IPv4枯渇〜これからのインターネットの変化とデータセンター〜@HOSTING-PRO

   このエントリをはてなブックマークに登録    2011/3/8-1

秋葉原で行われたHOSTING-PRO 2011で、日本データセンター協会 IPv4アドレス枯渇WG chairの仲西亮子氏によって「IPv4枯渇〜これからのインターネットの変化とデータセンター〜」という発表が行われました。

内容は、IPv4アドレス枯渇、IPv6対応、IPv4/IPv6変換の必要性、これからのインターネットの変化、というものでした。 最初に、IPv4アドレスのIANAプール枯渇までの流れの解説や、アドレス配分の仕組み、などのおさらいがありました。

APNIC/JPNICにおける「枯渇」とは何か?

次に解説されたのが、APNIC/JPNICにおける「枯渇」の定義です(JPNICはAPNICと在庫を共有しているので、APNIC/JPNICと表現されています)。

IANAプールの「枯渇」の定義は、全ての/8ブロックがRIRへと割り振りされて、IPアドレスの中央在庫がゼロになることでしたが、APNIC/JPNICにおける「枯渇」は、APNIC/JPNICのIPアドレス在庫がゼロになることではないという点に注意が必要です。

APNIC/JPNICでは、IPv4アドレスの残り/8が1ブロックになったときが「枯渇」であると定義されています。 /8ブロックが残り1個になった時点で、APNIC/JPNICでは「枯渇後」のポリシーによる割り当てへと移行します。

IPv4アドレス枯渇時計を見るときの注意点

このようなAPNIC/JPNICでの「枯渇」の定義とIPv4アドレス枯渇時計の表記の違いに関しての解説もありました。 良く参照されているIPv4アドレス枯渇時計は、「/8ブロックが1個になった時点で枯渇である」というAPNIC/JPNICの枯渇の定義を反映しておらず、/8ブロックがゼロになった時点で「枯渇」であるという前提で計算をしています(2011年3月3日時点で4.37となっている/8ブロックの残りがゼロになる時期を予測しているのがIPv4アドレス枯渇時計。1.00で「枯渇」と定義しているのがAPNIC/JPNIC。)。

そのため、APNIC/JPNICでの「枯渇」は、IPv4アドレス枯渇時計が予測する「枯渇」よりも早く到来すると紹介されていました。 HOSTING-PROでの講演時点でIPv4アドレス枯渇時計が「8/3」と予測していましたが、「仮に6月として話を進めると」という予測で講演の説明は続きました。 (5月ぐらいになくなる可能性もあるという話もチラホラ出始めているので、「仮に」という部分は本当に「仮に」なので「6月なんだぁ」と納得しないようごご注意下さい)

APNIC/JPNICは、APNIC/JPNICのIPアドレス在庫が残り1ブロックになるのが、IANAプール枯渇から3〜6ヶ月後であると予測しています。

「枯渇後」に変わる追加割り振りポリシー

APNIC/JPNICのIPアドレス在庫の/8ブロックが1個となった瞬間から、IPv4アドレスの追加割り振りポリシーが変わることの説明がありました。 (発表では明言されていませんが、現時点でもポリシーは議論中であり、/8が1ブロックになった時点で発動するポリシーとして新しいものが実装される可能性もあります)

APNIC/JPNICのIPv4アドレス割り振りポリシーは、IANAプール枯渇後も/8ブロックが残り1ブロックになるまでは、従来通り80%ルールで、その後1年間分のIPv4アドレスを申請します(*注)。

取材者注:そもそも指定事業者のIPv4アドレス在庫は、申請の際に「1年後に50%以上使用している事」という条件があるので、申請から1年後には概ね割り振られたアドレスを使いきる、もしくは使い切る予定になっている事が予測できます。 現実は、計画が想定通りに進まなかったり、多くのIPv4アドレスを利用していた顧客が解約したりという事で、アドレスが余る事はあり得ますが、基本的には数年先のアドレスを保持している事はない筈の制度です。 そのため、「IPv4アドレスが枯渇しても○年分のアドレスは確保していある」と明言している事業者がいるとしたら(実際にいますが)、それは何か引っかかるものがあります。

/8ブロックが残り1ブロックになった時点で、Final /8 Policyが発動します。 80%ルールは引き続き継続されるため、80%利用していない事業者は新規割り振りの申請が出来ません。 さらに、それまでの最小割り振りサイズであった/22が/24へと縮小されます。 1事業者が申請可能な最大サイズは/22へと変更されます。 Final /8 Policyでは、各事業者は1回だけしか割り振り申請を行えないようになるのも大きな違いです。

枯渇X-Day前後を図示

さらに、枯渇X-Dayを推測しながら、「いつどうなりそうか」に関しての紹介も行われていました。

そこでは、6月ぐらいまでは今まで通りの割り振りポリシーが継続されるだろうとしつつ、6月ぐらにAPNIC/JPNICが定義している「枯渇」が発生して、Final /8 Policyへと変わるだろうと述べられていました。

さらに、各事業者によって事情が異なるとしながらも、2012年のどこかで各事業者が持つIPv4アドレスが枯渇するだろうとしています。 これは、各事業者が申請を行えるのが「約1年分」であることを理由としています。

