今年のInteropは凄く面白そう

2012/6/11-1

Interop Tokyo 2012は凄く面白そうです。 個人的には毎年Interopは新しい知識を得る場でもあり、楽しいは楽しいのですが、最近数年と比べると今年のInteropは事前のワクワク感が大きいです。

ここ数年はインターネットそのものが大きく変化しています。 インターネットそのものだけではなく、各国の対応などインターネットを取り巻く状況も大きく変わっています。 今は、2000年前後に起きた大きな変化以来の大変革の途上だと思えます。 Interopでの展示も、そういったインターネットそのものの変化の影響を反映しているのではないかという感想もあります。

データセンターが主役的扱いに

今年のInterop(というかShowNet)テーマは、従来のInteropと多少おもむきが違います。 その背景にあるのが、データセンターと仮想マシンの台頭です。

これまで、Interop Shownetと言えばネットワークそのものが中心であり、たとえば、超高速広帯域バックボーンや、広域ネットワーク、ローカルネットワーク、アクセスネットワークなどがメインフォーカスでした。

今年のInterop Shownetはネットワークそのものというよりも、データセンターへとフォーカスが移っています。 データセンターにフォーカスした省電力、データセンター内でのL2ネットワーク、広域分散したデータセンター間の連携などが今年のInteropで主なテーマとして扱われています。

これまでのInteropでも、サーバ仮想化や省電力は扱われてきました。 しかし、どちらかというと脇役的な扱いが多かった印象があります。 昨年は、データセンターへのフォーカスがそれまでのInteropより進んで、仮想東京と仮想大阪という分け方でデータセンターコーナーがありましたが、会場の一番はじっこでした。 ただ、昨年は震災直後ということもあり、そもそもInteropが開催可能であるかどうかも議論があったような状況だったことを考慮する必要もありそうです。

今年のInteropの注目点

個人的に、今年の注目は以下の内容です。

  • イーサネットファブリック
  • データセンター間連携
  • 省電力
  • SDN(Software Defined Network) / OpenFlow

ファブリック、データセンター間連携、省電力に関しては、ニーズと技術と製品がかなりそろいつつあり「多分、そういう方向性で世の中が動いて行くだろうなぁ」と思えます。

SDN(主にOpenFlow)に関しては、日本国内では話題先行であって現実と乖離している部分がありますが、Interopでは「現時点で現場のエンジニアが全力を振り絞って出来るのがココまで」というのが展示されるという意味で面白そうです。 SDNが「ちょっと遠い未来に使われるかも」で、他の3つが「もう動き始めてる流れだよね」という感じです。

なお、Interopというのは「未来を見せる場」であり、参考出品ものや販売前の試作機などが展示されるので、細かい所を見れば完成度が完璧じゃない部分というのも色々とあるのですが、それはそういう場であるという前提を持って見ることも大事なことの一つです。

イーサネットファブリック

今年のInterop Shownetで個人的に一番注目なのがイーサネットファブリックです。

イーサネットファブリックは、データセンター内などの大規模ネットワークに適した最新のイーサネット技術です。 イーサネットファブリック機器同士を任意のトポロジで構成可能で、従来のイーサネットでは出来なかったマルチパスによるロードバランス、障害時の早い切り替え、拡張イーサネット規格であるData Center Bridgingを利用したロスレスイーサネットなどを実現可能です。 迅速に増設も可能という特長もあります。 STP(Spanning Tree Protocol)で発生していたブロッキングポートが発生せず、資源の有効利用が可能である点も大きな特長です。

「初物かどうか?」という意味では、イーサネットファブリックはInteropで「初物」ではありません。 2010年中旬から後半に各社から製品が出始め、昨年のInterop Shownetでもイーサネットファブリックは展示されていました。 昨年から1年経過し、実際にファブリック製品が出荷されはじめて、「ああ、これは結構広く使われる技術なんだな」というのが明確になってきました。

しかし、実際のイーサネットファブリックの具体的な構成技術が固まったわけではなく、現在は群雄割拠の状態にあります。 たとえば、Brocade VCS(Virtual Cluster Switching) Fabric、Cisco FabricPath、Juniper QFabric、Avaya Virtual Enterprise Network Architectureがありますが、名称だけではなく実現手法もそれぞれ違います。

確実なニーズが存在する一方で、本格的な競争はこれからだと思えるイーサネットファブリックは非常に面白いと思います。

データセンター間連携

震災前から、日本においても地方データセンターが注目されつつありました。 同時に、クラウド化のトレンドによって仮想化されたサーバがシームレスに移動するというユースケースも多く語られてきました。

