光より速い通信技術の登場?

   このエントリをはてなブックマークに登録    2010/4/28-1

事業仕分け第二弾が行われていました。 昨日、Twitterで「光ルータ」という単語が出てるのを見て途中から見たのですが、中々刺激的な内容でした。

私が見たのは、「B-17 : 新世代ネットワークの研究開発等」に関してで、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)が議題として挙げられていました。 具体的には、[1]新世代ネットワーク技術の研究開発、[2]民間基盤技術研究促進業務、[3]情報通信ベンチャーへの出資、という3点に関してだったようです。

ライブで見たのは比較的最後の方だったので、前半はライブで見ていませんでした。 ライブ終了後に、Ustream上で公開されているアーカイブを見たのですが、基本的に終始質疑が噛み合ず、1時間以上が経過した後に縮減及び廃止という結果になっているという感想を持ちました。

議論の多くが、独立行政法人の話題というよりも、むしろ総務省本体の「原口ビジョン」の妥当性に関してだったと感じました。 多くの質問に答えていたのが、総務省の内藤副大臣だったのも印象的でした。

1時間という限られた時間だったこともあると思うのですが、総務省全体としての「原口ビジョン」と独立行政法人であるNICTの切り分けがどうなっているのかがストリーミング映像を見ていても良くわかりませんでした。 あと、議論のほとんどが「光ルータ」や「オール光」に集中していたので、発表資料に含まれているその他の話題や実績などに関して、ほとんど登場してなかった気がします。 個人的には、光ルータが10年後に実用化されて結果として70兆円の「国富」が生まれるという話は違和感を感じましたが、光ルータの現状や標準化などにかかる時間と普及にかかる時間などが事業仕分けの中で議論されたわけではないので、実際のところは良くわかりませんでした。

とはいえ、質問をする仕分け側と、それに答える説明者側の噛み合なさは強烈に印象に残りました。 全体的に、数十分のプレゼン時間で説明しきれる物では無さそうだと思いましたし、次世代ネットワークと新世代ネットワークの違いなどを事前に予習しておくことなどが求められるという意味で難易度が高い議題だと思いました。

以下、Ustreamで公開されている録画映像です。 ここで私が書いているのは個人的な感想がメインであり、かなり偏った視点なので、各自でアーカイブを是非ご覧下さい。

http://www.ustream.tv/recorded/6474169

光ルータ

まず最初に光ルータ(光スイッチ,光スイッチルータ)とは、そもそも何であるかですが、端的に言うと遅延(latency)を短縮し、消費電力を削減するというものです。 従来の光ファイバを用いたルータは、経路計算のために光ファイバを通る光を電気信号へと変換し、次ホップを計算し、その後もう一度パケット等を光へと変換して光ファイバを通過させます。


行政刷新会議 2010年04月27日 - B-17 配布資料(PDF)より

光ルータは、光→電気信号と電気信号→光の変換を大きく削減するので、消費電力が小さくなるとともに処理が速くなります。

個人的には、非常に面白い技術だと最近思っていて、そのうち調べてみたいと思っていたので、これが大幅に縮小されるかも知れないというのは多少残念に思いました。

光より速い通信技術がポンと生まれたらどうするんですか?

話が事業仕分けに戻りますが、個人的にB-17で一番衝撃的だった質問は次のものです。 恐らく、プレゼン側にとっても想定外の質問だったと思われます。

1:15:49頃

仕分け人:
さきほど光ルータの話がありましたが、もし仮に、明日光よりももっと速い、光を使わなくても速くて、熱効率も良くてですね、そうしたものがどっかからポンと出て来た時に、これは続けられるんですか? こうした事業というのは?


