「IPv4アドレス売買」とIPv6への移行

   このエントリをはてなブックマークに登録    2010/2/10-1

IPv4アドレス枯渇が迫りつつあります。 今のままでは、恐らく2011年に世界のIPv4アドレスが底をつきます。 それに伴い、IPv4アドレス売買やIPv4アドレス市場に関して語られることがありますが、今回、それらに関しての個人的な感想をまとめてみました。

ここで述べているのは、私個人の視点から見た時の未来予測や、IPv4アドレス自由売買が実際に行われるとどうなるかという考えなので、異論や反論もあり得ると思います。 様々な議論や見解が登場するのは良いことだと思うので、IPv4アドレス枯渇やそれに伴う変化や動きについてのご意見は歓迎致します。

そもそも「IPv4アドレス枯渇」とは何か?

現在は、IPアドレスが必要なくなるよりも新規に必要になることが多いため、常に新しいIPアドレスブロックを新規割り当て用プールから出している状態です。 世界中でインターネット利用人口が増えて行きつつ、一人当たりの利用台数も増加し、ダイアルアップから常時接続が増えるなどの条件によって必要なIPアドレスは増えるばかりです。

しかし、IPv4アドレスは32ビットというサイズであるため、割り当て可能なIPv4アドレスには限界があります。 2011年頃に新規割り当てプールが底をつきそうだというのがIPv4アドレス枯渇問題です。 現時点では、残りのIPv4アドレスは10%を切っています。

「IPv4アドレス枯渇」という単語で語られることが多いのですが、IPv4アドレスは消費と同時に消えてしまうものではないので、実際にはIPv4アドレスが「枯渇」するわけではありません。

「IPv4アドレス枯渇」が示しているのは、新規割り当て用IPv4アドレスプールの枯渇です。 さらに細かく言うのであれば、「枯渇」という単語を使わずに「IPv4アドレス新規割り当て終了」と言う方が良いのかも知れません。 ただ、もう既に「IPv4アドレス枯渇」という単語が普通に使われるようになっているので、私はあまり気にせず「枯渇」という単語を使ってしまっています。

IPv4アドレス枯渇に関する詳細や、その影響等に関しては昨年書いた「大変革が迫りつつあるインターネット」をご覧下さい。

「IPv4アドレスを自由に売買できるようにすればいいじゃない」

IPv4アドレス枯渇問題に関する話題で「IPv4アドレスを自由に売買できるようにすればいいじゃない」という意見をネット上でチラホラ目にする事がありますが、これにはいくつか問題があります。 以下、IPv4アドレス自由市場が抱える問題点を紹介します。

IPv4アドレス管理者が把握できなくなる

現在、IPアドレスは「誰がどのアドレスブロックを持っているか」という点が管理されています。 そのため、何か問題が発生したときに、管理者がIPアドレスから問題発生組織を知って連絡ができる体制が整えてあります。

現在IPアドレスを統括的に管理している組織を通さずに、自由なIPv4アドレス取引や、IPv4アドレスの闇取り引きが横行すると、各IPアドレスを実際に利用している組織が把握できない状態が多発するため、微妙なバランスで成り立っているインターネットを根底から変えてしまう恐れすらあります。

経路爆発問題に拍車がかかってしまう

数年前から「経路爆発問題」という問題が発生しています。 これは、インターネットの規模が増大して行った結果、古いルータのメモリが足りなくなってしまったというものです。

多くの経路を扱えるメモリが豊富なルータを購入すれば問題は解決しますが、高性能ルータは非常に高価であるため(一昔は億円クラス、今は数千万クラス)そう簡単には置き換えられず、上位のISPに経路数を減らす対策を頼んだりしています。 さらに、経路数が多くなればなるほど経路のlookup処理の負荷が上昇する可能性もあります。

このように、経路が増大するとヒイヒイ言ってしまうBGPルータがインターネット各所に多数存在していますが、IPv4アドレスの自由な売買が開始されると、経路爆発問題に拍車がかかってしまいます。

IPv4アドレス売買が行われるとき、売る側の組織は自分保持しているIPv4アドレスブロックから、自分が使っていない部分を切り出して売ります。 そうすると、今まで一つだった経路が複数に分割されてしまいます。 たとえば、大きなアドレスブロックを持つ組織が収入を得るために、IPv4アドレスを細切れにして多数の組織に売り渡すと、それだけ大量の経路がインターネット上に溢れます。 さらに、無計画に注文が発生する度に細切れにしたIPv4アドレスを販売したりすると、同じ組織に連続しないIPv4アドレスを複数配分するという事例も発生する可能性があります。

