「これからの技術を担う若者のやる気を刺激する」クラウドコンピューティングコンペティション / Interop Tokyo 2009 ShowNetインタビュー(6)

2009/6/1-4

今年Interopで開催されるクラウドコンピューティングコンペティション(CCC)に関して日本アイ・ビー・エム(株) 織学氏、奈良先端科学技術大学院大学 門林雄基氏にお話を伺いました。

Q: なぜクラウドコンピューティングコンペティションを行おうと思ったのですか?


織氏

織氏: クラウドコンピュータコンペティションはNOCミーティングでの話題が出発点でした。 色々議論する過程で「幕張メッセに単にクラウドを作るだけではしかたがない。これからの技術を担う若者のやる気を刺激するような内容にしたい」という方向で話が進みました。

門林氏: 「クラウド」という言葉は世の中で騒がれていますが、実際にどうやっているのかや、アイデアを若者がどう使ってくれるのかなどに関してはあまり見えてきません。 グリッドにしてもそうなのですが、日本ではグリッドはあまり流行りませんでした。 これらの条件として例えばシングルサインオン(SSO)やサービスオリエンテッドアーキテクチャ(SOA)が非常に重要になってきます。 アメリカではIdMが流行っているのですが、IdMはSSOが前提です。 日本では、そもそもSSOが受け入れられていないんですよね。 SSOへの理解が無い状態でIdMを売ろうとして、日本で苦労している人が多い印象があります。

日本は非常に受け身が多いんですよね。 報道で「これからはグリッド」と言われれば飛びつき、「これからはクラウド」と言われれば飛びつく。 これでは、日本の業界は終わってしまうと思うんですよ。 受け身ではなく、自分で何かを産み出すというサイクルも必要だと思います。

それには、やはり若い人がある程度自由に活動出来る場を作る必要があると感じていました。 今回は、そのような「場」の提供を目指しました。

クラウドにもオープンエンジニアリング的視点が重要だと思うんですよね。 「クラウド」と言われるものの本当の中身がブラックボックスで、お金を出せば買えるだけというのではなく、ホワイトボックス化したものを今回実現できればと考えています。 そのためにクラウド遊びが出来る「場」として今回のコンペティションを使って頂ければと思います。

Q: 今回の「クラウド」を実現するための仕組みを教えて下さい


門林氏

門林氏: ShowNetを通して既存のクラウドサービスにつなぐ、というだけであればNOCメンバーがわざわざが準備する環境としてはつまらないです。 先ほどオープンエンジニアリングと言いましたが、やはりそれが非常に重要だと思います。 クローズドだとある瞬間は儲けられるのかも知れませんが、恐らくそれ以降は続きません。 「中身がわかりません」だと業界として盛り上がらないのではないでしょうか。

織氏: 当初は幕張メッセ内にサーバを大量に設置するという案もありましたが、最終的にはStarBEDにある1000台のマシンを若者が使える機会を作ろうという内容に落ち着きました。 ネットワークとしてはJGNと接続し、クラウド本体はStarBEDという事になります。 ShowNet内で運用されるのはDNSだけです。

最終的に決定した内容だけを見れば「クラウド」ということで「そこに実態が無い」という整合性も取れたので、そのような点においても、面白いコンペティションになっていると思います。

今までのInteropは、ネットワークそのものを来場者の方々に見て頂くと同時に、ネットワーク利用者である出展社の方々に向けてShowNetを提供していた面が強かったのですが、今回はそのどちらでもない別の方々にネットワークを使って頂くという試みです。 しかも、Interopでこのようなコンペを行うのも初めてです。

Q: クラウドコンピューティングコンペティションの特徴はどのような点だと思いますか?

織氏: ShowNetという非常に先進的なネットワーク上で行われるという特徴とともに、ミドルウェアの縛りが無いのも大きな特徴だと思います。 このようなコンペティションが開催されるのは、主に特定のクラウド技術を宣伝するという目的が含まれます。 どんなミドルウェアであっても自由に使って良いというのが最大の特徴ではないでしょうか。

Q: このコンペでどのような実績が出れば良いと考えていますか?

織氏: 今回のコンペの応募者として想定しているのは「若者」です。 若者がとにかく多く応募してくれれば嬉しいと考えながら企画しました。 若者ですが、例えば高専とか大学生ですね。 1000台を使って好きに遊べる環境ってなかなか無いと思うんですよね。 普段できないような実験をして頂きたいと思います。 ここでの実績が論文として出たり、その後ベンチャー企業が設立されたりすれば嬉しいですね。

門林氏: あとは、色々な試みって「ライブでもやってなんぼ」というところがあるじゃないですか。 本番で動くかどうか、それが全てであるというか、生存証明というか。 ライブデモをやっている最中にシステムが落ちると「おしかったねぇ」という感じですね。 手元の実験環境で普通に2,3台と1000台では見るべき所が違って来るんですよね。 例えば、数台でやっているだけでは出てこないバグなどがあります。 実際にやってみて、そういうところで焦ってもらうという経験の場を作れるのが良いと考えています。

ただ、社会人を排除しているわけではありません。 ベンチャー企業なども参加して頂ければ非常に嬉しいです。

クラウドコンピューティングコンペティションは来年も開催するつもりです。 やるからには3年は続けたいと考えています。

Q: 賞金はいくらですか?

織氏: 賞金額は30万円となっていて、高額というわけではありませんが「表彰されること」が重要になるのではないかと考えています。 例えば、このようなコンペティションを見て宣伝効果を狙っている企業がいるかも知れないと考えています。

ただ、このような面に関しては事後評価しかできないのでわからないというのが正直なところです。 最終的な結果発表のために、現在はカンファレンス会場を2時間おさえてあるのですが、そこでライブデモをして頂く予定です。 また、必要であればパネル展示を会議棟二階にて行えます。

Q: 昔からグリッドという概念がありますが、それとクラウドの違いって何ですか?

織氏: 最近話題のクラウドですが、確かに一種のバズワードのようになっていると思います。 いままでのグリッドと比べると、ビジネスにむすびつこうとしているのが「クラウド」であるという感想がありますが、「これをしていればクラウド」という定義は確かにないと思います。

今は、マーケティングキーワード先行しているクラウドですが、日本のクラウド技術は俺が作るという感じの方が出て来て頂きたいと強く感じています。 きっと、そのようなデモが行われると思うので、是非いらして下さい。

http://interop.jp/pavilion/ccc.html

Q: ありがとうございました

ありがとうございました

(撮影:森田兼次)

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