全文転載におけるネットメディアとブロガーの関係

2013/1/10-1

昨年末から、一部界隈でブログ記事の全文転載に関して盛り上がっています。

検索エンジンが対策を行えば検索経由トラフィック減少の問題は減るのでしょうが、ブロガー側が無料ライターとして扱われてると感じてしまっている場合があるという背景もありそうです。 要は、メリットを実感できない、という話だろうと。

なので、たとえば、全文転載毎にブロガーサイトへの関連記事リンクを表示して読者を誘導すれば、不満は解決する可能性はあります。 それが進化していくと「全文記事転載1回につき1万PVを保証します」とか、何かトラフィックシェア的な生々しい構造が出来上がりそうですし、そもそもPVを外に出さないために全文転載しているのだろうと思うとそういった選択肢は無いかも知れませんが。

PV以外では、そこに全文転載されることで知名度が上昇して講演依頼等が増えたとか、そういう「実感」があればよさそうですが、それが感じられないという意見がポツポツと出始めたのでしょう。 もしかしたら、不満を持つノイジーマイノリティが文句を言っているだけかも知れませんが、いまのところ、全文転載でウハウハになりました!というカウンター意見は発見できていません。

プラットフォーム側の責任

この問題を考えて行くと、ブロガー側の不満という問題とともに、プラットフォームの責任というかリスクという話も関連しているような気がしています。 問題が発生したときに、ネットメディアが「転載記事の責任はブロガー側にあります」と言い訳している場面に遭遇することがありますが、それって本当にそれで大丈夫なのだろうかという感じです。

ブログサービスを提供しているのであれば、プロバイダ責任制限法の範囲内の対応で大丈夫と解釈できるのでしょうが、ネットメディアとしてブログ転載も同様の対応で大丈夫かというと、どうなんだろうと疑問に思うことがあります。

2011年に 「転載しているだけです」という言い訳に関して で紹介した、ヤフーが産経新聞のニュースを転載したことによって名誉毀損の損害賠償命令をいいわたされた事例を見ると、たとえばブログ記事の全文転載を行った媒体側が名誉毀損に問われるようなこともあり得そうな気がしています。

今のところ、ブログ記事の全文転載によってプラットフォーム側が同様の判決を言い渡された事例を聞いた事がないのですが、そういった事例が登場したら、自動的に近い全文転載の仕組みは減る可能性があると思うことがあります(2ちゃんまとめも同様ですが)。

「ネットメディアが悪い」わけではない

とはいえ、今回のコンテキストでは、ネットメディアが悪というわけではないと私は考えています。

全文転載の許可を得るためにコンタクトをして、許可を得られた記事だけを掲載するネットメディアと、引用の要件を満たさない状態で勝手に全文転載しておいて文句を言われると逆切れするTumblrユーザを比べると、どう考えてもネットメディア側の方が上品です。

さらに、「プロブロガー」というような人々が徐々に増えてきて、ブロガー側も「ひろがれば何でも良いや」と言わずに「うちも商売なんで」というスタンスになっている人が増えているという、ブロガー側の事情も見え隠れしてる気もしてます。

ということで、メリット/デメリットのバランス問題という感想を持っています。

「登竜門」状態?

メリット/デメリットのバランス問題であると考えたとき、全文転載をネットメディアやプラットフォームに対して許可することでメリットを得られる人は、それによってリーチが大きく伸びることが期待できる人であると推測できます。

そうなると、自分が知名度を得るために全文転載を活用し、十分な知名度を得られたら今度はそれを守るために全文転載プラットフォームから抜けるという流れもあるかも知れません。

ということは、ある程度の品質とビジネスを確立した人から抜けて行くことになりかねません。 ネットメディアやプラットフォームは、どちらかというと登竜門のようなものになり、そこに掲載される記事の品質は平均的に低いままで維持される可能性もありそうです。

とはいえ、有償で記事を書ける媒体が減り続けていて、かつ、記事1本で得られる報酬も下がっているので、出口は凄い勢いで狭まっているかも知れません。

そもそも論で言うと、ブログって当初は不特定多数への情報発信のためのメディアなのではなく、Webでのログだったんですよね。 そう考えると、「ブログでPVを得る」とか「ブログの価値」ということを一生懸命議論している時点で随分と世界が変わったとも言えるんじゃないかと思う今日この頃です。

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