世界のWebトラフィック3割を配信するAkamaiの創設者Tom Leighton博士インタビュー

   このエントリをはてなブックマークに登録    2011/2/24-2

2月17日に赤坂で、Akamai Technologies社の創設者であり、MIT教授でもあるTom Leighton 博士によるプレス発表会が開催されました。 そこで発表された内容のうち、個人的に興味を持ったのは以下の項目です。

  • IPv6サービスに関して
  • Ericsson 社との提携によるモバイル網への進出について
  • DDoS 等による攻撃トラフィックに対処するためのコンサルティングと、それらの不正トラフィックによって発生したトラフィックに対して課金を行わない保険サービスの紹介

17日のプレス発表資料より

Leighton博士へのインタビュー

さらに翌18日、Leighton博士への単独インタビューに伺いました。 主に前日の発表内容に関連した質問を行いましたが、それ以外にも幾つか興味があったことを聞いてみました。

以下、インタビューの内容です。 基本的にテープ起こしに近い状態ですが、Tom Leighton教授が英語で話しているのを私が日本語訳して以下の文章としているため、一部は実際の発言を意訳している部分もあります。 また、翻訳を行うために主語を明確にしている部分もあるのでご注意下さい。

Q: Akamai社とEricsson社の提携の話がありました。携帯電話の環境では、ローミングなどの仕組みによって、IPアドレスがネットワーク的な位置を示しているとは限らず、DNSへのQuery を送信しているユーザーのIPアドレスから、最寄りのAkamaiサーバーの位置を推測するという、これまでのAkamaiの手法が使いにくいと思いますが、どのような仕組みで携帯電話網へのサービスが提供されますか?

A: Ericsson社との提携では、初期段階では携帯電話網までの入り口までをAkamaiが担当し、モバイル網に入ってからの部分はEricsson社が担当します。 具体的には、GGSNから Cell TowerまでをEricsson社が担当します。 Akamaiソフトウェアは、初期段階ではそこには入りません。

現時点では、Akamaiソフトウェアはインターネットに設置してあり、GGSNでEricsson社のテクノロジーと相互接続しています。 Ericsson社の技術は、適切に帯域を割り当て、携帯電話網での最適化を行います。 Akamaiが携帯網にも対応したサービスの販売窓口になりますが、携帯電話網内での実際の技術を提供するのはEricsson社になります。


17日のプレス発表資料より

そもそも、その中はIPベースですらない可能性がある訳ですが、Akamaiが行っている全てのサービスはIPベースです。 長期的な視点で見た時、今後、IPが携帯電話網の中で本格的に使われる可能性もあります。 既にそういった設計が行われているものもあります。

そうなった時には、Akamaiサーバーが携帯電話網の奥深くに設置されることで、通信の最適化が実現されるようになります。 これは、Akamaiサーバーを置くことで、輻輳が発生しているリンク上を流れるコンテンツをオフロードすることができるようになるためです。 しかし、それは第二フェーズで予定されていることであり、初期段階での実行とはならないでしょう。

Q: 第一フェーズはいつ頃開始されるのでしょうか?

A: 恐らく、今年後半にトライアルで幾つかのお客様に試して頂ける状況が作れると思います。 既に幾つかの組織にトライアルに関してご相談をさせて頂いています。 さらに、Ericsson社の手助けを得ながら、どのワイヤレス事業者が興味を示して頂けるかを探っている状態です。

Q: では、どの国から開始されるということも決まっていないということですか?

A: まだ確定はしていません。 Ericsson社は、その辺りに関して、既に何らかの案があるのかも知れません。 ワイヤレス業界に関してはEricsson社の土俵で、コンテンツ側がAkamaiの土俵です。 今回の戦略的な提携は、その二つが融合するという意味を持っています。

Q: 提携相手が明確に決まるまでは、これによってAkamaiサーバーがどれだけ増えるかはわからないということですか?

A: Akamaiサーバーは既に設置してあります。 もちろん、もしかしたら、新たに GGSN へサーバーを新規に設置する必要が発生する可能性もあります。

しかし、既に多くのGGSNにAkamaiサーバーは設置済みです。 そのため、この提携によって、劇的にAkamaiサーバー数が変化するとは思いませんし、例え1,000台増えたとしても、全体から見れば大きな変化とは言えません。 Ericsson社には、ワイヤレス網内で効率的に通信を行う技術が既にあります。 加えて、ワイヤレス網の運用経験も豊富です。 今後数ヶ月を使って、どのワイヤレス網が参加をして頂けるかを探っていくものと思われます。

Q: ということは、今回の Ericsson社との提携で、Akamai社が行うことの大きな部分は、「コンテンツを配信することを許可する」ということになりますか?

