ネット書き込み免許

   このエントリをはてなブックマークに登録    2014/7/28-1

最近、「ネットの書き込みを免許性にすべきだ」という意見を耳にすることが増えてきました。海外ではなく、日本国内での話です。

昔からそういうことを言う人はいましたが、かつてそういう意見を言う人々は、あまりネットを使わずに単に「怖い」という先入観がある人々だったという印象を持っています。しかし、最近は、ネットを全く知らないような人々ではなく、昔からインターネットに関わっていたような技術者がそういったこと感想を述べることがあります。

1990年代にインターネットが普及し始めた頃は「誰もが放送局」といった表現が各所で使われていました。とはいえ、当時はまだ情報発信を行うにはコンピュータ技術をある程度知る必要があったため、実際にはそれなりに敷居が高かったとも言えます。

その後、実際に「誰もが放送局」に近い状態になったのは2000年代に入ってかも知れません。ブログやソーシャルメディアが爆発的な勢いで成長し、情報発信に対する敷居が下がったためです。スマートフォンも情報発信の敷居を下げる役割を果たしたと思われます。2009年に発生したUSエアウェイズ1549便不時着水事故は、Twitterなどのソーシャルメディアで状況が伝えられ、当時はネットの未来を象徴する事件のようにも報道されていました。2010年から中東諸国で起きた「アラブの春」も、それが発生していた当初は「インターネットによる革命だ!」とソーシャルメディアを肯定的にとらえる材料とされていました。

2009年や2010年頃は、先進的なネットユーザの非常に多くが「ネットの素晴らしさ」を語り続けていました。しかし、気がついてみると当時先進的だったネットユーザほど、今はネットに対して否定的な意見も同時に持つようになっているというのが私の感想です。昔からネットをやり続けている人ほど「悪い側面」も熟知しているのかも知れません。そういった否定的な意見を反映するように、Twitterが「バカ発見器」と呼ばれたり、Twitter上で犯罪告白をするユーザを「バカッター」と呼ぶような状況になってしまっています。

話を「ネット書き込み免許」に戻すと、いまは様々な国々が「インターネットをどのように制御するのか」を模索しています。皮肉にも、その流れを作ったのは「アラブの春」であったと言われています。「アラブの春」を見て自国体制に対して危機感を抱いた国家がインターネットを何らかの形で規制したいと思う材料になってしまったのです。結果として、国連で「インターネットを規制したい」と思う国家が多数派になりました。国連で行われる投票は一国一票なので、「アラブの春」以前であれば投票したとしてもそれが多数意見にならなかった、「インターネットを規制しよう」といった内容も今は以前よりも可決する可能性が高くなったと言われています。

日本、米国、欧州諸国は基本的にインターネットに対する規制は反対であるという意見ですが、それぞれの国内では事件や事例の発生とともに、「それをやったら逮捕される」といったラインができつつあります。さらに、ネット上で何かを行った人物や組織を特定したり、追跡する手法も急速に構築されつつあります。

そういった追跡手法の確立は、技術の進歩と無縁ではありません。ソーシャルメディアが登場する前ぐらいまでの時期までは、インターネットでの技術革新は通信の高速化であったり広帯域化が注目されていましたが、最近は「何かを管理する技術」がより注目されがちです。技術の発展は、様々なものを便利にしますが、「便利になる」のはユーザだけとは限りません。追跡や規制などを行いたいと思う組織等にとっても、便利な技術が産み出されているのです。自国民に対して積極的に表現規制を行っている国々で開発された新技術や新商品が海を越えてやってくるといったこともあります。

ネットへの書き込みという視点で見たときの「インターネットの自由」と言われていたものの多くは、当時のインターネットを構成する技術的な限界が産み出していたのではないかと、私は考えることがあります。20年前と比べると、いまは様々な制限を加えることもやりやすくなっているのです。

このように、(1)ネット上で悪目立ちしている事例が増えた、(2)規制したいと思う人々が増えた、(3)規制するための技術が成熟しつつある、といった要素が絡み合い、「インターネットへの書き込みを何らかの形で規制すべきだ」という意見が今後は増えるかも知れません。さらに極端な人は「インターネットの書き込みは免許制にすべきだ」と言いそうです。恐らく、誰かが何かの事件を起こすことで徐々にそういった意見が発信される頻度が増えて行くのだろうと予想しています。海外の事例を例に「○○という国では、××という取り組みをしているので我が国も参考にしよう」という話も増えるかも知れません。

インターネットを取り巻く状況や、インターネットが社会に与える影響は、10年前と今では全く異なります。何らかの事件が発生することによって世論が一気に動くことも多いので、今この時点で未来を正確に予測するのは難しいとも思いますが、今から10年後のインターネットはどうなっているのだろうかと考えることがある今日この頃です。

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