Amazon Kindle Storeで電子出版してみた

   このエントリをはてなブックマークに登録    2011/1/14-1

Amazon Kindle Storeで英語文章の電子出版をしてみました。 内容としては、日本語で書いた「人生の全てはTCP/IPに学んだ」というブログ記事を英訳したものであり、非常に短いものです。

価格は99セント、1ドル82円だと思うと約82円です(日本から買う場合は+2ドルの価格になります)。 本当は無料でもよかったのですがAmazon DTPを使う場合、0.99ドルが最安値でした。

ブログ記事単体に対して、この価格が高いと思うか安いと思うかは賛否両論がありそうです。 よっちゃんいかが何個買えるかとか、チロルチョコだといくつかとか、いやいやスタバのコーヒーの何分の一だよとか、何と比較するかで感想も変わるでしょう。

電子出版の作業自体は非常に簡単でした。 Amazon DTPでアカウントを取得したうえでPDFをアップロードし、各種必要事項を入力していくだけです。 アップロード後、審査を経て二日ぐらいで公開されます。 公開されると、amazon.comなどで検索結果に反映されるようになります。 驚くほどあっさりと自分の電子書籍が検索結果に載ってしまいます。

で、売り上げは?

さて、出すだけならば非常に簡単ですが、実際にどれだけ売れるのでしょうか? 電子出版は出すのが目的ではなく、売るのが目的です。 売れなければ誰にも読まれません。

今のところ出してから1週間ぐらいですが、結果は惨憺たるもので売り上げはゼロです。

ただ、厳密に言うと3つ売れてはいます。 私が実験用に自分のKindleで購入したものと、知人二人が試しにKindleで購入したものです。 私のTwitterでの発言を見て「どう見えるのだろう?」という実験のための購入のようです。 それ以外は、全く売れてません。

ITmedia: AmazonのKindle、2010年の販売台数は800万超えか」という感じで潜在顧客が増えているという話はありますが、英語で書かれたものを世界中(主にアメリカとイギリス向け)に向けて公開したとしても、今回の電子書籍のために80円を払おうと思った人は誰もいないということだろうと思います。

ここら辺は、去年の「TechCrunch: App Storeの過剰ブームに現実をつきつける」と同じ話なのだろうと思います。

「売る」ことがいかに大変か

電子書籍大国アメリカ

電子書籍大国アメリカ」という本があります。 アメリカでの現状を赤裸々に語っている非常に面白い本です。

日本での各種「ブーム」と「流行熱」が過剰になり過ぎて、その後にバックラッシュをもたらすという話から入っているのが面白いです。 例としてオイルショックのときのトイレットペーパーや、ナタデココブームの時に原産国のフィリピンで新しい工場が出来たけどブームが去ってしまった話が出ています。 その後、アメリカでの電子書籍が一気に盛り上がったのではなく、徐々に増えているという話や、実際には紙の1/10ぐらいしか売れない話が書いてあります。

さらに、5章「電子書籍で70%のおいしい印税生活が実現するのか?」で、以下のように述べられています。

どこの出版社にも見向きもされず、電子書籍として自費出版したところ、飛ぶように売れて、最初は断られた出版社から紙の本で出す契約にこぎ着けた、自分で全て管理して、出版社を使わずに印税だけで何千ドルも稼いだ、などという話がニュースになって伝わってくるが、滅多に起こらないからこそニュースなのだ。
これは、いわば宝くじが当たるようなものなのだ。誰かが、どこかで大金を手にしているのは確かなのだが、冷静になって確率を計算してみると、とても当たりそうにないほど低い数字に愕然とする。
前述の主婦の本も、売れたといっても1冊2ドルに満たない値段がついており、紙の本の出版が決まってようやくスタート地点に立てた、という筋書きだ。実際にはほとんどの自費出版本は"外れクジ"となって、相変わらずインターネットのスラッシュ・パイルに埋もれ続けることになる。

ソーシャルメディアなどが発達して、クチコミなどで売れる本がある程度決まる場合もある今日この頃ですが、「話題」というのは書籍の内容でありつつも「誰が書いたか」や、どういう立場で書いたか、などによってクチコミが発生するかどうかも大きく変わります。 そのような側面を含めて、「電子書籍を売る」というのは「紙の書籍を売る」のとは全く異なるノウハウがあるのだろうと思いました。

出版社を通さないからチャンスが広がってる?