このようなことが、世界各地で自由に行われてしまうと、今までにない勢いで経路数が爆発する可能性があります。 このため、IPv4アドレスの自由な売買は結果としてインターネットを不安定にする可能性があります。 たとえば、処理能力の低いBGPルータ救済のために経路数を無理に削減して、一部の経路への到達性を失うネットワークが登場するかも知れません。

参考:

需要は増え続けるが供給は増えない

IPv4アドレス市場が確立したとしても、IPv4アドレスの供給は簡単に増やせるものではありません。 IPv4アドレス枯渇後も世界的に増加し続けるIPアドレス需要に対して、使い続ける事が前提のIPv4アドレス供給は減少していく事が予想できます。 IPv4アドレスは「使うためのもの」なんですよね。

最初のうちは、各種組織が利用していないIPv4アドレスが「市場」に登場する可能性がありますが、一度売られたIPv4アドレスが再度流通する可能性は低いと思われます。 そのため、時間が経過すればするほど供給が減少し、IPv4アドレスの価格は高騰していく可能性がありそうです。

IPv4アドレスが高騰すれば、売る事に対して前向きになる組織が登場する可能性もありますが、IPv4アドレスを売るというのは自分のネットワーク規模を縮小するという意味でもあります。 どの組織も一定以上は身を削る事はできないので、価格が上昇したからといって供給が永遠に増加し続けるというものではなさそうな気がしています。

価値発生による争奪戦の可能性

「市場」を通してIPv4アドレスが売買可能で、資産としての価値が発生するような雰囲気が出てしまうと、一瞬でIPv4アドレスが枯渇してしまう可能性もあります。

ただでさえ、SPAM送信業者やSEO業者によるIPv4アドレス取得で枯渇へと向かっているのに、そこに加えて占有目的の業者が大量流入してくるとどうなるか、、、ですね。

余談ですが、たとえば「IPv4アドレスを分散したほうがSEO高価が高い!」と言って大きなIPv4アドレスブロックを取得して「サービス」として堂々とSEO商品を提供している業者がいます。 また、SPAM送信やマルウェア配布のために自前でデータセンターを運営して、IPv4アドレスも正式に自前で取得してISP化してしまい、苦情申し立て先が無い状態にしてしまうという事例もあるようです(threatpost: Attackers Buying Own Data Centers for Botnets, Spam)。

インターネットが普及し始めた頃から金銭目的でのドメイン名占有を行う人々が非常に多く発生しましたし、「価値があって売れる」という臭いが出た時点でIPv4アドレスは瞬間的に枯渇する気がします。

いきなり資産を保有してしまう?

ここら辺は、かなり妄想になってしまいますが、IPv4アドレスの取引が市場化された場合、IPv4アドレスに値段がつくことになります。 値段がつくということは、国によっては資産とみなされて会計処理が必要になったり、課税されたりするかも知れません。 資産となった場合、IPv4アドレスを保持する全ての組織がいきなり資産を持つことにもなりそうです。 そのような場合、IPv4アドレスの売買に全く興味が無く単にいままで通り運用を行いたい組織にまで影響が発生してしまう恐れがありそうです。

さらに、国毎に資産となるかならないかが違う場合や、税制上有利な国が存在した場合、名義上は別の国でIPv4アドレスを保持しつつ、実際は別の国でIPv4アドレスを活用するという抜け道が横行するのかも知れません。

ただし、IPv4アドレス取引の対価は公開されずに水面下で行われる場合も多そうなので、「資産」となるかどうかは「相場」となるような値段が表面化するかどうかが鍵となるかも知れません。

「資産化してしまう」という問題がどこまで議論されているかに関しての詳細な資料は今回発見できませんでしたが、JPNICによる昨年12月の発表資料の中で今後の課題としては挙げられていました(参考:IPアドレス移転制度に関する状況:社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)。

IPv4アドレス移転

とはいえ、IPv4アドレスが枯渇した後に、余っているIPv4アドレスを組織間で移転できる仕組みがなければ、IPv4アドレスがどうしても必要な組織は闇取り引きへと走らざるを得なくなってしまいます。 そのため、全てを禁止するのではなく、手続きを経てIPv4アドレスを移転する仕組みが用意されています。

2010年2月10日にAPNICによる、IPv4アドレス移転が実装され、組織間でIPv4アドレスを移転できるようになります。 しかし、ここで重要なのは「IPv4アドレス市場」や「IPv4アドレス売買」と「IPv4アドレス移転」はニュアンスが違うという点です。

