「徹底解説v6プラス」を書きました

2020/1/22-1

「徹底解説v6プラス」という本を書きました。 「v6プラス」は、NTTフレッツ網を利用するユーザが、IPv6とともに、IPv6 IPoEを経由してIPv4インターネットと の通信ができる、日本ネットワークイネイブラー株式会社(JPNE)のサービスです。 IPv6 IPoEを経由することで、IPv4 PPPoEを経由せずにIPv4インターネットとの通信を行うため、ユーザのパケットが通る経路が変わります。 この経路の違いが通信品質に大きな影響を与える場合もあります。

「v6プラス」は、特定の企業のサービスであるため、RFCなどの文書によってその内容が明示されているものではありません。 2018年に発行した「プロフェッショナルIPv6」では、AppendixとしてNTTフレッツ網におけるIPv6に関する話題を扱っていますが、各VNEが提供しているサービスに関しては言及していません。

私がこれまで執筆してきた技術書も含めて、TCP/IPに関連する技術を解説する多くの書籍は、主に標準化された技術などを中心に解説しています。 各種技術を組み合わせて実現されている、特定の企業の特定のサービスに関して、あまり掘り下げて解説されることはないのです。

しかし、ある限定された環境において、そこで発生する課題に向き合うために設計されたサービスは、その設計思想を知ることで得られる学びがあります。 本書は、TCP/IPの基礎が応用された結果を紹介するにとどまらず、TCP/IPの基礎を現実のサービスでどう応用してるのか、なぜそういう応用をするに至ったのか、現実のサービスから学ぶという方向性を目指しました。

企画の背景

本書はもともと、「v6プラス」の技術的側面を解説する書籍として、JPNE社のニーズを受けて企画がスタートしたものです。 当初は、「v6プラス」を解説した出版物を作りたいというご相談を私がうけました。 同サービスに関して、様々な誤解があり、それに対して技術的視点からひとつずつ誤解を解くような、情報がまとまった書籍が欲しいというお話でした。

どういった方法が良いのかを検討し、以下のような方針で進みました。

  • 小冊子ではなく、一般的な体裁の技術書にする
  • 情報を広く伝えるために電子版は無料配布
  • 紙版は通常の技術書として販売する
  • 制作費は、JPNE社にご支援いただく
  • 出版社は、プロフェッショナルIPv6と同じラムダノート社とする

このような方針で技術書を作ったのは、私にとって初めての挑戦でした。

本書が目指したもの

この企画段階で目指したのは、対象読者としてv6プラス導入を検討している方々、v6プラスの技術に興味がある方々、ISP関係者の方々を想定し、インターネットの仕組みからボトムアップにv6プラスの全体像を解説していくような内容でした。

しかし、文章を書き進めるにつれ、「何ができるのか?」「どうしてそうなっているのか?」「どうしてそのようなサービス設計になったのか?」という部分こそが、こうした対象読者の方々にとって大事なのではないかと考え始めました。 その結果、技術的な背景の説明に焦点を当てることこそが誤読による誤解を避ける手助けとなるはずであり、またすでに誤解してしまっている方々の誤解を解くきっかけとなるだろうという結論に至りました。

本書ではまず、v6プラスがどのようなサービスであり、何ができるのか、あるいは何ができないのかを説明しています。 そのうえで後半では、それらに対する「なぜ」の部分を技術的視点で読み解けるように、背景知識を説明していく構成としています。

v6プラスはフレッツ網という環境に特化したサービスです。 高度な技術的課題をユーザ向けのサービスとするために、基礎技術の積み重ねへと落とし込んで実現されています。 NTTフレッツ網におけるIPv6がそもそも複雑であるという話もあり、ネットワーク、インターネット、TCP/IPという視点で考えたとき、v6プラスは応用の応用ぐらいのレベル感の話題だといえます。したがって、その内容を読み解くためのハードルは決して低くはありません。

それでもサービスの使い方に留まらない書籍、サービスの設計思想が垣間見えるような書籍になることを目指しました。 特に、MAP-EやIPv4 NATに関連する解説は、プロフェッショナルIPv6よりもさらに品質が高い内容になっていると思います。 本書を執筆することで、プロフェッショナルIPv6に足りていない部分が多く発見され、githubにある最新版のプロフェッショナルIPv6原稿は、色々と改善されたという副産物もありました。

電子版は無料ダウンロード可能なので、ご興味があるかたは是非「徹底解説v6プラス」ご覧ください!

ダウンロードURL→https://www.jpne.co.jp/books/v6plus/

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