A: このパートナーシップで行うことですが、Akamaiはコンテンツを持つお客様に対して、既存サービスラインナップの付加的メニューもしくは新しいメニューを追加します。 技術的には、AkamaiとEricsson社の間のインターフェースであり、お客様からのコンテンツがインターネットを通じて配信される部分をAkamaiが効率化し、GGSNでEricsson社に渡すことによって、ワイヤレス網においてもそのコンテンツが高いレベルの配信が行えることを保証するものです。

これによる収益は、Akamaiのエコシステムを通じて配分されます。

Q: ここ1〜2年、Akamaiサーバーの数が急激に増えていますが、今後も同様に急激に増えるのでしょうか?

A: 今後どれぐらい増えるかに関して、実際の数はわかりません。 しかし、幾つか要素はあります。

まず、サーバーの数は、存在感を示したい場所の数に依存します。 私達はいつでもエンドユーザーに近いところにいたいと考えています。 さらに、私達がサポートしたいと思うコンテンツへのトラフィックレベルも大きな要素です。 そして、CPUに負荷がかかるなど、トラフィックレベルは配信しているメディアの種類にも依存しています。

一方、サーバーは、時間の経過と共に古くなってしまい、置き換えなければなりません。 一般的には、5年が経過すると置き換えています。 これは、古くなってしまったサーバーが提供できる能力が、運用コストに見合わなくなるためです。 新しいサーバーは高性能なので、サーバーラック全体を数台のサーバーで置き換えられるような場合もあります。 そういった各種要素が絡み合い、いつどのようにサーバーを設置するかが決まります。

Q: 最近、P2Pに対する取り組みを強化されていますが、その取り組みがサーバー数の増減に与える影響を教えて下さい。P2Pの割合を増やしてもサーバーは増え続けそうですか?

A: まだはっきりとはわかりません。 サーバーの数が増え続けているように見えるのは、P2Pクライアントが大量に存在していたとしても、それらを管理するサーバーが必要です。

P2Pは、インターネットビデオが急激に増える時に特に有用です。 例えば、非常に短い期間に 10倍、20倍などになったような場合です。 一方、サーバーを、P2Pと同様に短期間で10倍、20倍に増やすのは困難です。 技術的に無理ではありませんが、非常に高いコストが発生してしまいます。 そのため、急激なトラフィックに対する需要の爆発が発生した時に、P2Pクライアントが必要になると思っています。

今のところ見えているAkamaiサーバーの増加も、インターネットビデオ市場が本格的に立ち上がれば、さらに急激に伸びるだろうと予想されます。

Q: 昨年Apple社が開始したビデオ配信サービスの影響で、当時ビデオトラフィックが急激に増えたと思うのですが、何か影響はありましたか?

A: はい。ビデオトラフィックそのものが、引き続き急激に拡大しています。 恐らく3倍以下、2〜3倍程度であると思うのですが、潜在的にはもっと急激に成長する余地があります(取材者注:Leighton博士が「2〜3倍」と発言しているのは、Akamaiが扱うビデオトラフィックの話であってインターネット全体のビデオトラフィックの話ではないと思われます。インターネット全体のビデオトラフィック増加も急激に増加していますが、様々な予測では3倍とまではいかない数値が提示されています)。

P2Pの背景にあるアイディアは、莫大なコストを負担せずにそれを問題なく実現することにあります。

Q: 次はIPv6に関しての話です。ICANNによるIPv4アドレス枯渇発表以降、IPv6に関する問い合わせは増えましたか?

A: いいえ。率直に申し上げて、アメリカでは関心が全く示されていません。 ヨーロッパでもあまり強い関心は示されていません。

しかし、アジアでは、非常に強い関心が示されており、恐らく、対応が早期に開始されるのがアジア地域となるかも知れません。 アジア地域の人々は、既にIPv6対応に関して先に進んでいます。

そのため、アジアでは IPv6での高品質配信を行うためにサービスを導入する事例があります。 アメリカでも、実際に問題が顕著になれば、自分で直接IPv6を運用しなくても良いように、弊社サービスを導入するお客様もいらっしゃるでしょう。

Q: World IPv6 Dayの動向を見守っている人は多いと思いますが、それでもやっぱりIPv6への興味はアメリカで少ないということですか?