まず、最初に、IPv4アドレス移転は移転するためのものであり、自由市場というわけではありません。 IPv4アドレスを新規に受け取る団体に対する審査は、従来の新規割り当て同様に存在するため、IPv4アドレス移転の仕組みがあるからといって、IPv4アドレス自由市場が登場するわけではありません。 そのため、投資目的でのIPv4アドレス取得のような事は困難であると推測されます。

参考

APNIC関係者の方々へのインタビューがITproに掲載されていますが、移転に関しての基本的な考え方として非常に参考になるので、是非ご覧下さい。

RIR内に限定された移転

「IPv4アドレスはアメリカが世界の半分を保持していて、使われていないものも多い筈だから、それを放出すれば何とかなる」という意見もネット上でチラホラ目にしますが、現時点での枠組みでは、アメリカに割り当てられたIPv4アドレスを日本国内で正式に譲り受けることは出来ません。

これは、現時点での「IPv4アドレス移転」が各RIR(Regional Internet Registry, 地域レジストリ)に限定されているためです。 RIRとしては以下の5つの組織があります。

  • AfriNIC(アフリカ)
  • APNIC(アジア太平洋地域)
  • ARIN(北米、カナダ、及びカリブと北大西洋地域)
  • LACNIC(ラテンアメリカ及びカリブ海地域)
  • RIPE NCC(ヨーロッパ、中東、中央アジア)

これらのRIRのうち、日本が参加しているAPNIC以外で、移転の仕組みがあるのはRIPE NCCとARINです。 RIPE NCCでは2008年12月に施行され、ARINでは2009年6月に施行されています。 LACNICでは移転の仕組みに関して議論中で、AfriNICではまだ議論が開始されていないようです。 それぞれの移転の仕組みは、RIR内部での移転手続きを前提としており、RIRを超えたIPv4アドレス移転は今後の課題として残されたままです。

このため、アメリカに割り当てられたIPv4アドレスを世界に再配布することは現時点ではできません。 それができるように仕組みを変えることは不可能ではありませんが、恐らく決定までに時間がかかり、議論をしているうちにIPv4アドレスが枯渇してしまう可能性もあります。

IPv4アドレス移転によって延命が実現する期間

IPv4アドレス移転が、IPv4アドレスの新規割り当てが不可能になる時期を遅らせるための延命策としてどれぐらいの効果があるのかという試算が昨年12月に発表されていました。 JPNICによる試算では、現時点での移転の仕組みを活用して、日本国内でIPv4を延命できる期間は「0.9年」だそうです(参考:IPアドレス移転制度に関する状況:社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)。

そこでは、非常にざっくりとした試算から0.9年分という移転可能アドレス数を推測しています。 その根拠は以下のようになっています。 非常にざっくりです。

旧クラスAで配布済みなものがAPNIC内で38個あり、そのうち経路表にのっているものが20個です。 18個は経路表にのっておらず、グローバルに使われていません。 グローバルに使われていないIPv4アドレスのうち半分が移転に利用可能で市場に流通と仮定すると、9個のクラスA分アドレスが移転に利用されることになります。 この9個というのは、APNICの年間需要の0.9年分です。

色々非常にざっくりですね。 ただ、「現時点で経路にのっていないもの」という視点で考えると、どう長く持ったとしてもIPv4アドレス移転で稼げる時間は2年ぐらいなのかも知れないとは思いました。

なお、注意が必要なのは2010年2月10日に施行開始されるのはアジア太平洋地域RIRであるAPNICです。 日本のIPv4アドレスを管理しているJPNIC(社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)による方針は今年前半のコンセンサスを目指しているようです。 そのため、日本国内ですぐに移転が実現できるというわけではありません。 (まあ、そもそも現時点では、まだ枯渇してないので普通に新規割り当てを受け取れるので移転を活用する必要性は少ないとも言えそうです)

アメリカは、さっさとIPv6へ?

世界の半分のIPv4アドレスはアメリカで利用されていますが、そのアメリカは日本よりも急速にIPv6へと向かっているように見えます。

つい最近、YouTubeがIPv6化しましたが、Google以外のWeb界の巨人の動きがNetwork World記事(Google's leading, but where do other Web giants stand on IPv6?)に掲載されていました。 それによると、各Web界の巨人のIPv6に対する取り組みは以下のようになっているようです。

