ステルスマーケティング的なクチコミについて

2012/1/5-2

Web2.0的なCGMが登場してから、もうすぐ10年ぐらいが経過しそうですが、その派生として話題になることが多かったネット上の「クチコミ」がステルスマーケティングの温床となっている気が最近しています。

ここ数日、ステルスマーケティングを短縮した単語である「ステマ」というキーワードがGoogle Trendで「急上昇キーワード」として登場したりしています。 そんななか、日経新聞に「食べログ」での「やらせ投稿」に関しての記事が掲載され、ステルスマーケティング的な手法に関しての話題がさらに増えています。

で、ここで書こうと思っているのは、ステルスマーケティング全般の話ではなく、そのサブセットである「クチコミ」に関してです。 ステルスマーケティングと関連してネットにおける「クチコミ」に関しての私の感想は、「そもそも価値を持った時点でクチコミは成立しなくなる」というものです。 各種CGM(Consumer Generated Media)やブログやSNSなどに、本心から感想を書くユーザももちろん多いのでしょうが、いわゆる「クチコミ」というものに価値が出てしまうと、それを操作しようとする人が登場するのは自然です。 そもそも多くの人々が見る前提の場所に書き込む行為が「クチコミ」という表現に含まれているというのが、「ネット上のクチコミ」の変なところだという噂もありますが。。。

「クチコミ」に全く価値がない状態、もしくは多くの人々が価値に気がついていない状態であれば、純粋な感想としての「クチコミ情報」というのはあるのでしょうが、多くの人々が見る事を前提として場での情報発信は「クチコミ」とは言いにくいという考えています。

たとえば、去年末に以下のような記事が話題になりました。

「書き込むぞ」というのは影響力の行使のためであり、書く側もそこに書くことによって何らかの影響があることを前提としています。 この記事は「食べログ」に関するものですが、現在のインターネットでは、様々な場所で情報操作としての「クチコミ」が盛んに行われています。

さらに、昨年はフジテレビデモに関連する花王不買運動がありましたが、それに関連してAmazon上の花王製品のレビューに大量の書き込みが行われるという事例もあります。 これも「意図的にレビューを書く」ことが実力行使として利用された事例です。

このように、いわゆるCGM(Consumer Generated Media)やWeb2.0的サービスにおける「クチコミ」は、情報操作の場であって、多くの人々が求める純粋な感想としての「クチコミ」とそうでないものが混ざり合っていて参考にならない場合も多いのが現状です。

「ネットの情報は玉石混交」という表現が良く使われますが、そもそも何が信用できるのか一切わからない場合もあるという前提で物事を見ないと難しいとも言えそうです。 ネット界隈の方々であれば「そんなの当たり前だ」と言いそうですが、「実はネットに真実がある」と考えるような方々も今は多いからこそ、今のネット上の「クチコミ」に価値があるのだろうとも思います。

ネット規制や取り締まり強化?

ステルスマーケティング的な「クチコミ」に対する規制や取り締まりが強化されることで、CGM的なWebサイトとして「クチコミの場」を作るのが難しくなる可能性もありそうです。

今回の食べログ報道に関連して、以下のような記事もありました。

消費者庁が昨年10月に「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点および留意事項」という文書を公開していますが、今回の件がどのように判断されるかで、色々変わるかもしれません。

海外の規制としては、たとえば、以下のようなものがあげられます。

イギリスでは2008年に「Consumer Protection from Unfair Trading Regulations 2008」によってステルスマーケティング的なクチコミが禁止されました。 参考:FSA: Unfair Commercial Practices - what you need to know

これに基づいてOffice of Fair Tradingが広告代理店に透明性確保を命令した事例が2010年にありました。 Handpicked Mediaという会社がお金を払って有名人にTwitterやブログ上で商品紹介を依頼していた事例に関してです。 関連するOFTのプレスリリースが面白いので、興味のある方は是非ご覧下さい。

アメリカでは、2009年にFederal Trade Commisionがステルスマーケティング的なブログ等を禁止するという内容を含むガイドラインを公表しています(参考:FTC Publishes Final Guides Governing Endorsements, Testimonials)。

ステルスマーケティング的な手法はゼロにはならないだろうとは思いますが、今の日本国内のように「何でもアリ」に近い状態がいつまでも続くとも思えない今日この頃です。

追記

関連記事書きました「ネットデマやステマは病原菌」。

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