総務省による言論統制要請?についての雑感

   このエントリをはてなブックマークに登録    2011/4/7-1

総務省|東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への適切な対応に関する電気通信事業者関係団体に対する要請」が話題になっています(はてブ参考)。

その中で、以下のように述べられています。

つきましては、インターネット上の地震等に関連する情報であって法令や公序良俗に反すると判断するものを自主的に削除することを含め、貴団体所属の電気通信事業者等に、表現の自由にも配慮しつつ、「インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」や約款に基づき、適切な対応をおとりいただくよう御周知いただくとともに、貴団体においても必要な措置を講じてくださいますようお願い申し上げます。

「デマがヒドイしなぁ」という意見と同時に、「政府による情報統制だ!」という意見もネット上に溢れました。 私も最初にプレスリリースを見て色々と違和感を感じました。

ただ、色々と調べてみると、ちょっと印象が変わりました。 「自主的に削除することを含め」と「表現の自由にも配慮しつつ」が同居していることから、個人的にこの件を見ての感想としては「これって総務省によるささやかな抵抗かも」と思いました(実際のところは知りませんが。。。)。

というのは、そもそもこの要請は3月31日に発足した「被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチーム」によるものであり、総務省としては言われて対応しているという雰囲気です。

結果として「現状維持」と言っているような「要請」なのですが、この「要請」によって「被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチーム」が要求している対応を総務省としてはしたことになっています。

被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチーム

「被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチーム」の構成員は以下のようになっています。 インターネットインフラ系の現場な方々は含まれていないような気がします。

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hisaitiwg/konkyo.pdf

"「インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」や約款に基づき"

では、次に、今回の総務省による要請を読んだ個人的な感想を書いて行きます。 総務省の文章で個人的に最初に注目したのが、この部分です。

インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」を見てみると、「違法性の判断に関する考え方」で解説しているのは以下の項目です。

  • わいせつ物の公然陳列(刑法第175条)
  • 児童ポルノの公然陳列(児童ポルノ法11第7条第4項)
  • 売春防止法違反の広告等(同法第5条第3号・第6条第2項)
  • 出会い系サイト規制法12違反(同法第6条)異性交際等の誘引行為(同法第6条)
  • 薬物関連法規
  • 規制薬物に係る広告
  • 指定薬物に係る広告
  • 薬物犯罪等の実行又は規制薬物を濫用することを、あおり、又は唆す行為
  • 未承認医薬品の広告(薬事法第68条)
  • 振り込め詐欺関連法規
  • 金融機関の口座売買等の勧誘・誘引の禁止(犯罪収益移転防止法16第26条第4項)
  • 携帯電話・PHSの匿名貸与業・無断譲渡業等の勧誘・誘引の禁止(携帯電話不正利用防止法17第20条から第23条まで)
  • 第三者機関による違法性の判断を受けて行う違法な情報への対応
  • 警察機関又は厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策関係機関からの送信防止措置依頼を受けて行う対応
  • インターネット・ホットラインセンターからの送信防止措置依頼を受けて行う対応

これらの中に明確に「東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語」に対応できると思われる項目がありません。

契約約款モデル条項

「東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語」に対して対応出来そうな項目が含まれているのが、契約約款モデル条項です。

