「コンピュータアニメーション」が意味するもの

2007/11/12

What is "Computer Animation" ? - Examining Technological Advancements and Cultural Aesthetics of Japanese Animation, Lien Fan Shen, ACM SIGGRAPH 2007 educators program」という論文を読みました。

この論文は、テクノロジーはコンテンツやアイディアを転送するための単なるツールではなく、文化を反映しながら利用されていくものであることを説いています。 この論文は「コンピュータアニメーション」と呼ばれるものを指す対象がアメリカと日本で異なっている事を解説しています。

考察の中でFinal Fantasy:The Spirits Within (2001) と ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン(2006)を比較しているのが面白かったです。

以下、論文の要約です。 訳などに間違いが含まれる可能性があるので、原文もご覧下さい。

アメリカにおけるコンピュータアニメーション

ハリウッドではコンピュータを利用した特殊効果が必要不可欠なものになりつつあります。 ハリウッドで特殊効果を提供しているPixar、DreamWorks、Blue Skyなどのスタジオは「コンピュータアニメーションスタジオ」と呼ばれています。 アメリカでは技術的に可能になった「新しい見かた」全般が「コンピュータアニメーション」という単語に含まれます。

この論文では、アメリカにおける「コンピュータアニメーション」とは何であるかに関して述べた談話を3つ紹介しています。

  • 現実世界の完全な写像というイデオロギーである
  • 行き詰まりとそれを技術的に打破する発展の神話的パラダイムである
  • 常にバージョンアップし続けなければならない業界

アメリカにおける「コンピュータアニメーション」は、PixarのToy Storyに代表されるように、ハイパーリアリズムを追求すると同時にその中に空想を織り交ぜるようなものが主流であるようです。 そのハイパーリアリズムを実現するために「コンピュータアニメーション」は、時代と共に進化し出来る事の制限も変わっていきますが、常に出来る事を増やしていきながら新しいバージョンを慢性的に発表し続けないと立ち行かない業界構造になっているようです。

日本におけるコンピュータアニメーション

日本における「コンピュータアニメーション」というのは、ハイパーリアリズムを追求するようなものではなく、2次元の手書き風画像を作る事を効率化するためのツールという捕らえられ方が主流であるとこの論文では説いています。

まず、東浩紀氏による「スーパーフラットな日本文化」という談話が紹介されています。 「スーパーフラット」の定義は「現実世界が2次元に変換されて表現されることを受け入れる感覚」だそうです。 東浩紀氏によると、現代日本における、慣習、アート、文化の多くが2次元で構成されているそうです。

次に、日本文化における「コンピュータアニメーション」を考察するために、Final Fantasy VII : Advent Children (2005)を紹介しています。 スクエア(現在はSquare-Enix)が1997年に発表した3Dゲームであるファイナルファンタジー7はゲーム史に残る成功を収めました。 その後、The Spirits Within (2001)とAdvent Children (2005) という二つの関連映画を発表しました。

The Spirit Withinはハイパーリアリズムを求めた作品であると言われています。 しかし、その「リアル」と呼ばれるものは何処にも存在しないものであり、現実の法則と空想の法則のどちらをベースとして想像したら良いか観客はわからなくなってしまう作品であると批評されたそうです。

その後発表されたAdvent Childrenは、リアルさを追及するわけではなくストーリー性などを重視した作りになったそうです。 ストーリーはベースとなるファイナルファンタジー7の後に続くストーリーにしたそうです。 それにより、視聴者はゲームであるファイナルファンタジー7である方を指標として、それをベースに映像全体を見ることができるようになったそうです。 この場合、「リアル」であるのは現実の物理法則ではなく、ストーリーのベースとなるゲームが「リアル」の対象になります。 このように、「リアル」とする対象を現実ではないところに持っていくのが日本文化の持つスーパーフラット性を示していると論文に記述されています。

参考文献

この論文の参考文献も結構面白かったです。 ACMの論文っぽくない参考文献が並んでいます。 例えば、もののけ姫、ハウルの動く城、Kakurenbo: Hide & Seek、Final Fantasyなどが挙げられています。

その他の参考文献でオンラインで読めるものとしては、以下のものが面白かったです。

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