連する声明等が徐々に出始めています。 さて、今後、どうなるのでしょうか。

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