IIJ外気冷却コンテナ型データセンター実験に見る和製クラウドの未来(6)

2010/8/23-1

経費削減と同時に迅速なサービス開始も可能に

今まで、データセンターを建築するために非常に大きな予算が必要で、その費用を考慮した料金体系でユーザにサービスが提供されていました。 さらに、大規模なデータセンター構築は設計を含めると数年単位の時間がかかるため、状況に応じて柔軟かつ迅速に施設規模を変化させることが出来ませんでした。

コンテナ型データセンターは、構築にかかる時間が大幅に軽減できるだけではなく、コンテナ単位での移動や増設が可能であるため、今まで日本で行われたきたデータセンター構築手法と比べて、迅速かつ柔軟な運用が可能となることが期待されています。 ビルを建てるのと比べると、必要な時に必要な数だけコンテナを増やすという手法で「無駄な在庫を持たない」という状況も作れそうです。

今回の見学会でも「コンテナを置くだけなら半日」「その後の作業も10日でなんとか。最初の1回であってもこれだけの日数で可能」とのことなので、コンテナを作るところから考えたとしても鉄筋コンクリートで建物を建てるのと比べると劇的に早いのかも知れません。

ということは、体力がある事業者は「できる」とわかってから参入するまでのタイムラグが少なくて済むのかも知れません。

消防法に関しては現行運用でそのままOKだと思われますが、建築基準法に関する詳細が平成22年度中に明確化されると同時にコンテナ型データセンターが日本国内で流行る可能性を感じました。

今は日本で「売れる」データセンターは都市部に立地してる

WebやIT系雑誌を見ていると、クラウドの話題が非常に多く登場します。 しかし、データセンター事業を見ると、日本国内では「売れる」データセンターは都市部に集中してそうです。

たとえば、コロケーションサービスなどを利用するためにデータセンターを選ぶ際に、立地条件が非常に重要な要素として語られることが多いです。 そこで作業をする作業員の工数削減や、何か問題が発生したときに可能な限り早く到着して問題解決を出来ることが重要視されるようです。

このような傾向もあり、埋まらない地方データセンターが多い一方で、都心のデータセンターが人気であるという話をチラホラ聞きます。 「ITpro:データセンター100選」を見ても都市部のデータセンターばかりです。 地方データセンターは土地代が安いため、値段が都心データセンターよりも安いことが多いのですが、日本で実際に人気なのは都心データセンターとなっているようです。

さらに、データセンターの付加価値として物理的セキュリティの充実など、高級路線によるデータセンターサービスが日本で多いイメージもあります。 低価格がウリなWebホスティング事業者でも「大手町のデータセンターで高速回線接続と万全のセキュリティ」といううたい文句が書いてあったりします。 顧客側は、実際の「通信の質」を事前に知る方法が少ないので、現状では選択時に立地条件なども考慮に入れてしまうという傾向があるのかも知れません。

しかし、コンテナによる「和製クラウド」が本格的に稼働を始めると、日本におけるデータセンターをとりまく状況が多少変わるかも知れません。

「クラウド」という効率化

まず、「クラウド」が仮想化による位置透過性を実現した柔軟なITプラットフォーム提供であると想定したとき、データセンターの物理的な「立地条件」という概念がどうでも良くなります。 ライブマイグレーションなどを同時に考えると、「必要な時に必要な場所に実態が移動する」ということになる可能性もあり、実態が物理的に一定の場所にないことすらあり得そうです。

さらに、「原則として人が立ち入らない」や「機材が何であろうと関係ない」という状況が発生するため、コロケーションのようにユーザ側が個別の機器を設置するようなことがなくなります。 各ユーザが自由に機器を持ち込むと、たとえば横から吸気して横から排気するスイッチが設置されることがあるので、空気循環が複雑になる場合があります。

しかし、事業者が全てを設計可能な環境では、設置する機器の選定を含めて全てを計画的に行えます。 そのため、同じ機器を揃える事で熱のムラを軽減したり、空調とサーバ設計を包括的に行ったり、電源管理を含めた計画的なサーバ設置が可能となります。 同一事業者が一括して大規模にサーバを購入することも可能となり、規模の経済が働きやすくもなります。 「クラウド」という名目でユーザ向けにコンテナを活用したマネージドサービス用のプラットフォーム構築する形なのかも知れません。

このように構築されるクラウドは、大規模に構築できる事業者ほど有利となり、将来的には一部の大規模事業者が国内ITプラットフォームの大半を提供するという未来像もあり得るのではないかというのが私の感想です。 今でもコロケーションの再販などが行われていますが、日本国内でクラウドが活発になると、巨大なデータセンターを複数持つ事業者とリセラー的な事業者の差がより顕著になるのかなぁ、という感じです。

(続く:次へ)

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