そういった背景から、物理的に離れた複数のデータセンター間でクラウドを実現するような連携が必要とされてきましたが、ようやくそれらを実現するソリューションが登場し始めたような状況です。 昨年のInterop Shownetでは、仮想東京と仮想大阪に分けた展示が行われていましたが、その間を広域イーサネットサービスのVPLS+PBB(Provider Backbone Bridge)で繋いでいました。 2つの仮想データセンター間を跨いだネットワーク上で行われた昨年のデモとしては、NECのUNIVERGE PFによるOpenFlowがあげられます。

今年は、昨年のようなL2上でL2を伸ばす技術ではなく、L3上にL2のパスを乗せるタイプのデータセンター間連携が展示される予定だそうです。 L3を利用してL2網を構築する手法の方が、様々な事業者が容易に採用可能です。 L3を利用してL2網を構築する技術としては、たとえば、CiscoのOTV(Overlay Transport Virtualization)が個人的に注目です。 OTVが発表されたのは2010年ですが、ようやく、その必要性が顕著化してきたということだと思います。

省電力

データセンターにおける省電力は利益に直結するため以前からずっと大きな話題でしたが、昨年の震災以降は政府や自治体から消費電力削減が要請されるようになったため、緊急の課題となりました。

そういった背景もあり、いかにして現状を正しく把握して消費電力を削減できる箇所を発見するかや、実際に電源を落とした後に速やかに復帰するかといった課題がこの1年で大きくフォーカスされています。

状況の把握、異常検知、効率化など様々な側面での提案が会場で展示されているものと思われます。

SDN (OpenFlow)

Interop Tokyo 2012 ShowNetでは、OpenFlow Showcaseというコーナーがあります。

現時点での最新技術を駆使してどこまでできるか?や、現時点で考えられるユースケースなどが展示される予定とのことでした。

実際にOpenFlowを推進している方々から「日本での話題の盛り上がり方は、ちょっと違和感がある。盛り上がってるのは実際には使わないような人達では?」という声が聞こえてくることが増えていますが、OpenFlow Showcaseでは「OpenFlowの現実」が見られるのだろうと思います。

ここで重要なのは、誰もOpenFlowそのものをdisってるわけではなく、純粋に「今できる範囲を明示している」という点です。 新たな発見も多そうな展示企画だと思います。

他、いろいろ

一昨年に初物として登場していた100GbEが今年も展示してあると思います。 去年は、100GbEのLAG(Link Aggregation)のデモもありました。 今年は昨年よりも40GbEが大量に出てそうです。

昨年、Interopで展示されていたPoE製品をブログで紹介しましたが、今年も面白いPoE製品の展示があるような気がします。

昨年はEVB(Edge Virtual Bridging)などのサーバ仮想化用技術が様々な出展者ブースで紹介されていましたが、今年もそういった系統の新製品が色々置いてそうです。

探せば色々ありそうですが、多分、全部を理解するのは無理だと思うので、思いついたところをまわろうと考えています。

最後に

ということで、今年のInterop Tokyoは面白そうだと思います。

くり返しますが、「ここ数年のInterop Tokyoはつまらなかった」とは言っていません。 そこのところを変に誤解して邪推しないように(笑)。 毎年面白いんですが、今年は例年よりも面白そうだと言っているだけです。

15年ぐらい前の状況を知っている人からすれば、恐ろしく規模が縮小していて、展示内容も理解するのが凄く難しくて大変だとは思いますが、私としては毎年のInteropは新技術情報を得る重要な場だったりします。 Interopに行っても、展示内容の意味がわからなくて数ヶ月後ぐらいに「あのときのあの展示は、そういうことだったのか!」と気がつくことも多かったりします。

おまけ:IPv6は?

IPv6ってInteropで10年以上前から扱われているテーマなんですよね。。。

World IPv6 Launch関連で面白い話が色々ありそうですし、各出展者ブースや講演等ではIPv6に関して楽しい話が色々あると思いますが、Interop全体の大きなテーマとしてのIPv6という視点で見た時に、私としてはあまり際立ってワクワクするものはない気がしています。

とはいえ、IPv6に関して特別ワクワク感があるわけではないというのは、Interop ShowNetの話であって、出展社ブースの話ではないです。 World IPv6 Launch参加企業の展示ブースとか、日本国内でIPv6を中心に取り組んだ事業社のブースとかは面白いと思いますし、見に行く予定です。

関連

最近のエントリ

過去記事

過去記事一覧

IPv6基礎検定

YouTubeチャンネルやってます!