有志の情報発信者は弱い件について

   このエントリをはてなブックマークに登録    2013/1/7-2

ネットにおける情報発信という議論を見ていると、たまに「個人が趣味の延長で記事書くので十分だ」という主張に出会うことがあります。 そういった主張は、たとえば、「マスゴミは潰れろ」の延長線上だったり、「ネット広告で稼ぐのは無理だからあきらめろ」だったりが多い印象があります。

そういった主張を見る度に、「いや、それは危ないよ」と思うわけです。 個人だからこそ自由に振る舞えるメリットもあれば、個人だからこそ危ういデメリットもあるわけです。

個人だと誰も守ってくれない

個人としてネット上で活動しつつ、色々と取材に行ったり、各種調査をしたりという日々を5年ぐらい続けた感想としては、「個人は弱い」という当たり前な話が身にしみています。 個人は個人でしかないので、基本的に誰も守ってくれません(組織であれば必ず守ってくれるというわけでもありませんが)。

ネット上であれ、紙媒体であれ、不特定多数に向けて情報発信をしていると、何らかの理由によっていきなり訴えられる可能性も覚悟はしています。 しかし、実際に訴えられたら、恐らく執筆活動は著しく停滞するだろうと思われます。

脅しに弱い場合もある

訴えられるだけではなく、何らかの記事に関連して脅迫される可能性もあります。 書いた記事の内容への抗議という意味での脅迫もあれば、特定の内容を書けという脅迫もあり得ます。

「匿名で書けばいいよね?」という意見もあるかも知れませんが、実際は匿名で書いている方が名前出しで書いているよりも脆弱な面もあります。 匿名で書いている相手は、実名を暴かれることを恐れることが多く、実生活宛に挨拶文を送るだけで強いプレッシャーになり得ます。 自分が匿名で書いているブログに関して、身辺に調査の手が伸びたことを察知してブログをやめてしまったような事例を耳にしたこともあります。

買収に弱い場合もある

脅迫ではなく、買収という方向性も考えられます。 たとえばコンサルティング料を受け取ったり、接待等によって徐々に、その個人が特定の組織等に対するヨイショ記事が増えるというのもありそうです。

まあ、ここら辺の話は、ネット上だけの問題ではありませんが。 現時点でも、特定の学者や専門家に対して報酬をちらつかせながら自分達に都合が良い報告書等に名前を記載するように要求するような話は山のように耳にするので。

影響力が増すと働きかけも増す

で、こういうことは、特定の個人が持つ影響力が巨大になるにつれエスカレートするものだと思います。 要は、そこに掲載される内容もしくは生成されるコンテンツが大きな影響を与える場合、そこにかかる外部からの圧力も増すのだろうという感じです。

ということで、私の最近の感想としては、大手メディアは存続する一方で、それを補助する形でネット上での情報発信も発展するのが無難かなぁと考えています。 ある日突然バタバタと大手メディアが倒れて、ネット上の有志だけが情報発信を担う世界において、情報発信の中心にいる人々が各個撃破されるとどうなっちゃうの?的な感じです。

ある程度巨大なものを扱うには、ある程度の規模がある組織が必要だよねという、まあ、わりと今更な話でもありますが、そういう感じで。

そもそも現状が例外的な状況かも。。。

「ネットだけで十分」という意見が意識しているのは、たとえば、ハドソン川の飛行機墜落事故の速報がTwitterだったとか、ソーシャルメディア上での無数の個人による発信を追えば色々と発見できるという話だったりします。

ただ、それって、実は一時的な話かも知れないと最近は思います。

Twitterが「馬鹿発見器」と一部界隈で呼ばれるようになって数年が経過していますが、ちょっとした発言や写真をネット上に掲載してしまったがために、人生に大きな影響を受けてしまう人がたまに登場します。 そういった事例が積み重なって行くと、徐々に人々は気軽に情報をネット上に出さなくなって行きます。

無数の人々がセンサーのようになってニュースの種となったのは、Twitterブームに寄る所もあったと個人的には考えていて、Twitterブームが下火になって、TwitterよりもクローズドなSNSが好まれるようになると、ニュースの種となる情報発見の難易度は多少上昇するのかなという感じです(チュニジアが発端となった「アラブの春」はFacebookに掲載された情報がアルジャジーラ記者に届いたというような背景があったと推測していますが)。

最近のインターネット関連ニュースを見ていると、ネットに対する規制や締め付けが、世界的にジワジワと増加しているように見えるので、不特定多数の個人が匿名に近い形で気軽に情報をネット上に公開できるトレンドがいつまで続けられるのかという論点もありそうな気がしています。

無数の個人による趣味の情報発信に多くの人々が依存した状態になった後で、個人が情報を発信しにくくなるような法改正等が行われたら割と怖いなぁと思う今日この頃です。

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