IDCフロンティアにみる和製クラウドの未来

   このエントリをはてなブックマークに登録    2010/10/1-1

先月「IIJ外気冷却コンテナ型データセンター実験に見る和製クラウドの未来」という記事を書きましたが、今度はIDCフロンティア ビジネス開発本部サービス企画部長 粟田和宏氏に最近のデータセンター(ここではインターネットデータセンター/iDCを「データセンター」と表現しています)事情と、IDCフロンティアの取り組みを伺ってきました。 伺った話は、データセンターの変化、消費電力削減取り組み、データセンターが郊外へ移転する可能性、ソーシャルアプリプロバイダとクラウドなどです。

IDCフロンティアはデータセンター専業事業者の大手で、価格.comやpixivへのサービス提供を担っている会社です。

データセンター事業者の守備範囲が変わって来ている

今回は、私がデータセンター業界を知らないので、業界全体としての流れを含めつつ、IDCフロンティアで行われている活動を教えて頂きました。

まず伺ったのが、データセンター事業者の守備範囲が徐々に変化しているというお話です。 これまで、データセンターはお客様の設備を収容し、そのための環境を用意することが主な事業でした。 いわゆるコロケーションというICTサービスです。

非常にザックリと表現すると、データセンターは場所を提供し、そこでホスティング事業者などのMSP(Management Service Provider)が運用や監視の業務を行い、SIerが顧客のシステムを開発するという分業が行われていました。 しかし、場所貸しという事業から、データセンター事業者が自ら運用まで行うマネージドサービスを行う傾向になっているとのことでした。

逆に、今までSIerであった事業者がデータセンターを構築するという事例も増えています(例:TISやCTCによるデータセンター構築)。 今までは「層」のように分業が行われていた状態でしたが、今は徐々に事業の境界線が曖昧になり、お互いが競合する形になります。

粟田氏は「データセンターそのものの付加価値は今後下落していくでしょう。そして場所貸しとしてのデータセンターだけでは利益を産み出せなくなっていきます」と危機感を持ちつつ、その打開策として従来の場所貸しだけではなくリソース貸しサービスへの取り組みに注力されていると話していました。

「クラウド」という流れ

クラウドという流れに関して粟田氏は「従来は、データセンターのお客様は、サービスを提供するためにシステムを構築し、その運用のためにデータセンターを利用していました。しかし、クラウドコンピューティングの登場で、インターネット上でサービスを実現するリソースがあれば良いということに気がつきはじめています」と表現していました。 コロケーションという場所貸しではなく、リソース貸しというマネージドサービスを望む顧客が増えているようです。

日本国内でのクラウドといえば、Nifty CloudやIIJ GIOなどがありますが、IDCフロンティアにはNOAHというクラウドサービスあります。 「従来の場所貸しというデータセンタービジネスに取って代わる可能性がある」というマネージドサービスですが、IDCフロンティアでも事業規模が徐々に拡大しているとのことでした。

IDCフロンティアにおけるマネージドサービスの事業規模拡大には、SNSやソーシャルアプリの爆発的な普及が背景としてあります。

ソーシャルアプリプロバイダとクラウド

IDCフロンティアの提供するクラウドサービスのNOAHは、「最近ソーシャルアプリケーションプロバイダからの問い合わせが活発である」とのことでした。 これは、モバゲーで有名なDeNAのデベロッパーサイトで、IDCフロンティアのNOAHが一番最初に紹介されているからでもあるようです。


DeNAデベロッパーサイトより

この、「NOAHソーシャルアプリパック」の特徴で、個人的に注目したのが、設定済みのサーバをバックアップで用意しておいたうえで実際に稼働させた場合だけに追加サーバ分が課金されるというシステムです。 バックアップを用意しておく分は無償で、実際にトラフィックが増大したときにだけ課金されるというのは非常にリーズナブルですし、あらかじめ稼働させるサーバの上限を設定することになるので、サーバ稼働による課金が青天井になりません。

あと、もう一点着目したのが、コンテンツ同期やロードバランサが無償オプションとして提供されている点です。 非常に地味ですが、ある一定規模以上のサービスでは非常に大事だと思いました。

サイジングの相談

このように「予備サーバは無料」というサービスが実現可能となっているのは、事前にどれだけのサーバが必要であるか打ち合わせを行い、稼働率予測を立てているからだそうです。

粟田氏は「他社のクラウドサービスには、Webで申し込んですぐに利用できるものもありますが」と前置きをしつつ、「しかし、お客様が実際に求めているのは一分後にCPUが増えることではありません」と述べていました。 日本の顧客の傾向として、一瞬で何かができることというより、「必要な最適解を求める」傾向があるとのことでした。

たしかに、仮想化されたクラウド的なサービスの場合、どのように構築されているのかが明示されていない場合も多く、性能に関しての明確な基準もないので、実際に使ってみないとサーバの性能はわかりません。 そのため、クラウドサービスを提供する事業者と相談をしないと、最適なサイジングを推測できないという側面がありそうです。 それまで物理サーバを専用サーバとして借りてきたような顧客も、クラウドに移行するときにサイジングが全くわからないので、クラウドサービスを提供する事業者の営業と相談をするような必要性があるようです。

そのため、非常に柔軟性が高く何でも出来るようなシステムよりも、電話やミーティングを行いながらサービス提供を行う事業者と相談しつつ最適解を模索するサービスが好まれるようです。

「申し込んでから設定変更まで2〜3営業日かかる」というとクラウドコンピューティングとして柔軟性に欠けるサービスのようにも一瞬思えますが、事業者とソーシャルアプリプロバイダの双方が相談することで適切なサイジングを推測し、「使わなければ無料」という運用を実現するのは、実は非常に合理的であると感じました。

なお、NOAHは、サイジングだけではなく、DBチューニングなどの相談も受けているようです。

他社との連携

NOAHのソーシャルアプリ関連案件は、IDCフロンティアだけで完結しているわけではないようです。

たとえば、ソーシャルアプリケーションプロバイダによるゲーム開発の場合、NOAHのサービスはCPU・メモリ・ディスク・ネットワークのサーバリソースサービスで、その上で利用するミドルウェアは他社のものが利用できたり、サーバの運用そのものは運用を行うMSPにお願いするという形態があるそうです。

「ミドルウェアであれば、その分野で優れている事業者がいます。たとえば、我々だけでやったら10のうち4しかできないけど、自分達に欠けている部分を他社と組む事で7や8へと伸ばす事ができます」と粟田氏は述べていました。 データセンターが場所貸しからリソース貸しへと守備範囲を広げることで、今まで協調関係にあった会社が競争関係へと変わる一方で、それまで全く関係がなかった会社と提携が開始されるなどの変化があるのかも知れないという感想を持ちました。

北九州データセンター

IIJコンテナ型データセンターの取材では主に外気空調システムに着目して書きました。 やっぱり、そこら辺も聞いとかないと思って外気空調システムなどに関して質問してきました。

IDCフロンティアでは2008年から、外気空調システムを利用したデータセンターである「アジアン・フロンティア」を北九州で運用しています。 参考「ITpro: ソフトバンクIDC「アジアン・フロンティア」、排熱は冷やさない

(続く:次へ)

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