契約約款モデル条項には以下のような項目が書かれています。

  • 当社もしくは他者の著作権、商標権等の知的財産権を侵害する行為、または侵害するおそれのある行為
  • 他者の財産、プライバシーもしくは肖像権を侵害する行為、または侵害するおそれのある行為
  • 他者を不当に差別もしくは誹謗中傷・侮辱し、他者への不当な差別を助長し、またはその名誉もしくは信用を毀損する行為
  • 詐欺、児童売買春、預貯金口座及び携帯電話の違法な売買等の犯罪に結びつく、または結びつくおそれの高い行為
  • わいせつ、児童ポルノもしくは児童虐待に相当する画像、映像、音声もしくは文書等を送信又は表示する行為、またはこれらを収録した媒体を販売する行為、またはその送信、表示、販売を想起させる広告を表示または送信する行為
  • 薬物犯罪、規制薬物等の濫用に結びつく、もしくは結びつくおそれの高い行為、または未承認医薬品等の広告を行う行為
  • 無限連鎖講(ネズミ講)を開設し、またはこれを勧誘する行為
  • 当社の設備に蓄積された情報を不正に書き換え、または消去する行為
  • 他者になりすまして本サービスを利用する行為
  • ウィルス等の有害なコンピュータプログラム等を送信または掲載する行為
  • 無断で他者に広告、宣伝もしくは勧誘のメールを送信する行為、または社会通念上他者に嫌悪感を抱かせる、もしくはそのおそれのあるメールを送信する行為
  • 他者の設備等またはインターネット接続サービス用設備の利用もしくは運営に支障を与える行為、または与えるおそれのある行為
  • 違法な賭博・ギャンブルを行わせ、または違法な賭博・ギャンブルへの参加を勧誘する行為
  • 違法行為(けん銃等の譲渡、爆発物の不正な製造、児童ポルノの提供、公文書偽造、殺人、脅迫等)を請負し、仲介しまたは誘引(他人に依頼することを含む)する行為
  • 人の殺害現場の画像等の残虐な情報、動物を殺傷・虐待する画像等の情報、その他社会通念上他者に著しく嫌悪感を抱かせる情報を不特定多数の者に対して送信する行為
  • 人を自殺に誘引または勧誘する行為、または第三者に危害の及ぶおそれの高い自殺の手段等を紹介するなどの行為
  • その行為が前各号のいずれかに該当することを知りつつ、その行為を助長する態様又は目的でリンクをはる行為
  • 犯罪や違法行為に結びつく、またはそのおそれの高い情報や、他者を不当に誹謗中傷・侮辱したり、プライバシーを侵害したりする情報を、不特定の者をして掲載等させることを助長する行為
  • その他、公序良俗に違反し、または他者の権利を侵害すると当社が判断した行為

この中の「その他、公序良俗に違反し、または他者の権利を侵害すると当社が判断した行為」としてネット上のデマ等が含まれると判断されればISP等によって自主的に削除されるのだろうと思われますが、何がデマで何でデマではないかの判断が難しい事例も多そうです。 そのため、そういった判断をISP等が避けるであろうと推測されます。

警察からの依頼が発生しないと「現状通り」?

ISP等が出来るだけ「何が"東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語"か?」という点に関する判断を避けようとしたとき、外部からの削除依頼が発生しない限りは「東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語」は削除されません。

そして、現時点で削除依頼の処理が確立している組織は警察とインターネットホットラインセンターだけだと思われます。

ということは、実は現状と何も変わらず、警察等が削除依頼を出すかどうかの問題となりそうです。

「総務省は稚拙」なの?

これらのことから、個人的な感想として「総務省としては、官邸から言われて業界団体への要請を出したけど無茶なことは言えないし、実質現状と変わらない要請を出した」という風に思えました。

なので、「総務省が情報統制を開始」というよりは、今のところは「情報統制にならない範囲で総務省が要請を出すという形をとっておいた」という雰囲気じゃないかなぁと。

ということで、今回の要請に関して「総務省が稚拙な要請を出した」というよりも、「被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチーム」がそういう要請を出させたという感想です。 実際のところは知りませんが。

「責任の丸投げ」が多い気がする

ブロッキングの話題でもそうなのですが、基本的に政府側が「各自の判断で行うように」という論調でISP等に対して責任を丸投げする方式が多い気がしています。

インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」に以下のような記述があるように、何かがあったときに法的責任を問われるのは実際に削除を行った管理者側であり政府ではありません。

上記のとおり、電子掲示板の管理者等が、他人が流通させた違法な情報に関して必要な限度で行う送信防止措置については法的責任を問われない。
一方、電子掲示板の管理者等が、他人が流通させた違法な情報ではない情報について誤って送信防止措置を行った場合における法的責任については裁判手続によって判断されるものである。よって、電子掲示板の管理者等がガイドラインに定める手続に従って送信防止措置を行ったからといって、当然に法的責任が生じないことにはならないことに留意すべきである。
ガイドラインは、電子掲示板の管理者等が違法な情報について送信防止措置を行う際の判断の一助として利用されることを念頭に作成するものである。

何が違法で何が合法であるかに関しての明確な法律を作るわけでもなく、「運用でカバーしろ」という方式ばかりが増えて行って大丈夫だろうか?と思ってしまう一方で、明確な法律を作ってガンガンとネット規制を強めて行けば早期にネット検閲バリバリになってしまいそうな気もしており、ここら辺は今後色々と変わって行くのだろうと思った今日この頃です。

追記

思ったよりも踏み込んだ判断をしているようですね。。。 「死体が駄目」となると「死体+ニューヨークタイムズ」で検索した結果が軒並み駄目になりそうです。

テレコムサービス協会:東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への対応に関する情報提供

要請の内容:震災後の死体等が写った画像が掲載されていたため、削除されたい。
対応:「インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」及びサービス約款等に照らし検討を行った結果、サービス約款にて規定する禁止事項に該当すると判断し、送信防止措置を講じた。
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