IPv4アドレスの移転

IPv4アドレスの移転も紹介されていました。

IPv4アドレス移転は、2010年2月にAPNICでポリシーが施行されていますが、JPNICでは未だに施行されていないため、現時点では日本国内でIPv4アドレス移転ができない状態です。 さらに、JPNICでいつからAPNICポリシーが施行されるのかが公表されていないことも注意点として挙げられていました。

さらに、今後の対策として「IPv4アドレス移転」だけに頼ることの危険性に関しても言及されていました。 「欲しい時」に移転可能な事業者がいるとは限らないことや、そもそもIPv4アドレス枯渇後は新たにIPv4アドレスを入手することが非常に困難になると予測されること述べられていました。

データセンター事業者と利用者、これからすべきこと

データセンター事業者と、データセンター利用者に分けて「これからすべきこと」も紹介されていました。

データセンター事業者は、追加申請をいつ行うかを把握しながら行うべきであると述べられています。 これは、APNIC/JPNICでの枯渇がトリガーされると/8追加申請のためのポリシーが変更されてしまうためです。 APNIC/JPNICでの/8ブロックが1ブロックになるのが6月だとした場合(あくまで例としての「6月」です。ご注意下さい)、6月のX-Day以前と以後では申請できるサイズ等が変わってしまいます。

さらに、データセンター事業者は最後の在庫をどのように利用するのかを検討すべきであることも紹介されています。 これは、IPv4/IPv6トランスレータなどを実現するためにIPv4アドレスが必要であることなどが理由です。 IPv6移行技術の多くは、IPv4アドレスがなければ使えません。 たとえば、最近話題の6rdもIPv4アドレスがなければ利用出来ません。

データセンター利用者側としては、IPv4アドレスの必要数をあらかじめ割り出したうえで、接続データセンターと相談することなどが提案されていました。

事業者側のゴール

事業者側の直近のゴールとしては、現在提供しているサービスをIPv6で利用可能な状態を目指すことが挙げられていました。 しかし、全てを同時にするのは難しいので、どのような順番で行うのが良さそうかに関して以下のように述べられていました。

コロケーション
  • IPv6ネイティブで提供する(MUST)
  • IPv6アドレスの新規/追加割り当てを提供する(MUST)
  • 回線品目を複数用意できる事(RECOMMEND)
  • VRRP等の冗長構成を提供できる事(RECOMMEND)
ホスティング
  • ユーザ専用ページをIPv6で提供できる事(RECOMMEND)
  • 提供OSがIPv6対応している事(MUST)
  • IPv6アドレスの新規/追加割り当てを提供する(MUST)
レンタルサーバ
  • ユーザ専用ページをIPv6で提供できる事(RECOMMEND)
  • ユーザに提供するサービス(Web/Mail/FTP/SSH等)がIPv6提供される事(MUST)
iDC共通基礎
  • セカンダリDNSサービスがIPv6対応している事(CRITICAL)
  • AAAAレコードが登録できる事(CRITICAL)
  • NTPをIPv6経由で提供できる事(RECOMMEND)

これらの詳細は、IPv4アドレス枯渇タスクフォースで公開されている「iDCサービスのIPv6対応ガイドライン」をご覧下さい。

Case Study

IPv4のセグメントに可能な限り影響を与えずにIPv6対応を行うCase Studyとして、以下のような構成が紹介されていました。

「小さくてもIPv4/IPv6セグメントを作って行く」や「IPv4の既存セグメントには可能な限り手を加えない」など、現時点で稼働しているIPv4環境に大きな影響を与えずに徐々にIPv4/IPv6デュアルスタック環境を構築していくという方法が紹介されていました。

IPv6サービス開始時期予測

各事業者がいつごろIPv6サービスを開始すれば良いのかなどに関しての提案も行われていました。

4月からNTT-NGNでIPv6サービスが開始するので、それ以降は日本でIPv6ユーザが増えことと、枯渇X-Dayなどを考慮しながら4月以降ぐらいからIPv6トライアルを行うことを勧めていました。 (NTT-NGNでIPv6サービスが開始されるのは案2のトンネル方式であって、案4のネイティブ方式はそれよりも後なのであるという点には注意が必要だと思います)

IPv4/IPv6変換技術の留意点

IPv4/IPv6変換技術に関する留意点も紹介されていました。

まず、変換技術は恒久的なものではなく、あくまで移行するための技術であることが述べられていました。 変換技術を使うことでログ取得が複雑になったり、対応できないアプリケーションが発生するなどの弊害が存在することが理由の一つとして挙げられていました。

さらに、アプリケーションへの影響、導入のための機器数、構成が複雑化すること、全体的なパフォーマンスへの影響なども考慮する必要性も紹介されていました。

対応製品

IPv4/IPv6変換技術の種類なども紹介されていましたが、残念ながら時間がおしていたので超ハイペースで紹介が終わってました(笑)。

まとめ

最後のまとめでは、IPv4アドレスが本当になくなる日は間近としつつ、IPv4アドレスがなくなったとしてもIPv4インターネット需要は続き、それに対応する必要性が述べられていました。

さらに、IPv4とIPv6が共存する環境を試験運用を行う等、IPv6が本格的に普及するまでは技術的に安定したネットワークを準備することが重要であることが紹介されました。 そのうえで、「IPv4アドレス自社在庫がいくらたくさんあっても、世の中がIPv6対応していくので、IPv6対応しないことにはリスクがある」と最後にまとめられていました。

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