IETF homenet co-chair, Mark Townsley氏インタビュー

   このエントリをはてなブックマークに登録    2013/5/13-1

IETF homenetワーキンググループ co-chairのMark Townsley氏(Cisco)に対するインタビューの機会を頂けました(この記事は英語版の日本語訳です)。

homenetワーキンググループは、次世代家庭内ネットワークにおけるIPv6環境を実現する技術を議論し、標準化を行う場です。 ワーキンググループの議題として、複数のルータやサブネットを用いてIPv6によるマルチホーム環境をどのように構築すべきかに関するドキュメントの作成も含まれています。

IPv6におけるマルチホーム問題は日本においてホットトピックと言えるため、homenetでの議論は非常に興味深いものであると思います。

-- (インタビュー開始。Mark Townsley氏自己紹介から)

こんにちは。私の名前はMark Townsleyです。 Ciscoに15年間勤務していますが、その前も子供のとき以来通信に関連することに取り組み続けています。

Ciscoで最初に手がけたプロトコルはL2TPでした。 私はRFC2661の著者の一人です。 最初のプロジェクトではソフトウェアエンジニアだったので、コードも大量に書きました。 当時、あの規模でのバーチャルアクセスインターフェースを扱うのはL2TPが初でした。 そのため、当時のルータ内のIDB(Interface Descriptor Block)がスケールしないという問題があったため、L2TPプロトコルが十分スケールするようにルータを改変する必要がありました。 それが、私がCiscoでやった最初の大きな仕事でした。

その後、IETFのL2TPワーキンググループchairになり、さらにその後インターネットエリアのディレクターになりました。 インターネットエリアのディレクターだったのは2005年から2009年の二期だったと思います。 その間、softwireワーキンググループやその他いくつかのワーキンググループを作りました。

その後、みんなの意識がIPv4アドレス枯渇に向かっていたこともあり、私もそこに着目しました。 それ以来、この業界全体を見渡しながら、IPv6普及およびサービスプロバイダでのリアルなビジネスケースを実現し、業界全体をIPv6へと向かわせようと努力し続けています。 それが2009-2010、そしてここ3-4年で行って来たことです。

これが私です :)

Q: homenetワーキンググループおよびそこでの最近の動向について教えて下さい。

homenetワーキンググループが設立されたのは2011年です。 私一人で設立したわけではありませんが、他のワーキンググループで活動する人々を繋いだりはしました。

様々な資料を見ると、ネイティブIPv6、6rdによるIPv6、L2TPやPPPによるIPv6などが一般家庭にも普及しつつあるのがわかります。 しかし、IPv6が一般家庭の入り口まで到達したとしても、これまでは悪名高い「NAT」がはびこってきたため、その後どうして良いのかがわかりません。 IPv4の世界では、サービスプロバイダは各家庭を「1台のPC」であるとみなしてサービスを提供していました。 私達は、NAT機器を開発して、ISPから見える「1台のPC」の部分を誤摩化したうえで裏側にネットワークを作れるようにしました。 私の個人的な感想としては、IPv6で全く同じことをするのは恥だと考えています。

いま私達が作らなければならないのは、「本当の」end-to-endネットワークです。 インターネットとは違う何かを端っこにくっつけるのではなく、インターネットの一部にしたいのです。

それがホームネットワークを実現するうえでの主なミッションです。 homenetワーキンググループはインターネットエリアに属しているので、扱うのはレイヤー3およびその周辺になります。 ルーティング、サービスディスカバリなどが議論されています。 主なポイントは、「IPv6が家庭の入り口まで来るけど、家の中はどうするの?」です。

そして、そのプロセスを通じてホームネットワークを良くしたいと考えています。 いまのホームネットワークは砂上の楼閣です。 正常に動くときもあれば、駄目なときもあります。 家の中にあるデバイスがインターネットと通信するのは特に問題がないのですが、インターネットの側から家の中にあるデバイスとの通信を行おうとすると、上手くいくときもあればそうでない場合もあります。 それが全ての原因というわけではありませんが、多くの場合、問題を発生させてるのはIPv4のNATです。

ということで、我々は家庭内にあるあらゆるものをターゲットとしつつ、任意の数のルータやデバイスを任意の形態で接続できるようにしたいと考えています。

この点に関しては以前から議論しているのですが、いまのゴールとしている任意の形態での接続に関して、敷居が高過ぎると考えている人々もいます。 反対している人々が求めているのは、単一のISPで、数個のルータで木構造のネットワークというシンプルなトポロジです。

私は、ユーザに対して特定の方法に限定した機器の繋ぎ込みを要求するのは、求め過ぎだと考えています。 そして、その考え方はワーキンググループにおけるコンセンサスだと思います。

特定の障害事例を想定できるのであれば大丈夫だと思いますが、全ての障害事例を考え始めると、最終的には非常に複雑なものが出来上がってしまいます。 それならば、最初から任意の方法で繋ぎ込みができるようにしてしまった方が楽です。

(続く:次へ)

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