インターネットの30%はファイル共有とアダルトとP2P

2012/2/8-1

NANOG54で「インターネットトラフィックの最大30%はファイル共有とP2Pとアダルトだ」という調査結果が紹介されています。 さらに、それらのトラフィックの大半は物理的には4箇所に集中しているとしています。

この調査結果を公表したのは、2009年のNANOG47で「Hyper Giants」の存在を紹介したCraig Labovitz博士です(参考:インターネットの形を変えて行Google,Facebook,Akamai...)。 2009年はArbor Networksの社員として発表していましたが、今回はDeepField Networks代表として発表しているので起業されたようです。

「残り50%のトラフィック」の前提

今回の「The Other 50% of The Internet」のタイトルの意味を理解するには、「最初の半分」を知る必要があります。

2009年のNANOG47で、トラフィックの集中が急激に進んでいる現象とトラフィックを生成している「巨人」を「Hyper Giants」とCraig Labovitz博士が紹介しました。 インターネットの構造が大きく変化していることをデータとともに示す内容であったため、その発表は(通信業界内で)大きな話題になりました。

2009年のNANOG47発表後に、2010年のACM論文(Internet inter-domain Traffic)が出ていますが、そこでは「世界の上位150組織で世界の50%のインターネットトラフィックを発生させている」とあります。

その上位150組織の筆頭がGoogle(YouTube)、Akamai、FacebookなどのIT企業です。 たとえば、Googleは2010年10月時点で世界のインターネットトラフィックの12%(Google Global Cache分含む)を生成しているという調査結果があります(参考:Arbor Networks: Google Sets New Internet Traffic Record)。 Akamaiは世界のWebトラフィックの30%を運んでいると公表しています。

今回の発表は、以前発表された「上位組織によって世界のインターネットトラフィックの半分が生成されている」では言及されなかった「残りの半分」に関してです。

集中するファイル共有やP2P

発表資料中には、「トラフィックを眺めていると、同じようなAS番号や、同じようなCIDRブロックが度々登場する」とあります。 また、「それらのCIDRブロックはインターネットトラフィック上で大きなシェアを占めているが、結局何なのかは誰も知らない状態である」ともあります。

さらに、「世の中の人々はファイル共有やP2Pは分散されていると信じているが、それは間違いである」と指摘しています。

トラフィックの急激な集中は、ファイル共有やアダルトやP2Pの世界でも発生しているようです。

ファイル共有サイトのインターネットトラフィック

発表では、「ファイル共有サイト」と「エンタープライズクラウドディスク」を分けて考えています。 たとえば、Dropboxやbox.netなどのオンラインストレージは「エンタープライズクラウドディスク」として分類されており、ここでいうところの「ファイル共有サイト」には含まれていません。

発表中で「ファイル共有サイト」とされているのは、最近閉鎖されたMegaUpload(Megavideo)、RapidShare、MediaFire、PutLocker等です。

ファイル共有サイトには以下のような特徴があると記述されています。

  • 一般ユーザトラフィックの5-10%
  • 一般ユーザの1-2%が利用
  • P2Pトラフィックのパターンに類似
  • 日周パターンを持ち、現地時間午前1時にピークを持つ

さらに、以下のような特徴も紹介されています。

  • 同じオーナーによって数百のドメイン名が取得されている
  • そのうち上位10サイトでファイル共有サイト全体の70%のインターネットトラフィックを発生させている
  • ファイル共有サイトを支えるコロケーション/ホスティング事業者の上位4社がファイル共有サイト全体の85%を発生させている
  • Megavideo(Carpathia/Leaseweb)はファイル共有サイトトラフィックの30-40%を発生させていた

MegaUpload閉鎖後のファイル共有サイトのインターネットトラフィックは以下のようになっているとあります。 ファイル共有サイト名とそのシャア、コロケーション/ホスティング事業者が書かれています。


NANOG54:The Other 50% of Internet Trafficより

アダルト

アダルト業界に関しては以下のように紹介されています。

  • DRM/課金/制御を実現可能なホスティングサービスを利用
  • ほとんどのトラフィックがCDN経由
  • Swiftなどの小規模CDNはアダルトに特化
  • ポルノ業界とは商売をしないと判断したCDNもあり(Akamaiなど)
  • アダルト業界に特化したホスティング、課金、広告もある

さらに、インターネットにおけるアダルトトラフィックの内訳を以下のように紹介しています。 単体としてはXvideosが最大のようですが、85%は「その他」とあります。


NANOG54:The Other 50% of Internet Trafficより

P2P内を流れるトラフィックもエロ動画が結構あるのではないかと思うと、「The Internet is for porn」というのも笑い話じゃない気が多少はします。

P2P(主にファイル交換)

かつてのP2P(によるファイル交換)はユーザ同士のPCが直接繋がって行うものでした。 しかし、ISPによる帯域制限などもあって通信速度が遅いことや、RIAA等によって各家庭のIPアドレスが追跡されるようになったので、インターネットトラフィックにおけるP2Pの割合は減少していると発表資料にあります。 (このような傾向は日本でも観測されており、P2Pトラフィックはインターネットトラフィック中に占める割合としては減っています。参考:改正著作権法と日本のインターネットトラフィック)

そのような状況下に、クラウドやHD動画の波が登場し、「SeedBox」とよばれる仕組みがアメリカ国外に登場するようになりました。 いまのところP2Pトラフィックの1-5%程度のようですが、急激に成長しているとのことです。

最後に

ちょうど昨日、MegaUpload閉鎖後に日本国内大手ISPでの海外トラフィックが2割減ったという記事を書きましたが(MegaUpload閉鎖と日本国内でのトラフィック)、その結果を見てもLabovitz博士の推測は正しいのではないかという感想を持っています。

たとえば、xvideosなどのアダルトサイトが急に閉鎖されたら世界のインターネットトラフィックが結構減りそうだと思いました。 ただ、何かが減ればその分は何かが増えるというのをくり返しているので、ファイル共有サイトやアダルト動画サイトが閉鎖されたとしても、何か新しいものですぐに回線が埋まりそうだとも思う今日この頃です。

インターネットのカタチ もろさが織り成す粘り強い世界 過去に実際に起きた「インターネットが壊れて復旧した」事件を端緒に、「粘り強いが壊れやすく、壊れやすいが粘り強い」という視点でインターネットの形を探るという本を書きました。 インターネットを構成する基礎技術TCP/IPを解説した書籍は非常に多くありましたが、そのTCP/IPを使ってインターネットがどのように運用構築されているのかに関しては、あまり知られていません。本書は「TCP/IPを知っていてもインターネットはわからない、一方でインターネットを知るにはTCP/IPの細かい話を全て知る必要もない」という思想で、教科書的にならずに、あくまで「読み物」として楽しんで頂けることを目標に書いています。

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