世界最大のレジストラGo Daddyが大炎上、SOPA支持表明で

2011/12/26-1

12月22日に、世界最大のレジストラであるGo DaddyがSOPAへの支持を公式に表明して炎上状態に陥りました。 当初、「抗議活動は、あるようだが事業への影響は全く無い」と語っていましたが、わずか1日でSOPAへの支持撤回を表明しなければならない状態へと追い込まれてしまったようです。

抗議行動としてのドメイン移管は現在も世界中で続いているようです。 日本でも、本件に関連して「ドメインを移した」と言っている人が複数いました。 米国での法案に対する抗議行動が世界中で行われているというのがインターネット的と言えばインターネット的かも知れないと思うと同時に、やっぱりインターネットの中心は米国なんだなぁと再認識させられる事件でもあります。

炎上の経緯

米国下院司法委員会(House Judiciary Committee)で公開されているSOPA支持者リストが話題となり、その中にGo Daddyの名前があったことから炎上が開始しました。

SOPA支持者リストの多くは音楽、映像、出版に関連する権利者団体で構成されているため、リストに掲載された数少ないIT関連の事業者である世界最大のレジストラGo Daddyが目立っていました。

恐らく多くの人々がGo Daddyに問い合わせたものと思われますが、支持者リストが話題になった次の日にGo Daddyから「SOPAをサポートする」という公式発表が行われ、炎上が一気に拡大しました。

その後、さらに炎上を拡大させた原因の一つと思われるのが、Ars Technicaからの問い合わせに対して以下のように答えたことです。

Ars Technica: GoDaddy Faces boycott over SOPA support

"Go Daddy has received some emails that appear to stem from the boycott prompt, but we have not seen any impact to our business. We understand there are many differing opinions on the SOPA regulations."

(訳)
ボイコット運動に由来すると思われるメールがGo Daddy宛に送られてきています。 しかし、私達のビジネスに対する影響は見えません。 SOPAに対して我々とは異なる意見があることは承知しています。

Go Daddyによる公式発表の前からあるのかそれとも公式発表後に出来たのかは不明ですが、「GoDaddyBoycott.org」というサイトが用意されたりもして、Go Daddyからドメイン管理を移転する動きが広がっていきました。

さらに、12月29日を「Leave GoDaddy Day」とする運動も開始されました。 この運動はRedditが起源のようです。

ネットメディア上での表現も過激化し、Go Daddy CEOが象狩りをしたことを公表して炎上した事件と一緒に紹介されたりもしていました。

この動きは米国だけではなく、世界中に広がっているように見えます。 Twitter検索をすると世界各国の言語でGo Daddyの利用停止を表明するユーザの声を発見できます。 日本語で書かれたTweetもありました(日本国内のネットオペレータML上でGo Daddyの件が流れたりもしていました)。

アノニマス

Go Daddyが炎上しはじめてすぐに、アノニマスを名乗るユーザからのビデオ投稿がされていました。

こういったテーマでは登場しがちではありますが、やっぱり登場したという感じです。

Go DaddyがSOPA支持撤回

炎上によって、SOPA支持の公式見解発表から1日とたたずに支持撤回を表明するところまでGo Daddyが追い込まれてしまいました。

しかし、支持撤回に関してTechCrunchに以下のように書かれてしまっています。

TechCrunch: GoDaddy No Longer Supports SOPA
While it’s nice that they changed their stance (publicly, at least), you’ve got to ask yourself: do you want to continue throwing money at a company blind enough to support SOPA in the first place?

彼らがスタンスを(少なくとも公的には)変えたのは良いことだけど、あなたは自問する必要がある:そもそもSOPAを支持するような盲目な企業にお金を支払い続けるの?

さらに、その後のインタビューに対しての歯切れが悪い回答をしていることから「実際は撤回しているわけではない」という判断をしている人々も多く、不買運動は継続されているようです。

ただ、TwitterでのGo Daddyに対する批判的なTweetの数がその後減少したり、ネットメディアによる記事の過激化が多少落ち着いたようにも思えるので、SOPAへの支持撤回が全く無意味だったわけではなく、一定の効果はあるようにも思えます。

Go DaddyがSOPA支持者リストから外された

12月26日現在、Go Daddyの名前が支持者リストから外されています。

今回の騒動以降、Go Daddy以外の様々な組織名が支持者リストから外されました。 Techdirtの記事によると、そもそも支持を表明しているわけでもないのに支持者リストに掲載されてしまった組織もあるようです。

「Go Daddyが二日間で2万ドメイン分の契約を失った!」という記事

The Next Webが、Go Daddyは5日で7万2千ドメインの管理契約を失ったと報じました。 The Next WebがソースとしているのはDailyChangesの情報です。

The Next Webでは、以下の数のドメイン管理契約がGo Daddyから流出したとしています。

月曜日 19日 8,800
火曜日 20日 13,000
水曜日 21日 14,500
木曜日 22日 15,000 (SOPA支持発表)
金曜日 23日 21,054

しかし、この記事は間違っているという意見もあります。

DNSでのNSに関するレコードだけを見ても、ドメイン移管が実際に行われたかどうかを外部から判断することは難しく、whoisを見ないとレジストラ情報がわからないと思うので、7万2千件とか2万1千件という話題はあまり信憑性がなさそうです。 そもそも、ドメイン移管はWeb上でボタンをクリックした瞬間に終わるものでもないですし、炎上によってクリックされた多数のドメイン移管申請が受け入れ側の事業者での対応を含めて24時間以内に全て処理されるとはあまり思えません。

WikipediaがGo Daddy利用終了へ

WikipediaもGo Daddyを利用していたことから、多くのネットユーザから「WikipediaはGo Daddy利用をやめるべき。やめたら寄付する」というような意見が投げかけられていました。

Jimmy Wales氏は、12月24日に、Wikipedia及びWikiaがGo Daddyの利用をやめるとTwitter上で表明しています。

Go Daddyがターゲットになった理由を推測

今回、SOPAへの抗議のためにGo Daddyが不買運動のターゲットになりましたが、これは恐らくいくつかの理由があると思われます。 個人的な感想としては、Go Daddyは「不買運動を行いやすい対象」であったことも、今回の炎上要因の一つであったかも知れないというのが感想です。

  • IT業界でありつつもSOPAに賛成したので狙われた
  • SOPAに反対しがちな人々が良く利用している会社だった
  • Go Daddyを好きではない人が炎上以前から一定数いた(広告が多いことや象狩り炎上を理由にあげている人がTwitter上でいました)
  • 契約を更新することだけを考えるのであればドメイン移管は比較的容易に行えることもあり、反SOPA派が即座に行動することが可能だった(ケーブルテレビ会社だけどIT企業でもあるComcastだと他社への乗り換えは面倒)
  • NFL(National Football League)やMLB(Major League Baseball)や音楽会社や映画会社など、その他のSOPA支持組織に対して不買運動を効果的に展開するのが難しい
  • 「商品を買わない」という見えにくい不買運動と比べると、既に契約している人が他社へと乗り換えるドメイン移管は直接的で見えやすい

Twitterを見る限り、現時点でもGo Daddyへの批判は続いていますが、こういうときに「狙いやすいところに批判が行く」というのは万国共通なのかも知れないと今回の炎上を見て思いました。

あと、RedditやSlashdotなどが日本でいうところの2ちゃんねる的な位置づけっぽい(ただし2ちゃんねるほどカバーしているジャンルが広くはない)という印象を今回の炎上で再認識しました。

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