ジェンダーとテクノロジー

2007/7/4

Google Videoで「On Girls, Boys, and IT Careers」というビデオが公開されていました。 2006年4月6日にGoogle社内で行われたCornelia Brunner氏の講演を公開したものでした。 59分のビデオです。 非常に面白い内容でした。

このブログで「女性コンピュータエンジニアが少ない理由」という記事で紹介した論文の参考文献に入ってる人ですね。 「Brunner, Bennett, "Gender and Technology", Education Development Center/Center of Children and Technology, New York, New York, 1997」。 まだ読んでいませんが「From Barbie to Mortal Kombat: gender and computer games」というACMの論文も面白そうですね。

ちょっと過去の自分を反省。。。 男性的発想を自分では気がつかずに押し付けていたこともあったと思いました。

以下、要約です。 この人は結構早口なので正しく聞き取れているかあまり自信がありません。 間違っていたら突っ込んでいただければ幸いです。


20年前からの研究。 マイクロコンピュータが登場しはじめたときに、コンピュータは教育を劇的に変えると盛んに言われていた。 言われていた事が本当かどうかを確かめる研究を始めた。 その研究のために多くの寄付を集めた。

IBMやAppleなど多くの企業が機材を寄付してくれた。 研究者の2/3が女性。 機材が送られてきたときの男性と女性の行動が違っていた。 男性と女性の技術者としての能力は同じだった。 男性はとにかくあけて見たがった。 女性は全部整ってからやろうとした。 女性には動作方法がわかったら教えてというスタンスの人が多かった。

何か行動が違う。 性は知識や能力をわけるものではないが、行動が変わる。

ジェンダーとテクノロジに関して研究しようと思った。 ジェンダーとテクノロジに関して何を知っていか/何をしているか、ではなく、何を期待しているか/どう感じるか/どう接するかに関して調べた。

まず、注意しないといけないのは、生理学的な男女を語っているわけではない。 話しているのは男性的(masculine)と女性的(feminine)。 男っぽい女性や女っぽい男性というものも存在する。 例えば、ゲイやレズビアンのコミュニティというものも存在する。 男性的、女性的な傾向というのが重要であり、そちらの方を注目している。

NASA科学者、アーキテクト、プログラマ、色々な専門家に対してアンケートを行った。 キャリアについて質問した。 男性的なキャリアの答え方と、女性的なキャリアの答え方があった。 両方ともキャリアの内容は全く一緒。 男性的な回答は、例えば、幼稚園時代になりたいものを発見して、それに向けて着々と頑張った。 女性的な回答は、例えば、何をして良いか知らなかったけど、途中で知り合いにこれやってと言われてやって、その後、あの人にこれやってといわれて、現在に至っているけど、今の状態は気に入ってる。

男性は向かった道に一直線でないと間違っていると思う傾向がある。 女性は曖昧な言い方をするが、そのような表現方法は単に表現方法であり、実際に興味がないわけでも、やる気が無いわけでも、仕事を一生懸命しないわけでもない。 この事を知ることが重要。 単にキャリアというものの意味が自分にとってどういう意味を持っているかが違うだけ。

テクノロジで一番興味深かったのは何かを聞いた。 男性的な回答では、物質が全てだった。 機械そのもの、速度、出力など。 女性的な回答は別だった。 機械は非常に重要なのは理解していたが、実際に興味を持ったのはその機能だった。 機械そのものよりも用途に興味を示した。

機械そのものばかりを教育しても女性は興味を示さない。 機械そのものを強調した教育は女性的な思考の人を除外することになる。 社会的意義などを最初に教育して、その後、機械の事を説明してくれれば良い。 意味があるから必要で、その機能も必要だから覚えるのであれば良い。 そうしなければ女性をひきつけることはできない。

メンター(指導者、相談相手、助言者、先輩)と教育について研究したが、メンターは恐ろしく重要である事がわかった。 これは男性と女性に関わらず重要だった。 「あなたはこれが好きかも知れない」「あなたはこれが上手」「あなたなら出来る」と言う事が重要。 女性はこのことに非常に良く認識している。 女性は自分でやったと主張するのをためらい、誰か他の人の影響でやったといいがち。 男性は手助けを受けながらやってきたということを認めたがらない。

「あなたの専門領域で男性/女性であるということはどういうことですか?」という質問をした。 男性に聞いたら「ハァ?」と言われた。 女性に聞いたら録音テープが足りなくなるぐらい話をされた。 20年前は、ある専門領域に女性が入り込むのは非常に困難だったことを示している。 現在もそうかどうかはわからない。

職場での会話にも違いがあった。 女性は家庭や職場などを全てまとめて話したかった。 男性は家庭は家庭、職場は職場と分けていた。 女性は居心地が悪いが、男性は非常に居心地が良い環境になってしまう。

男性はコンピュータの技術によって他の人の手助けはもはやいらなくなったという考え方が好きだった。 女性は、コンピュータによって今まで手伝ってくれた人との関係が希薄になることを恐れていた。 ただし、これは現在とは事情が違うと思われる。 これはインターネットを知っているのは軍隊と研究者だけだったときの話。 これは変わっていると思っている。

テクノロジに対する本当の欲求は何かを調べたかった。 1.被験者が持っている技術について、2.100年後とその技術について、3.オレンジの皮むき機(複雑な構造だたので誰もそれが何かを知らなかった)を未来の考古学者が見つけたら何であると言うか?の3つの質問を行った。 オレンジの皮むきを調べる方法などを目の動作などをビデオに撮りながら観察した。