A: (にっこりしながら)World IPv6 Dayは、多くの方に関心を持ってもらうためにやっています。

Q: では、人々がIPv6に興味を持ってもらうのに苦労しているということですか?

A: アメリカ政府は非常に関心を持っており、推進しようとしています。 また、Google社も非常に努力していますし、他にも、幾つかの企業が努力しています。 ただ、色々な考えがあります。

「インターネットの父」の一人でもあるMIT教授と話していると「IPv4アドレス枯渇なんて虚構だ。IPv6への移行なんて実現しないよ。なんでみんな狼少年みたいなことを言ってるの?」(v4 shortage is a myth:神話、作り話、という意味もありますが今回は「虚構」と訳しました)という発言もありました。

(冗談っぽく、)私にとっては、IPv4アドレス枯渇は課題のように思えていますが。 私達はIP空間を使っており、これから新たに使いたいという人も増えています。 しかし今後、それは難しくなるでしょう。

Q: Akamaiサーバーが相互に接続しあうことによって、Akamaiサービスが成り立っていますが、IPv6対応によって、Akamaiサーバー同士はIPv4もしくはIPv6で相互に接続しあうように今後は変わって行くのですか?

A: はい。Akamaiサーバー同士は、そこにある環境に応じて接続する方法として最適なものを選びます。 IPv4でAkamaiサーバー同士が繋がる部分も、IPv6でAkamaiサーバー同士が繋がる部分もあります。 さらに、複数経路を見る場合もあるので、各Akamaiサーバーが設置されているローカルネットワークに応じて、それぞれの通信手段が決まります。


17日のプレス発表資料より

Q: 同じAkamaiサーバー同士があったとして、その間をIPv4とIPv6で接続出来る環境であった場合、Akamaiサーバー同士はIPv4かIPv6の片方の通信を選びますか?それとも、IPv4とIPv6の両方で2つのノード同士を接続しますか?

A: Akamaiサーバーは、冗長性を実現するために両方の経路を見ます。 可能性のある複数の方法を利用して、最も効率が良い方法を導き出します。

例えば、IPv4からv4/v6トランスレーターを経由して、IPv6のアドレスへと到達する経路と、IPv6 ネイティブに通信してv4/v6トランスレーターを回避する経路があって、IPv6ネイティブの方が早ければそちらを選ぶようなことをします。

Q: 全てのAkamaiノードが既にIPv6対応が完了しているということですか?

A: いいえ。しかし、そうなる方向へと向かっています。 まだIPv6対応を開始していないサービスもありますが、順次開始して行きます。

Q: コンテンツキャッシュは、IPv4やIPv6に何らかの影響を受けますか?要求が行われた通信路に関係なくコンテンツはコンテンツとして扱われますか?

A: はい。コンテンツキャッシュの保存は、通信路と独立しています。

Q: Arbor Networks社によると、「Hyper Giants」と呼ばれる「新しいインターネット界の巨人」が Tier1と肩を並べるほど影響力を持ってきているとしています。Akamai社もHyper Giantsのひとつとして、Google社、Facebook社、Microsoft社と共に紹介されています。そのような中で、Akamai社の運んでいるトラフィックが、インターネットの形を変えているという可能性はありますでしょうか?

A: 私達の活動そのものが、インターネットトポロジーそのものを変化させていくとは思いません。 しかし、Akamaiは他とは違うことをしています。 私達は大量のトラフィックをインターネットからオフロードしています。

もちろん、私達はインターネットのダイナミクスを変えました。 いまや私達は、非常に多くのコンテンツを配信しているため、私達をインターネットの一部として見ると、インターネットはそれまでのものとは違って見えるでしょう。 それは、私達が分散配置された配信システムを持っているからです。

これは、元々のインターネットが設計された形とは異なります。 そして、私達はDNSの挙動を変えました。 DNSの利用量も我々は多いです。 DNSに対する問い合わせが行われている名前を見ると、我々によって登録されたものが非常に多くあります。 これは、私達が非常に多くのドメインを持っているだけではなく、パフォーマンスを得るために短期間でupdateを繰り返すためです(取材者注:TTLが短いため)。