内藤副大臣:
(苦笑い)そういう、夢、夢の仮定の話があれば、結構なんですが、そういうのがあれば、その時々に応じて、そうする価値はあると思います。


仕分け人:
つまり何を言いたいかというと、比較優位性がなくなった段階で、どうされるのかということなんですが

内藤副大臣:
少なくとも研究者の皆様がたは、オール光が今の目指すべき方向性だと信じてやってるわけです

追記:ここで発言されている「速さ」は、恐らく物理的な速度ではなく、単位時間あたりに転送可能な帯域という意味であろうと推測されます。 また、「光」というのは、恐らく「光ファイバ」もしくは「光ルータ」のどちらかを省略しているものと思われます。 動画を見ていないと、一見、「光速を超える通信が出来るようになったら?」という発言に見えますが、恐らくそういう意図で仕分け人のかたが発言されたものではないと推測しています。

最後のまとめ寸前に出て来た質問ですが、これは非常にインパクトが強かったです。 第1回の事業仕分けのカラシニコフ発言並に印象に残った一言でした。

参考:wikipedia 事業仕分け (行政刷新会議)

「カラシニコフは1丁30ドルで買えるとインターネットに書いてあった」と述べ、自動小銃の予算減額を迫る

第一回事業仕分けでもNICTが話題になっていましたが、そのときは音声ストリーミングをイヤホンで聞きながら思わず「うぉ!」と思える鋭い突っ込みがあった気がするのですが、第二回のNICT事業仕分けは、NICTというよりも総務省本体の「原口ビジョン」にひたすら疑問を投げかけているように思えました。

最初はプレゼン側が言ってなかったのですが、質疑の過程で54分頃に70兆円という数値が「原口ビジョン」の70兆円であるという回答が出てました。 多少不思議だったのが、総務省事業を仕分けしている筈の評価者側に「原口ビジョン」の存在を認識もしくは理解している人がいなさそうに思えた事です。

その説明を受けた後でも、10年間で2000億円だすと70兆円の効果があるという試算の方式などに質問が続きました。 内藤副大臣も「今日はそこまでは用意していません」と返答していましたが、恐らくNICTの仕分けで総務省全体の方針としての「原口ビジョン」そのものが議論の中心になるとは予測していなかったのかも知れません。

個人的にストリーミング映像を見て「原口ビジョン」とNICTがどこまで関連していて、それそれの割合などはどうなっているのかが疑問に思いました。 そういう意味では、全体的に色々と曖昧さがあった印象がありますが、1時間(というかプレゼンは10分弱ぐらい)で説明できる内容ではなさそうな気がしました。

バックボーン技術って末端に恩恵ないということですね?

光より速い技術の登場という質問と比較すると影が薄くなりますが、次のやりとりも中々刺激的でした。

43:33頃

仕分け人:
普通、我々、まあ、自然科学系、ご存知だと思うんですれども、海外ですと、1ギガ、2ギガが平気で、たとえば、シンガポールなんかもそうなんですけど、国立シンガポール大学、日本だと100メガバイトぐらいがせいぜいなんですけど、いまお見せ頂いた研究成果が、世の中のどこに使われているんでしょうか?日本の優位性というのは?


内藤副大臣:
この、テ、ギガというのは、末端の話であって、総量のトラフィックの話です。

仕分け人:
じゃあ、末端には恩恵が無いということですね?

内藤副大臣:
(苦笑い)いやぁ、あ、あ、あ、あ、、、、


コーディネーター:
南淵さん、そこは、それは議論がちょっと違う。 いや、となると、その優位性が、どれだけの国富を産み出しているのかという、最初の水上さんの質問にたったときに、どういうご説明を頂けるのかなと。 比較優位にありますと、言うだけでは2000億の効果としてはね測れないですよね。 それがたとえば、日本の企業の競争力になってるとか、日本のこういうところの経済的な利益を生んでるとか、いうことの裏返しがあると、理解しやすい。 そこのご説明を頂けませんか? というのが次の質問ですね。

このやり取りで、まず最初に非常に印象的だったのが、質問する側が「日本だと100メガバイトぐらいがせいぜいなんですけど」と発言しており、100メガビットと100メガバイトの違いをわかってなさそうな点です。