Facebook
今年中旬にIPv6対応予定
eBay
6 - 8ヶ月後ぐらいに対応予定
Yahoo!
既に多数のISPとIPv6ピアリング済み。 可能な限り早くサポートしたい。
Microsoft
記者の質問への回答は無し。ただし、Windows LiveやBingを運営しているMicrosoft NetworkからIPv6トラフィックが発生していることは確認できた。IPv6で先進的なHurricane Electric社など少なくとも9つのIPv6ピアリングをしている。 (参考:Hurricane Electric BGP検索結果)
Wikipedia
いつ本体をIPv6対応するかは明言していないが、メールやバグトラッカー、その他周辺サービスはIPv6対応済み。本体をIPv6化したことはあるが、パフォーマンス問題でとりやめ(参考:IPv6 for Wikimedia)
Twitter
未定。

アメリカでは、アメリカ軍の調達に関連する通信機器はIPv6対応を求められていることもあり、通信機器に関してのIPv6対応もかなり進んでいるイメージがあります。 IPv4アドレスを最も保持している国が、日本よりも早くIPv6化してしまいそうな勢いなのは非常に皮肉だと思います(とはいえ、実際にアメリカでのIPv6移行がどれだけ進むかは未知数ですし、アメリカにもIPv6移行に対して批判的な人が結構居るので、紆余曲折はありそうです)。

IPv6ネットワークの増加データ

以下、IPv6を利用しているAS(Autonomous System)数と、BGPテーブルサイズのプロットデータです(データはhttp://www.cidr-report.org/より)。 IPv6を利用する組織が徐々に増えているのが、わかると思います。

最近、IPv6化は確実に進むと思い始めました

IPv4アドレスの移転に関連して、IPv6の普及に関しての私の感想です。

こんなことを書くと某方々に怒られてしまいそうですが、私はIPv6は普及せずにIPv4のままの世界が続くだろうと、数年前まで考えていました。 たとえば、森首相が所信演説でIPv6に関して発言したときには、IPv6が広く一般に普及するという世界が来ることに対してかなり懐疑的でした。 (所信演説資料が発見出来なかったので参考用にダボス会議での演説内容:外務省:ダボス会議における森総理大臣のスピーチ 平成13年1月27日)

しかし、最近の感想としては、恐らくIPv6化は粛々と進むだろうと考えるようになりました。 ユーザにニーズが無くても、インフラ提供者側の都合でインフラは変化していくものだと、最近は思います。

たとえば、NGNというものがありますが、昔は「NGNってユーザに必要なの?」「普及するの?」程度にしか思っていませんでした。 しかし、NTTには今の交換機網をNGN化する強いモチベーションがあります。 「交換機が作られない」「交換機の運用コストが高い」という理由です。 この強いモチベーションを背景として、今の電話網は時間をかけて確実にNGN化されるだろうというのがわかりました。 たとえば、今、フレッツを申し込もうとするとフレッツ光ネクスト(NTT-NGN)が標準になっており、かなりしつこく要求しないと非NGNのBフレッツは申し込めません。 このように、インフラ提供者側のモチベーションに応じて、恐らく日本国内でNTT-NGNは確実にユーザ数を増やして行くと思われます。

IPv6も同様で、インターネットインフラ業界では既に世界レベルでIPv6化が進んでおり、ユーザにニーズがあるかどうかとは別の次元で話が進行しているように思えてきました。 インターネットインフラ側としてIPv6へと移行しなければならない明確な理由があり、恐らくユーザもIPv6へと自動的に移行へと誘導されていくのだろうと推測しています。 そして、多くのユーザは、IPv4からIPv6への切り替わりに気がつかずに、インターネットを使い続けるのだろうと思います。 移行中の時期には、デュアルスタックであることによる弊害や障害が色々発生するとは推測されますが、どちらにせよ、いつの間にかIPv6を使っているというユーザが徐々に増えるような気がしています。

インターネットインフラ側がIPv6を推進しなければならない理由の一つとして、IPv4の運用コストがIPv4アドレス枯渇ととともに今後増大する可能性が挙げられます。 まず、IPv4アドレスが枯渇したときに必要になるのが大規模NATであるLSN(Large Scale NAT)です。 このLSNは、通常の家庭用NAT機器とは異なり、様々な機能や規模性がもとめられるため(参考)、現時点では、高価になるだろうと推測されています。 そして、全ユーザに対してLSNによるサービスを提供するには、それなりの台数が必要となります。 ISPとしては、高価な機器を大量に購入しなければならないのは大きな負担なので、購入台数を最小限に停めつつ、LSN購入時期を可能な限り後ろにずらしたいのだろうと思います。 また、LSNはネットワークに対して複雑度を上昇させる行為でもあるため、障害対応によって発生する管理コストも今より増大することが推測されます。

