IPv4アドレス枯渇。その意味と恐らくこれから起きること(5)

   このエントリをはてなブックマークに登録    2011/2/1-1

しかし、影響を受ける人が限定的だからこそ大きな問題もあります。 日本国内の多くの一般ユーザにとってはIPv4アドレス枯渇は自分とは関係無い問題に映ってしまいがちです。 そのため、ISPなどはIPv6のための大規模な追加投資を行いづらく、腰は重いけど危機が確実に近づいているのはわかっているのでツライという状況がここ数年続いていました。

日本でのIPv6対応状況

日本でも、徐々にIPv6対応サービスが開始しています。 大手としてはYahoo!BBが昨年4月時点でIPv6サービスを開始しています。

その他にも、徐々に各ISPがIPv6の接続サービスを開始するものと思われます。 今年の4月に開始されると言われているNTT-NGNでのIPv6サービスが一つの転換点になりそうです(NTT-NGNでのIPv6マルチプレフィックス問題は話がややこしくなるので割愛。案2(トンネル方式)が4月開始で、案4(ネイティブ方式)が4月以降の開始であると言われています。「4月以降」がいつなのかは、今のところ私は知りません)。

日本でのIPv6対応状況を知るには、IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースが公開しているIPv6サービスリストを見るのがお勧めです。

「IPv6間に合わなかったね」について

「IPv6が間に合う」という表現をチラホラとネット上で見ますが、恐らくIPv6はどのような状況であっても「間に合う」という状態が発生しない「何か」なのだろうと思います。

もし、IPv4アドレスが枯渇するような状況になる前に世界全体がIPv6へと移行していたならば、IPv4利用者が激減する状況になるはずで、そのような状況下ではIPv4アドレスは枯渇しません。 そのため、「間に合う」か「間に合わない」かではなく、「IPv4って昔あったよね」と言う人が居るぐらいになりそうです。 さらにいうと、IPv4アドレスが枯渇する前にIPv6が普及していれば、「IPv4アドレスは枯渇しないじゃん!IPv6って本当に必要だったの!?」という意見が多く出る事だろうと思います。

一方で、IPv4アドレスが枯渇して、本当に困った状況になってから渋々様々な事業者がIPv6へと移行するような状況では、「IPv6は間に合わなかった」と言えそうです。

要は、問題発生前に何かを解決してしまうと、それに対して批判的な意見が増えるだろうし、問題発生してからではないと人々は動かないという事例の一つかも知れません。 現時点での状況を見る限り、IPv6は必要なものだろうと私は思いますが、それが本当に望まれているかというと必ずしもそうではなさそうだという微妙な感想を持ってます。 IPv4アドレスが枯渇せずIPv6への移行を行わずに済むのであれば、多くの人々はIPv6への移行という複雑で面倒なことは避けたいのだろうと思います。

「焼け石に水」な非難

IPv4アドレス枯渇の話題になると、現時点でIPv4アドレスを保持している組織に対して「持ってるんだから返せ」という意見がネット上で多数出ています。 しかし、たとえ複数の企業が持っているIPv4アドレスを返却したとしても、それは焼け石に水でしかなく、実はあまり建設的ではありません。

IPv4アドレスの1/256の大きさである/8ブロックは約1ヶ月で割り当てが行われるほど、今のインターネットは成長しています。 その1/256である/16ブロックは、ざっくりと計算すると成長を続ける世界のインターネットの3時間分の需要しか満たせません。

たとえば、/16ブロックを返却するために何ヶ月(場合によっては年単位)も組織内ネットワーク構成変更の準備をして返却したとしても、一瞬で割り当てが行われて終わってしまいます。 しかも、IPv4アドレス枯渇に関連するニュースが去年から増えていることもあり、割り振りスピードは加速しています。

そのため、今既にIPv4アドレスを持っている組織から返却があったとしても、砂漠にバケツ一杯の水を撒くような状態になってしまいそうです。

最後に

IPv4アドレスが枯渇が現実のものとなりましたが、今後何が起きるのかに関しては、誰もはっきりとしたことはわかりません。 今まである程度自由に拡大し続けることが出来たインターネットですが、今後も拡大を続けるためには様々な工夫が必要とされると同時に、その他の要素による影響を受けながら「新しいインターネット」がこれから構築されていくものと思われます。

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