オープンとクローズ

2008/1/11

オープンとクローズの使い分けや、その割合というのは人によって違います。 どうあるべきかという思想も全く違います。 しかし、この相反する2つの情報管理方法の使い分け方で色々な結果がかなり変わってくると思います。

品質に対するイメージを上昇させるためにcloseに

製品やサービスを作るときには、できるだけ完成度を上昇させてからオープンにした方が品質に対するイメージは上昇します。 多くの工業製品は、製品の完成が近づいてきて初めてプレスリリースをします。

WebサイトやWebサービスなども、完成度を高めてから最初のリリースをした方が注目度は上昇します。

一方、「作るぜ!」と宣言して創生期から全てを公開するという手法もあります。 この手法は、コミュニティを形成しながら創作も行えることと、多数の目が入る事によって最終的な品質は高くなるという利点があると思います。

all openという選択肢

全てをオープンにしよう(すべきだ)という思想もあります。

多くのオープンソースソフトは、開発思想を構築するための議論を含めて全ての情報をオープンにしている場合があります。 オープンでないのはcommit権だけというプロジェクトも結構あります。

wikipediaは誰でも編集できます(ただし、一部例外項目を除く)。 編集履歴も公開されています。 情報の再利用も公開されています。

インターネットの基本プロトコルも公開されています。 RFCを読む事に慣れてしまった人は、プロトコルや仕様がオープンであることに疑問を持たない場合も多いですが、完全オープンな仕様は実は凄い事だと思います。 例えば、非常に慣れ親しんでいるファイルフォーマットなどであっても、詳細な正式仕様書を手に入れるには、ホニャララコンソーシアムにお金を払って加入したり、分厚い本(というより複数の分厚いバインダー???)を代表企業から購入したりしなければならないということも多いです。

all openな思想の活動によって多くの人が利益を得ています。 「使えて当たり前」ではなく、それをall openにしてくれた人に対する感謝の気持ちを忘れないように努力したいと思います。 (ついつい忘れそうになるときがあって「いけないいけない」と思う事があります。)

default open、default close

情報の公開基準に関して何も言わなかった場合に、defaultがopenなのかcloseなのかは人によって違います。 これが非常に危険になる場合もあります。

伝える側がdefault close思想な人が、default openな人と飲み会で話をしたとします。 次の日に、その事がdefault openな人のブログに書いてあったとき、その二人の間に衝突が発生するかも知れません。

一言に「情報」といっても、幅は非常に広いです。 例えば、「ある人がある会議に参加した事」というのも情報に入ります。 「この前、知人の家でパーティがあったんだけど行ったら○○がいた」という事も「情報」に入ります。 実は「法事だから」と言って他のパーティの誘いを断っていたかも知れません。

もし「いた」と言われた方がdefault close派で、かつ、そこにいた事を公にして欲しくないという思想を持っていたら、「いた」とブログで書いた人は批判されるかも知れません。 批判されないまでも、「彼には気をつけよう」と内心思われてしまうかも知れません。

defualt openであるかcloseであるかは、文化であるような気もするので、自分はどちらの文化に属しているというのを明確に伝えるべき場合もあります。 特に、相手を良く知らない場合には最初に伝えておくと後々の衝突を避けられるかも知れません。

組織が大きくなるとclose度合いが増加?

ブログなどを読んでいると、大きな組織に属している個人よりもベンチャー企業などに属している人の方がオープン度合いが高い気がします。 また、大きな組織ほど社外秘に関して厳しいようなイメージがあります。

これは恐らく、組織が大きくなった方が守らなければならないものが増えるからであると思います。 情報などをオープンにすると恩恵がありますが、マイナス面もあります。 組織が大きくなるにつれて、オープンにすることによる恩恵よりもマイナス面の方が勝っていくのであると思います。

社員が自由にブログを書くことは、内部の情報が漏れる確率を上昇させます。 多くの社員が注意深く情報を漏らさないように書いたとしても、数人が不注意な事を書いてしまうということもあり得ます。 組織のメンバーが少ないうちは、書いても良い内容と悪い内容に関するコンセンサスが確立させやすいですが、千単位や万単位の人数になってしまうと一人も漏らさずに統制を取ることがほぼ不可能になってしまいます。 結果としてクローズ度合いを上昇させて情報漏えいを防止するしかないという現実もあるのかも知れません。

組織が小さいうちはブログを書いたりしながら情報をオープンにすることの恩恵の方がマイナス面よりも大きくなる気がします。 ベンチャー企業などは情報をオープンにする恩恵を最大限得られる形態である気がします。 会社によっては、社員にブログ執筆を強く推奨しています。

業界を知りすぎるとclose度合いが増えていく?

特定の業界を知りすぎてしまうと、close度合いが増えていくという現象もあるのかも知れません。 例えば「これを書くとこの人に迷惑がかかるなぁ」という感じで相手の顔が浮かんでしまうかも知れません。 問題の根幹や本質を知ってしまっていると「自分がやってもそうなってしまうなぁ」という思想になってしまって批判的な事は書けない(言えない)という事も起きるかも知れません。

さらに、色々と知りすぎてしまうと「常識」の尺度が一般とずれてしまうというのもあるかも知れません。 「これぐらいは皆知っているだろう」と思うレベルが勝手に上昇してしまい、世間とずれてしまうかも知れません。

下手に知っていると「こんなレベルの知識では恥ずかしくて書けない」という感情が発生する事もあり得ます。 全く知らない分野のことは平気で低レベルなことが書けても、多少でも知識がある分野に関しては恥ずかしさが発生するのは不思議だと思うことがあります。

プロである記者などよりも素人が書いたブログなどの方が鋭い指摘ができる場合があるというのは、ここらへんが関連しているかも知れないと思う事があります。

最後に

以上、オープンとクローズに関して思いつく事を書いてみました。 クローズからオープンへと移行させるタイミングで、結果が大きく変化する事が多いと思います。

オープンとクローズをどう使い分けるかは各自の戦略なので、メリット/デメリットを考慮しつつ割合を調整していくのが良いと思います。 もちろん、オープンに100%割り振ったり、クローズに100%割り振るという選択肢もアリだとは思います。

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