内藤副大臣が思わず苦笑いしつつも「ギガ」ではなく「テラ」と言いそうになったのではないかと思える点も非常に印象的でした。 さらにその後、「じゃあ、末端には恩恵が無いということですね?」という追加質問が来たときに苦笑いしつつも、内藤副大臣が言葉に詰まっているのも印象的でした。

シンガポール大学の話が出ていますが、バックボーンという意味では10Gイーサが大学で実験的に使われた事例が2005年頃には既にありますし、今ではリンクアグリゲーションで10Gを複数本束ねている場所もあります。 末端回線という意味では大学内でユーザへの1Gイーサによるアクセスを提供している場所もあります。 また、大学ではなく日本国内の一般家庭向けを見ても、1Gbps回線を一般向けに商用提供しているサービスもあります(たとえばKDDIギガ得プランは2008年開始)。

このやり取りを聞いて、バックボーンの話って一般向けには理解されにくいんだなぁと実感しました。

NGNとNwGNの違い

「次世代ネットワーク」と「新世代ネットワーク」は違う物だという話が色々なところで出ていました。 要はNGN(Next Generation Network)とNwGN(New Generation Network)の違いなのですが、アーカイブ視聴前に事前情報として両者を見ておくと、議論がわかりやすくなるかも知れません。

総務省(2008年)資料: NGN・NWGNの動向及び政府の取組の動向及び政府の取組

最後に

以上、つらつらとまとまりも無く、事業仕分けストリーミングを見た感想を書いてしまいました。

ここで紹介したやり取りは、1時間以上にわたる議論の中から刺激的な部分を抜き出しただけであり、議論全体の一部でしかありません。 議論全体はアーカイブされているので、是非ご覧下さい。

個人的には津田さんがTwitterに書かれている意見も非常に印象的でした。 技術云々を含めてですが、1時間で全てをやろうというのは、やっぱりそもそも色々難しい気がしました。


http://twitter.com/tsuda/status/12934903740

参考

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コメント

最近の通信速度に関するニュースをぐぐってみました
NTT、1本の光ファイバで 69.1Tbpsのデータを240km伝送させることに成功
ttp://journal.mycom.co.jp/news/2010/03/26/048/index.html
 
ちなみに、このレベルになると無線ではまだ無理。
あきみち
最近の通信速度に関するニュースをぐぐってみました、さん、

マイコミジャーナルの、その記事ですが、432波長を多重しての69.1Tbpsであり、1波長は171Gbpsとなっているのでご注意下さい。
細かい突っ込みで恐縮ですが、光1波長で69.1テラ出ているわけではありません。
たぬ
研究者が自分の研究を推進するためには、分からない人にも分かるように、その意義を説明できるようにしないと、お金がもらえないってことですね。反省>自分
for たぬ
分からない人に理解してもらうよう努力していては一生、研究費は貰えません。
理解できないように、如何に煙に巻くかだと思います。w
質問自体があまりにアホすぎるんだけど、
一般人レベルの質問としてはありうるレベルなんで
答えるほうももうちょい賢く答えて欲しいわね

光に替わる技術がー、については最低でも10年20年で
実現されるメドが経つような技術は影も形もないから
ありえないとかで一発で否定するべきだし
バックボーンについては電線とか水道管で例えれば
わかりやすいだろうに
tom
スパコン時みたいに最速を争ってる技術的な捉え方してんだね。
今はサーバーとか他の部分でスピード上がらない要因多いから、末端では実感しにくいような気がする。
将来的に新しいビジネスにつながるインフラ面として、論じたほうが建設的かな。
それによって、需要予測とかいれれば実用化を急ぐべき物なのかどうか
ひいては今それだけそれに予算かけるべきなのか、民間(NTT)にまかせるのではダメなのかとか・・・
たぶん、NTTもかんでて例によって天下りとかも関連してるような気もするんだがw
名無し
光よりも早い技術がポンと出て来る訳が無いと思いきや、本当に出てくるとは…この人の予言が当たるなんて誰が想像してただろうか…

http://www.mainichi.jp/select/wadai/news/20110924k0000m040079000c.html


あきみち

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