融合についてどう語るか、仕事と家庭、技術を生活にどう融合していくか? 自然についてどう語るか、技術と自然。 技術と体についてどう語るか 技術と創造性についてどう語るか。20年前は今のようにインターネットの創造性は知られていなかった。 技術とコミュニケーション。これも当時は関連が薄いとされていた。

男性的回答:技術を発展させること。 現状の問題を発生させているのが技術だとすると、新しい技術などで解決できるはずだ。

女性的回答:やり繰りする。現在の状態に新しい技術を導入する事による影響を心配。 何か問題が発生したら結局対処するのは女性だからかもしれないし、そのような考え方をするからかもしれない。

オレンジの皮むきを分析する実験をしたときには、男性は各部品に注目して、それらの個々の機能を推測して行って最終的にそれが何をするものであるかを特定しようとした。 結果、結構近いところまで当てる人が多かった。 女性は全体を見渡して、きっと昔の人はこれをこのように使ったというような柔軟な発想が多く出た。 しかし、オレンジの皮むきであるという答えにはあまり近く無い回答が多かった。 知らないものが実際に何であるかを特定するには、細かい部品に着目して調べないとわからない。 ただ、調べ方が違うというのが興味深かった。 女性その物体と世界との関わりに関して考え、男性は物体そのものを見続けた。

技術のとらえかた
女性的男性的
medium(媒体) product(製品)
tool(道具)weapon(武器)
communication(コミュニケーション)control(制御)
creation(創造)power(力)
expressive(表現に富む)instrumental(手段)
flexibility(柔軟性)speed(速度)
effectiveness(効果)efficiency(効率)
sharing(共有)autonomy(自律性)
integration(融合、調和)consuming(のめりこみ)
explore(探求)exploit(弱点をつく)
empowerment(権限拡大)transeendence(超越)

女性はテクノロジが今と同じことを多少便利にしてくれることを語る。 男性はテクノロジによって今とは全く違った世界を創造することを語る。

男性的な見方は技術そのものを見ようとする。 女性的な見方は技術の向こう側を見ようとする。

子供

8歳から大学ぐらいまで。 すばらしい機械を考えてくれと言って絵を描いてもらった。

男の子の場合、凄い乗り物を描いた子供が多かった。 中身を列挙してもらうとエンジンなどの機能やお菓子ケースなどが出てきた。

女の子の場合、小さな多機能デバイス。 例えば、雪が降ったらしゃべるになったり、落ち葉がいっぱいだと熊手になる。 男の子だったら熊手にならないで光線銃で落ち葉を焼き払う。 (熊手:rake、光線銃:ray gunsで音が似ている事から来るギャグ。多少ウケていた。) 勝手に作業をするデバイスではなく、作業を手助けするデバイス。

4、5年前に子供にインターネットの絵を描いてもらった。

男の子はウェブブラウザを描いた。

女の子はお互いを接続しあうネットワークを描いた。 例として出てきていた絵には、相互に線で接続されたコンピュータの横に人が描いてあった。 接続形態はスター型。

IT pipeline (IT業界への進路)

現状では、IT業界は男性的な価値観で構成されている。 現状では、IT業界に女性を呼ぶというのは男性的な発想に適応できる女性がIT業界に入る事を意味している。 これはこれで良い。 ただ、今足りていないのは、女性的考え方をする人達が入ってくるようにすること。 今のIT業界は女性的発想を必要としている。 IT業界には女性的発想の女性と男性の居場所がある事を、若い人達が理解していない。 例えば、Googleのような場所で働くには機械の中に手を突っ込むのが大好きである必要はない。 女性的文化がIT業界に根付かないといけない。 女性的文化でIT業界に存在することができることを若い人達が理解する必要がある。

子供に自分が好きな事がどのような意味を持つのかをどうやったら教えられるかを研究している。

技術をネットワーク、コード、データマネージメント、Webデザイン、サポートの5つのレイヤーに分けた。 ネットワークは人々をつなげる。コードを書く、コードを破る、秘密に関して。データマネジメントは物を発見する、物事を組み合わせる。 Webデザインで綺麗なものを作る。サポートは人を助ける。

それぞれのレイヤには用途と需要があることを理解させられる。

女性をITに誘いたければ、模範となる人を連れてくるのも良いが、それでは問題は解決しない。 根本的な心配を解決しないといけない。 技術が悪い方向に行ってしまうのではないかという心配。 プライベートと仕事を両立できないかもしれないという心配。 昔のアンケートで言われていた仕事で個人的なことを話せない心配。

男性が「世界最高のものを作るぞ!」と叫ぶのは良い。 ただ、女性が「世の中の変化とそれによる影響を考えたうえでどうすべきか調べましょう」という機会を作らないといけない。

さもなければ、「女性は何でもできる。出来ると知っている。でも、私はやりたくない」という感じになる。 機械が大好きなギーク女性でなければ、この業界には居られないというのを払拭しないといけない。

Q & A

37分前後。QAで中学生ぐらいでコンピュータ離れが始まる話が出ていましたが、プログラミングの授業を女性は受けたがらないという話が出ていました。 そこでは、女性がプログラミングの授業に興味を持てるようにするには、現状のように細かい基礎からプログラミングを学ぶのではなく、まずはそれをすることの意義を説明してから徐々に段階を追ってプログラミングの説明をしていくような授業が必要であると言っていました。

39分前後。 IT文化についての質問では、返答の途中で、今まで模範となる女性をインタビューすると男性的なキャリア説明方法をしていたという話をしていました。 女性でも男性的な考えを持っている人が現状のIT業界の模範になっているので結局女性を呼び込む事になっていないというのが問題だと言っているのだと思いました。

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