私達はpingやテストをインターネット上で大量に行っています。 今では多くのネットワークオペレーターがその存在を認識しており、それがコンテンツをオフロードすることによって、ユーザーに対して良い品質のサービスを提供するために必要であることを知っています。 このようなこともあり、あなたが先程述べた、他の「Hyper Giants」とは多少異なると思います。

もちろん、他のHyper Giantsのトラフィックが、Akamaiを経由しているという事情はありますが(笑)。 確かに、今のインターネットを流れるトラフィックの重みは、物事を非常に興味深いものと変えていると思います。

とはいえ、Facebook社やGoogle社が実際に発生させるトラフィックは、Google社のYouTubeは大きいですが、それらが大きな問題である訳ではないと思います。 問題はビデオトラフィックでしょう。 特に、皆が見たいと思う有名なビデオです。 ワイヤレスネットワークを含めて、多くのネットワークがインターネットビデオによって大きな負荷を受けます。

これは、幾つかの問題を発生させますが、まず、パフォーマンスが悪くなると考えられます。 例えば、大きなエレクトロニクスショーでは、誰も携帯電話が使えないような状況に似てます。 それは大きな問題となるでしょう。

この問題を解決するにはネットワークインフラに対して多大な投資が必要ですが、それによって新たな課金が可能ではないことが多いので難しい面も多いでしょう。 そうなると、課金方式が、今と変わって行く可能性もあるのではないかと思います。 もしくは、そうなってくると、Akamaiが今よりも多くの分散サーバーを保持して、さらに重要な役割を果たして行くようになっている可能性もあります。 それは、ネットワークインフラへの投資額を爆発させずに、増大するビデオトラフィックをAkamaiが配信可能だからです。

私達は、ネットワークフレンドリーであり、インターネットインフラへの投資が異常な金額にならないように軽減可能となるように日々努力をしています。 そして、製造業者、ISP、ワイヤレスネットワークなど、多くのパートナーと一緒に協力関係にあります。 もちろん、私達が配信しているコンテンツのコンテンツオーナーも含まれます。

Q: 増加し続けるビデオを配信する方法としてのマルチキャストに関しての感想を教えて下さい。それとも、今のようにTCPによるビデオ配信が続くのでしょうか?

A: アカデミックな視点から言えばマルチキャストには意味があります。 マルチキャストは、もう、今まで延々と話題になり続けています。

しかし、大規模に採用されたことはありません。 幾つか理由はあります。 また衛星通信のように、マルチキャストが実際に有用であり実用化されている分野もあります。 そこに価値はあると思います。

ただし、それは最も価値があるものに限られます。 例えば、有名だけど超有名とまではいかないものには向きません。 スーパーボウル、もしくはネット上で多く視聴されたワールドカップではないものなどです。 さらに、様々な角度のカメラを選んで視聴できたり、個人向けにパーソナライズされた広告が入り、ビデオのマネタイズ(収益化)が進化することなどを考えると、それには個別の通信が要求されます。 今後数年、もしくは10年単位で世の中がどのように変わるのかを見て行くのは楽しみではあります。

Q: DNSSECについての質問です。DNSSECを要求する顧客はいますか?需要はありますか?

A: (笑顔)。恐らく片手で数えられるぐらいでしょう。

多くの組織が対応すべき、、、であるとは思いますが、世界中でDNSSECが普及している箇所はありません。 アメリカ政府は強く推奨していますが。

DNSSECはspoofingを防ぎます。 もちろん完全ではありませんが。 非常に大きな欠点として、DDoS攻撃の問題があります。 CPUに対して非常に負荷がかかってしまいます。

現時点では、はっきりいって誰も興味を持っていません。 (冗談風に)私達は、DNSSECに関しては「売れないサービスを抱えている」のかも知れません。

Q: DNSSEC普及のためにプロモーションを行いますか?それとも現状維持ですか?

A: これは岩を坂の上に押し上げるようなものです(実際の発言は:「It's pushing the rock up hill」です)。 やるべきだと言うし、プレゼンでは紹介しています。 セキュリティ上は大事ですが、セキュリティというのはいつでも大事である一方、難しい分野です。

セキュリティに関して言えば、DoS防御はあまりに多く発生しているので、それに関しては需要があります。 あまりに多くのお客様が DoSをされてしまったので、DoSに関しての興味を皆様が持たれるようになりました。

Q: DoS防御に関してのホワイトペーパーなどは公開されていますか?

