初モノてんこ盛り!NICTの「SDN海鮮丼」実験

2013/2/6-1

さっぽろ雪まつりと同時に、初公開な試みが色々詰まったSDN祭りが行われていたようです。 各種技術がてんこ盛りだったことや、札幌が現場のひとつであったことから、今回の実験を「海鮮丼」と呼ぶスタッフも居たようです。 JGN-Xを利用した、さっぽろ雪まつりの伝送実験は毎年行われていますが、今回の実験はかなり盛りだくさんでした。

もともと、この実験の取材にいくつもりはありませんでした。 そもそも、実験発表をしていることすら知りませんでした。 14時頃に、「1時間後にNICTの発表があるからおいでよ。今年のは面白いよ」という連絡を頂き、15時開始の本番には間に合わなかったのですが、その直後にお話を伺ったという形でした。 とはいえ、凄く面白かったです。

全体像

この実験は、複数の実験の集合体ですが、メイン部分は、10種類のSDNを切り替えることができるというものです。 切り替えは、何か理由や用途があって行うというユースケースオリエンテッドなものではなく、実験に使うSDN技術を集めたら10個集まったというショーケースに近いものでした。

NICTのプレスリリースタイトルは「さっぽろ雪まつり」と書かれていますが、映像のソースは沖縄県名護市、宜野座村、大通り(札幌雪まつり会場)の三か所となっています。 映像の配信先(受信側)は、大手町、HTB、大阪ABC、Sky/A、Gaoraです。

この組み合わせをSDN(GINEW)で選択するというものです。 今回の大手町でのデモでは、Gaora(沖縄県名護市)と大通りをソースにして配信していました。

10種類のSDNを切り替えているのは、情報通信研究機構/東京大学/慶應義塾大学が開発したGINEWです。 Webでクリックすることで利用される10種類のうちの1つが選択されます。

GINEWが切り替えを行う手法は、VLAN IDにマップされているネットワークインターフェースを切り替えるというものです。 10種類のSDNは、Juniper MXの中にあるロジカルシステム(仮想サーバみたいなもの)の中にあるネットワークインターフェースと接続されています。 映像配信が行われているVLANがマップされているネットワークインターフェースを切り替えることで、どこにトラフィックが通るのかを制御しています。 切り替え命令は、GINEWコントローラが、Juniper MXの中に作られたロジカルシステムに対して送信しています。

今回の実験では、GINEWは、10種類のSDNのうちのひとつでもあります。 GINEWは、VPLSトンネルを張って途中の中継網を構成しています。

全10種類のSDNは、以下のようになっています(NICTプレスリリースより)。

 実施組織 実験名称(仮称)  実施内容 

 
 NTT

/Cisco

/阪大/電通大
 

 帯域オートスケール:SDTN  利用者の通信量の変化に合わせて割り当て帯域を即時に調整する
 帯域オートスケール:(Cisco)  上記をCisco OnePKにて実装
 管理型自己組織化制御技術(NTT・阪大・電通大)  生体ゆらぎの知見に着想を得た仮想ネットワーク制御技術(一部成果は総務省SCOPE委託研究による)
 NICT/NEC  RISEman  JGN-X上のSDNテストベッドRISEの最新版コントローラの実証
 MPLS-TP+OpenFlow  OpenFlow規格への独自のMPLS-TP拡張の実装を検証
 Cisco  Cisco OnePK  SDN/Cisco OnePKによる容易な経路制御の検証
 Juniper  Juniper SDN  SDNによりNVOを想定した複数プレーンでのOpenFlow SW制御とMPLS Path管理
 東大/慶大  GINEW  マルチベンダーネットワーク環境下での動的かつ簡易なパス制御を実現
 東京大学  FLARE  SDNを進化させたDeeply Programmable Network (DPN)を実現
 NICT/東大/NTT/日立/NEC/富士通  仮想化ノード  最新 仮想化ノードシステムによるリソースアイソレーション検証

以下、それぞれを、ざっと紹介します。

Cisco OnePK

Cisco OnePK(Cisco ONE Platform Kit)は、昨年Interop Tokyo 2012が開催されているときにCiscoが発表していたCisco ONE(Open Network Environment)という取り組みの一環です。 Cisco OnePKは、Cisco ONEな世界観を実現するためのAPIで、IOS内のデータを外部から色々と制御できます。 Cisco OnePKの基本サービスセットで制御可能なのは、データパス属性の取得と設定、パケットのコピー、パケット送出、アクセスリストやQoS関連情報の取得と設定、経路表、ネットワークトポロジ等の検索など、です。 要は色々できます。

今回は、ASR 1000に対して外部からCisco OnePKを利用してWebから経路表を投入することで、集中制御によるルーティングを行っています。 通常のルーティングだと、各ルータが自律分散的にルーティングを行いますが、今回のデモでは、Cisco OnePKを利用してコントロールプレーンだけを分離して集中制御しています。









ただ、完全にCisco OnePK経由だけで経路表が構成されているわけではなく、ルータは通常のOSPFによるルーティングを行いつつも、Cisco OnePKによる経路表追加も行われています。

今回のデモは、L3で行っていますが、コントロールプレーン分離のモデルを使いつつも、L3ではない手法で自由に制御することも可能だと思います。 なお、集中制御サーバは、今回の実験のために作られた初モノです。

(続く:次へ)

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