もう一つの要因として推測されるのが、IPv4アドレスそのものの価値の増大によるコスト上昇です。 これはかなり妄想のたぐいの話になりますが、たとえば、IPv4アドレスが枯渇して、IPv4アドレスそのものが貴重な「資源」となった場合、その「資源」を手に新規に入れるために「コスト」が発生する可能性があります。 需要が増え続けるのに供給が減り続ける可能性が高いIPv4アドレスは、最終的には価格が高騰するかも知れません。

さらに、資産となったIPv4アドレスを手放したく無いという考えから、IPv4アドレスを誰かからレンタルしなければ新規ネットワークを運営できないという世界が発生するかも知れません。 そうなるとIPv4アドレスそのものが財を産み出す「資産」になってしまい、その「資産」を保持することそのものに税金などのコストがかかる可能性すらあります(ここまで来ると、超妄想ではありますが、、、)。

このように、IPv4を運用し続けることがIPv6よりも高コストとなったとき、インターネットインフラ屋が生き残るにはIPv6移行を進める以外に無くなってしまいます。 そしてユーザはニーズがあるからIPv6を使うのではなく、提供されるのがIPv6なので、特に選ぶわけでもなくIPv6へと移行させられていくのだろうと推測しています。

ただし、IPv6への移行を遅らせてもあまり痛くない組織もあり得ます。 既に規模が大きく、新規会員獲得は飽和しているけど、IPv4アドレスブロックは既に大量に保持しているような組織です。 当たり前ではありますが、現時点でのIPv4アドレス保持数は大きい組織ほど多くなっています。 IPv4アドレスが新規割り当て出来なくなった瞬間に、新規に規模拡大をしようと思っても既にIPv4アドレスがなくなっているため、枯渇時点で小さな組織ほど新ネットワーク実現のためにより多くのLSN機器などを購入する必要が発生し、事実上規模の格差は固定されてしまう可能性があります。

結局、IPv6へと移行しないことは、強いものをさらに強くし、弱いものが淘汰される可能性を含んでいる気がします。 一方で、IPv6化への備えが最も整っているのが既に強い組織だったりもしそうです。 結局、IPv4アドレス枯渇問題は、非常に大きな「ふるい」のような気がします。

IPv6の難しさ

IPv4とIPv6そのものを比べると、アドレス長と以外に大きな違いはなさそうにも思えますが、IPv6への移行という視点で考えると、実はそんなに簡単ではないような気がしています。

たとえば、10年前のIPv6は知っていても、最近の動向は全く知らないという方々も多いと思われます。 そのような場合、最近のIPv6を調べ直すことから始めなければなりません。

さらに、IPv6そのものだけではなく、LSNなどの技術との組み合わせかたや、トンネル技術の動向に関しても知る必要があります。

それだけではなく、IPv4側も複雑化しているという事情もあります。 たとえば、ロードバランサ系の機器や、ロードバランシング用にルータに行っている設定をそのままIPv6で反映できるかという課題もありそうな気がします。 企業などでは、ファイアウォールなどのセキュリティ系も考慮しなければならなそうです。

ネットワークだけではなく、アプリケーション側にも対応が必要になりそうです。 良く言われる話として、アクセスログの解析プログラムなどの修正が挙げられます。 IPv4に加えてIPv6のアクセスログ解析プログラムを書かなければならなくなるだけではなく、IPv4とIPv6のログを統合するのか分けるのかという事も考慮しなければならなそうです。 また、IPv6とは直接関係ありませんが、IPv4ネットワーク上でLSNが普及してくると、アクセスログに各TCPセッションのポート番号を記録する必要が発生します(参考:IPv4アドレス枯渇がWebアドミンに与えるかも知れない影響)。

IPv6ネットワーク運用に関する問題点等が本当に洗い出せているかどうか誰もわからないところも、大きな課題だと思われます。 実際に多くのユーザがIPv6を使うようにならないと、見えて来ない問題も多いでしょうし、複雑な構成が登場してみないと表面化しないルータのバグ等もありそうです。 いずれにせよ、過去のインターネット同様に、走りながら考えつつ実績を積み重ねるという運用が主流になりそうな気がします。

最後に

IANAプールが枯渇した瞬間に何かが発生するわけではなく、その後ジワジワと影響が出始めると思われるので、2000年問題のような怪しい騒ぎにはならないとは思いますが、この2年ぐらいは各所が色々と大変しそうだと妄想する今日この頃です。

また、今年はIPv4アドレス枯渇やIPv6まわりの話題が徐々に増えて行くと思われます。

関連

   このエントリをはてなブックマークに登録