A: 幾つか公開しているものがありますが、現在ベストプラクティスを新たにまとめて公開しようとしています。

日本でも最近、大規模なDDoSに関しての相談がありました。 そういった背景もあり、ベストプラクティスをまとめています。

Akamai DSA (Dynamic Site Accelerator) をONにすれば、多くのDoSは防げます。 しかし、最近は徐々に攻撃も高度になって来ており、Akamaiを回避して、いきなりオリジンサーバーを攻撃する事例も登場しています。

さらに、何らかのアプリケーションを起動させて、オリジンサーバーに問い合わせが行くように仕向ける攻撃も増えています。

Q: では単にブラックホールを作って、DoSトラフィックをどこかに向けて対応するだけという訳ではないのですね

A: ブラックホールは、攻撃の解析が完了した時点で使いますが、それは人間が行います。 人間が行うというのは、何かが「落ちた」後に気がついて行動を起こしたということなので、それは良い方法とは言えません。

例えば、誰も知らないバックドアを用意しておいて、表側が攻撃されて何もできなくなっている時に回復できる環境を整えるという方法があります。

さらに、大規模な攻撃トラフィックが発生しているのを検知した時点で、何を行うかの手順もあらかじめ決めておく必要があります。 ホワイトリストなどによって、オリジンに対して通信が行える機器を限定することも挙げられます。 そういったベストプラクティスがあるお客様のサイトでは問題は発生していません。

Q: DoSが起きている時にTier1やISPなどの組織に通知することはありますか?

A: 通知はしますが、余り効果的ではなさそうです。 フィルタなどネットワーク側でできることは限られていますし、色々な協力関係を得るには時間がかかります。 そのため、他の組織に依頼するのは、攻撃を防ぎ、自衛の手段としては効果的とは言えない場合があります。

Q: ウィキリークスに関連する報道以後、「Anonymous(アノニマス)」を名乗る人々による DDoS が話題ですが、それによる影響はありますか?

A: まず言えることは、Anonymousは、ニュースとしてプレスで扱われることは多いですが、Anonymousによる攻撃の規模は小さいということです。

実際のところは、数Gbps程度で、しかも、攻撃の手法も高度ではありません。 ただ、オリジンを直接攻撃するぐらいはできるようです。 それ以上の技能はありませんでした。

逆に考えると、オリジンサーバーを守ることの難しさもこれでわかります。 数Gbps程度の攻撃ですら、サーバーを落とせてしまい、それで名前が売れてしまうのです。 その時、オリジン サーバーはフィルタリングを使っていましたし、大きなTier1も使ってました。 しかし防げませんでした。 2日間サイトがダウンしたままでした。

Q: Anonymousは、どうやってオリジンサーバーを知ったのですか?

A: 公知だったのだと思います。 様々なもので使っており、見ればわかる状態だったのでしょう。

Q: プライベート(Private)CDNに関してですが、プライベートCDNは、どれぐらい稼働しているのでしょうか?

A: プライベートCDNには複数の意味があり、勘違いされているのは我々のせいであるとも思うのですが、我々には、マネージド(Managed)CDNとプライベートCDN、そしてライセンスド(Licensed)CDNがあります。

これは、誰が使っていて、何のために使っていて、誰が所有しているかによって異なります。 今日、幾つかの事例がありますが、普通は特定のお客様専用の環境になります。 特定の顧客専用にインターネット上に設置しているCDNが、プライベートCDNです。 例えば政府内ネットワークなど、特定の場所に設置されて運用されるCDNが、マネージドCDNです。 国際的なキャリア内に設置するために、我々が作った上で設置を行い、その運用をキャリアに任せるという、ライセンスドCDNも現在考えています。 ただし、これはまだ開始されていません。

Q: 84,000台のAkamaiサーバーという数値には、プライベート、マネージド、ライセンスドの各CDN は含まれていますか?

A: プライベートは含まれていますが、マネージドは含まれていません。 ライセンスドはまだ開始されていません。 恐らくマネージドCDNは、インターネットではない別ネットワーク上で運用されているので、含まれていないはずです。

Q: それらのサーバーはどれぐらいの数があるのでしょうか?