電子出版の話になると、出版社を通して本を出すことが恐ろしく困難だと信じている人々が非常に多い気がしています。

通信事業者系の方々と飲みに行ったりしたときに「今、ブログで広告収入が全然入らなくて実質的にそれで生活が無理でも、電子出版が普通になれば、そっちで生活できるようになるんじゃない?」と普通に言われたことが何度もあります。 同時に「電子出版が普通になれば書くことの敷居は下がるよね?」とも言われます。

でも、個人的な感想としては、15年前と比べたら「紙媒体で出版すること」に対してのハードルは非常に下がっている気がします。 匿名だろうが実名だろうが、固定したIDで色々書いていて、それが認めてもらえれば書くチャンスは色々転がってます。 私も、全く知らない相手に飛び込み営業で記事執筆提案をしたことがありますが、それで実際に記事を書けたこともあります。

で、出版社などを通じて記事を書くことが何故重要かというと、売るチャンネルであったり、その記事に価値があるかどうかを客観的に見てくれるということなのだろうと最近思うようになりました。 本を出す前に事前に内容に関して相談するときに「それはマニアック過ぎできっと売れない」という突っ込みが来ることがあり、徐々に内容を決めて行きます。 全く同じ話を書いたとしても「誰が書くか」で売り上げも大きく変わりますし、それを含めての判断なのでしょう。

ただ、出版社などに持ち込みを行う前段階としてネット上などで「自分を知ってもらう」とか「自分を認めてもらう」には、それなりの時間をかけてコツコツと文章を公開し続けなければなりません。 そういった意味で、「時間をかけて努力をすれば出版は難しくない」という話なので、「時間をかけて」の部分を単純に「無理」と考えてしまう場合には難しいのかも知れないとは思います。

全てをすっ飛ばした電子出版も可能となった今ですが、ある程度安定して数が売れるようにするには、出版社を通して紙の書籍を出すのと同じぐらいのハードルが依然として存在してますし、誰でも出せるということによって逆に競争が熾烈になっています。

個人で電子出版を行ったことで大ヒットを出す人も登場していますが、それはやはり稀な事例なのでしょう。 少なくとも、ヒットした人も、いきなりヒットしたわけではなく、ヒットしたものを造り上げるためにある程度の時間をかけて人知れずコツコツと努力したのだろうと推測しています。

恐らく、今、一番採算が取れるのがメルマガ

堀江貴文氏が今年の始めに「あけましておめでとうございます!電子書籍の本命はやっぱりメルマガだよ。」という記事をブログで書いています。

その中で、電子書籍が現時点では実際にはさほど売れるわけではないことを示しつつ、以下のように述べられています。

ま、だけど皆が勘違いしてくれてるから、私は上手く行くんだけどね。。。だって実質一人半くらいの稼働で月840円のメルマガの読者が一万人超えてるんだよ。。。これからそういう個人の時代になると思うんですよね。みんながネット使うようになれば動画コンテンツだってながせるし。実際に流してるし。それをできるだけ少人数でやるんです。

恐らく、これはその通りだと思います。

メルマガで週1回出す文量を1個210円の電子書籍として販売しても、毎回1万冊も売れることは無さそうです。 「毎回購入を決定する」ということの敷居の高さがわかります。

じゃあ、電子書籍やらないの?

だからといって、電子書籍に全く取り組まないわけではありません。 今回、私が実験的にAmazon DTPを使ってみたのは、次にやろうとしていることの実験のためです。 今後は、ISBNを取得したうえでSmashwordsなどを使うのもやってみようと思っています。

自分で手を動かして色々とやってみて現実を実感をすることは非常に大事だというのが、個人的な考えです。

ということで、電子書籍にワクワクしている方々は自分で一度作ってみることをお勧めします。 特に就職活動で「電子書籍」とか発言しようと思っている学生は。 やってみて初めてわかることって色々あると思います。

追記

Amazon Kindle Storeで部門7位に!

追記2

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