IIJ 月額945円、SIMのみの契約可能なLTE接続サービスを発表(2)

2012/2/15-1

今回のIIJmio 高速モバイル/Dサービスは、docomoとのL2接続モデルでのMVNOです。 L2接続モデルとは、MVNOであるIIJが交換機をオペレーションし、MNOであるdocomoのネットワークに直接接続するモデルです。 IIJは、接続しているネットワークの帯域に応じてdocomoに網使用料を支払います。

docomoとの接続のための伝送費用や、電気代を含むその他経費はかかりますが、一番大きな要素がMNOへの網使用料なので、ここではそこを中心に考えます。

では、その網使用料がどれぐらいの価格帯なのかというと10Mbpsあたり7,458,418円/月です。 ザックリと考えると10Mbpsあたり約746万円/月ぐらいです(インターネットプロバイダによるトランジット料金と比べると桁が3つ近く違いますw)。

なお、IIJmio高速モバイル/Dサービス実現のためのdocomoとIIJ接続は1箇所のようです。 もちろん冗長化されています。 有線系ISPが複数のpeerやtransitを併用して複数箇所で接続しているのと比べると、L2接続モデルでのMVNOはPOI(Point of Interface)が1箇所なのでイメージしやすいです。

網接続料情報は、docomoのWebサイトで公開されている公開情報です。

音声接続料とパケット接続料は別料金なのですが、IIJmio高速モバイル/Dサービスはパケット接続料のみとなります。

この「10Mbpsあたり」の意味ですが、おおざっぱに説明すると、事前に「××から△△までの期間は○○Mbpsで接続させて下さい」とMVNOであるIIJがMNOであるdocomoに言います。 網使用料は、レイヤ2接続で1ヶ月10Mbpsあたり746万円なので、100Mbpsで接続していれば7460万円です。 1Gbpsで接続していれば7億4600万円です。

ここで重要なのは、docomoとIIJ間での契約は接続回線の帯域であるという点と、その帯域を必要に応じて柔軟に変更できるわけではない、という点です。 MVNO側は、どれだけの帯域が必要になるのかを事前に予測して運用しなければなりません。 その契約帯域内で何人のユーザに対してサービスを提供するかという点は契約内容に含まれていません。

このような条件があるので、MVNO側としては、できるだけ「回線の有効利用」をしなければなりません。 できるだけ100%に近い利用率となっている状態でありつつも、輻輳が激しく起きている状態ではないという運用である必要があります。 同時に、コスト負担と利用可能機能を明確にすることで、各ユーザの公平性を確保しようという思想もありそうです。

そう考えると、NECビッグローブの時間帯制約は、「既にMVNO契約がdocomoとある状態で低価格メニューで指定している時間帯の利用率が高くないので回線の利用効率を上昇させるため」という設計思想があるのではないかと推測できます。

945円の根拠を推測してみる

次は、945円などの価格に関してどのような試算が行われたのかを勝手に推測します。 以下、私の勝手な推測ですし、実際はもっと時間をかけて綿密な試算が行われているはずなので、何となくの雰囲気だけ感じるぐらいのニュアンスで読んで下さい。

IIJmio高速モバイル/Dサービスの設計思想は、各ユーザを128kbpsに制限することでより多くのユーザが同時に使えるようにしようというものだと推測しています。 クーポンという概念は、最近話題の経費負担の公平性を意識してそうです(RSVP/IntServ/DiffServとかが話題になっていた1990年代頃の時点で既に公平性確保の手段としてのクーポンやトークンに関する議論はありました)。

実際の内訳は知りませんが、たとえば、税抜き900円のうちの100円を同社利益として、100円を同社運用コスト、700円をdocomo網使用料にまわすという考え方で7,458,418円を700円で割ると、IIJとdocomo間の相互接続10Mbpsあたり1万人のユーザで使うということになります(「10Mbpsあたり」なので実際には、このn倍だろうと思いますが、IIJとdocomo間の接続帯域は非公開となっています)。 実際は、525円の100MBクーポンや2940円の1GBプランがあるので、そこまでは極端にはならないとは思いますが、10Mbpsあたり1000人以下ということはなさそうだと勝手に推測しています。

このような内訳は、通常の有線インターネット接続サービスとして考えるとあり得ないように思えるかも知れませんが、そもそもサービスが「ミニマムスタート128プランは128kbpsでのモバイル接続」というところから、データ通信を常にしたいというユーザではなく、使うときにちょっとだけ接続してちょっとだけ通信を行うというような用途のユーザにターゲットを絞っているものと思われます。 そのようなターゲットを絞ることで、実際は「使ってない期間」が長いユーザを多く確保しようとしているのかも知れません(料金設定的にも)。

たとえば、私はモバイル通信においては、そのようなユーザに該当します。 現時点で、モバイル通信としてFOMA回線を契約していますが、それを使うのは、電車での移動中やどこかの会議に行った時や旅行中ぐらいなので、実は接続時間は短いです。

実際はここで紹介している数値ほど単純な話ではなく、128kbpsプランと1GBプランの割合を推測しつつ、税抜き500円の追加クーポンをどれだけのユーザが利用するかを推測したうえで算盤をはじいているはずです。 ISPを運用する経験を元に、時間帯に応じたトラフィック変化なども考慮した予測モデルが作られた上で価格等が決定されたりもしてるでしょう。 こうした要素を組み合わせつつ、その他経費を含めて利益が出ると判断したうえで、最低価格945円は決定されているものと思われます。

インターネットが発明される前提となったパケット交換技術は、通信の多重化によって回線の利用効率を上昇させるためのものでしたが、MVNOのL2接続モデルでのビジネスは、その「利用効率」を最大化しつつ輻輳を最小化するためにサービス内容を調節することで暗に利用者ターゲット設定を行っているというのが面白いです。

通信制限の方式

さて、ここで気になるのが通信制限の方式ですが、128kbpsの通信制限を行っているのはIIJ網内であり、docomoの携帯網での設定ではありません。

128kbpsにシェイピングする方式を質問してみたのですが、基本的に機密事項であるとしつつも、「ある程度のバースト性は許容していくつもりです」とのことでした。 バースト性が許容されるということは、短時間内で完了する通信をたまにするぐらいならば128kbps以上の速度が出る事を意味しているので、よくあるWeb版の速度テストだと128kbps以上の速度が瞬間的に出そうです。

ただ、ある程度長い時間でトラフィックを流すと奇麗に128kbpsにシェイビングされるのだろうと思います。

あと、通信制限とは多少異なりますが、24時間連続接続していると一度切断される仕様になっています。

なお、IIJが提供するサービスへのアクセスでは128kbpsの制限が解除されているようです。 たとえば、IIJによるメールサーバやDNSキャッシュサーバへのアクセスは、128kbpsシェイピング対象外とのとことでした。

網構成

次に気になるのが、「では実際にMVNOはどうやってMNOと接続しているか?」です。

(続く:次へ)

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