A: さほど多くないと思います。 プライベートやマネージドCDNは、その原理上、特定のお客様のコンテンツだけを配信するので、数が必要ないからです。 実際の数は知りませんが、あったとしても数千程度でしょう。

Q: では、これらのCDNサーバーが現時点では全体の中で占める割合は、低いということですね

A: そうです。 しかし、長期的な視点で見た時、ライセンスドCDNは、大きな割合を占める可能性はあります。 国際的なキャリアがライセンスドCDNを世界的に使えば、その数は膨大になります。 その機材が彼らの機材になれば、必要に応じてもっとネットワークの奥深くに設置できるようになります。

Q: 関連してですが、Google Global Cacheというのが世界的に行われていますが、同様な方式で世界中にサーバーを設置し、今のAkamaiと競合するような事業者が登場すると思いますか?

A: Google社は、自前のプライベートなCDNを構築しています。 基本的にYouTube用ではありますが、Akamai程のスケールは現時点ではありません。 しかし、トラフィックは非常に大きいです。 Akamaiに続いて世界第二位のトラフィックを生成していると、ネットワーク パートナーからは知らされています。

今の所は、Google社が他社のコンテンツを配信するという動きはありません。 もちろん、多くのコンテンツを自分達のプラットフォームで配信できるようにして広告をつけられるようにしたいと努力はしていますが、大手メディアは、Google社を非常に警戒しています。 大手メディアは広告から収益を得ている訳ですが、Google社は広告をコントロールしようとしているからです。 それは大手メディアにとっては、脅威を感じることでしょう。

そのような背景もあり、大手メディアが全てのコンテンツを YouTube に掲載したいかどうかはよくわかりません。 大手メディアはスケールしつつ、自分達のブランドで配信出来る方法を模索していますが、そのような相談を受けます。

そして、我々は、協力しつつ配信が行えるプラットフォーム構築のお手伝いをしています。 そのため、私達は、Google社を競合相手とは見ていません。

Google社が私達の顧客であることもあります。 もちろん、それがもっと多く発生することは歓迎しています。 しかし、Google社は、自分達で YouTube を配信する能力を備えており、それが今後も洗練されていくものと思われます。

Q: Akamai社が大手メディアから嫌われないのは広告を主な収益としていないからですか?

A: はい。私達は大手メディアと競合しません。 ユーザーブランドという意味でも、私達は裏方です。 一般ユーザーは私達のことは知りません。 そのため、私達は大手メディアにとっては脅威ではなく友人(Friend)です。

Q:Akamai社を脅威と見るような企業はどのような企業なのでしょうか?

A: (笑)。わかりません。 Akamai に対して脅威を感じている会社があるかどうかはわかりません。 メディアは私達を利用しますし、コンテンツ事業者はお客様です。 そして、ネットワークは、パートナーです。

私達は、ネットワーク事業者のコストを抑えることを行い、エンドユーザーのパフォーマンスを向上させます。 私達のエコシステムで、大きなプレイヤーはその二者ですが、どちらに対しても脅威を感じさせていないと思われます。

そのため、私達を脅威と感じる組織があるとは思えません。

Q: では、誰が怖いですか?

A: 自分達です。 次のステージに自分達の会社を育てられるかというのが大きな課題です。 この10年で50億ドル企業へと成長することを目標として掲げています。

それは会社が成長しなくてはならないということですし、企業組織も変化しなければならないでしょう。 イノベーションを起こせる体制を保ちながら、それができるようにする必要があります。 そのため、マーケットに対応して機敏に行動を続けられるようにしなければなりません。 そして、非常に高いレベルの従業員を保つことも重要です。

今、正に私達は中間にいます。 起業している会社を見て、「動きが凄く早い!」と思いながら、大きな会社を見て「動きが凄く遅い!」と思います。 その両方の世界から、良い部分だけを残そうと日々もがいています。

非常に大きなパートナーとの協業も開始し、成功も収めて収めています。 例えば、Apple社とは非常に良い関係を保てています。 IBM社は私達にとって最大のリセラーです。

色々なことが徐々に良くなっていますが、これらは私達の成長には非常に大事です。 このように、誰かが私達の事業を潰しに来るというよりは、自分達が正しいことを続けられるかどうかという視点が強くあります。

最後に(取材者から)

今回、Akamai Technologies社の創設者の一人であるTom Leighton教授の来日に合わせて、単独でインタビューに伺う時間を頂くことができ、これまで色々と疑問に思っていたことを含めて、お話を伺うことが出来ました。

貴重なお時間を頂きありがとうございました。 この場を借りて、お礼を申し上げたいと思います。

p.s. 英語を中心とした取材が初めての経験だったことなどから、結構緊張しました。 こういうのも場数とか経験なんでしょうね。。。

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