世界初の100GbE-LR4運用@Interop

2010/6/8-1

最近、各所でチラホラと話題に上っている100ギガビットイーサネット(以降 100GbE)ですが、 明日から展示会が開催されるInterop Tokyo 2010で、その100GbEの実運用が行われています。 今まで、展示会や実験室などで100GbEの動作確認は各所で行われてきましたが、長距離伝送サービスを視野に入れた実運用環境を含めたデモは世界初です。

100GbE

2002年頃に製品として登場し始めた10GbEは、現在バックボーンネットワークで一般的に利用される通信インターフェースとしては最速です。 10GbEを複数束ねるリンクアグリーゲーション機能を活用して、仮想的に40Gbpsの通信インターフェースとする運用は様々な場所で使われていますが、単一の通信インターフェースで10GbEよりも広帯域の通信インターフェースはありませんでした。

今回のInterop Tokyo 2010のShowNetでの運用が世界初であることからもわかるように、100GbEは「まだこれから」の技術と言えます。 実際には、100GbE規格の標準化は完了しておらず、まだ製品化前の状態です。 100GbEの標準化が開始したのは2005年ですが、2010年6月(今月)やっと標準化が完了すると言われています。

このように、100GbEの規格であるIEEE 802.3baが、まだ標準化完了前のP802.3baということもあって、100GbEによる実トラフィックを活用した実運用は世界初という形になっています。

Interop ShowNetでの動作環境

ShowNetで行われている100GbE-LR4運用は、幕張と大手町の間で接続されています。 間の伝送装置としてはInfinera DTNが利用されています。

ShowNetで行われた世界初の100GbE-LR4運用は、展示としては2カ所で行われています。 一つはShowNet NOCブースのラック内で、もう一つはNTTコミュニケーションズブース内です。

ShowNet NOCブースにCRS-3が設置されており、CRS-3からNTTコミュニケーションズブースのInfinera DTNまで100GbEで接続され、Infinera DTNが幕張から大手町への伝送を担っています。

NOCラック

NOCラックで100GbEが展示されているのは、「エクスターナル・オプティカルネットワークゾーン」と書かれた場所の一番右のラックです。


NOCラック

この中の「CRS-1」と書かれたCRS-3が100GbEを会場内で接続しています。 CRS-1は、ルーティングプロセッサをCRS-3のものと変更することで、CRS-3へとアップグレード可能です。 幕張に置かれたCRS-3は、CRS-1にCRS-3のルーティングプロセッサを挿したものです。

CRS-3はバックプレーン容量が140Gbpsであることが大きな特徴ですが、100GbEをワイヤースピードで運用するためには、バックプレーンが40GbpsであるCRS-1ではバックプレーン容量が足りないため、ShowNetではCRS-3が利用されています。 (余談ですがCRS-2は、IPv5のように欠番なので、CRS-1の次がCRS-3となります)


「CRS-1」と書いてあるCRS-3

このCRS-3についている銀色のカードが注目すべき部分です。 まだ開発中のプロトタイプということで、表面が銀色のままになっています。


CRS-3の銀色のカードに注目

NTTコミュニケーションズブース

幕張から大手町への対外線は、ブース番号5M26のNTTコミュニケーションズブースから出ています。 一見、普通のラック展示内にInfinera DTNが設置されているようにも見えますが、実は100Gbps対外線です。


NTTコミュニケーションズブースに設置された100Gbps対外線

このInfinera DTNのモジュールで一つだけ「TAM-1-100GE」と書いてあるものがあります。 これがShowNet NOCブースからの100GbEです。


100GbEモジュール

ShowNetでは、Infinera DTNがPOI(Point of interface,相互接続点)という扱いなのかも知れません。

この100GbEは、将来サービスとして提供されるであろう局内での100GbE接続と同等ということになります。 NTTコミュニケーションズの100GbEサービスを利用する顧客は、局内で100GbEインターフェースを使用して接続する形になりそうです。

この100GbEは、Infinera DTNのDWDMモジュールから10Gbps 10波として伝送されます。 100GbEは、シングルモードファイバ内に25Gbps 4波として伝送されるので、今回のShowNetでの100GbEまわりを光の波という視点で見ると以下のようになります。

ShowNet NOCブースからNTTコミュニケーションズブースまで100GbEによる25Gbps 4波、それを受け取ったNTTコミュニケーションズブースInfinera DTNは、10Gbps 10波としてDWDMモジュールを使って大手町へと伝送しています。

上記図ではNOCからNTTコミュニケーションズブースへの送信方向のみ図示していますが、 実際は送信側と受信側で1芯ずつ別々に利用するので、上記図とは反対方向に同様の波数が利用されています。

Ixiaによるホットステージテスト

100GbEにトラフィックを流すテストは、ホットステージ中に行われました。 このテストのためのトラフィックは、Ixia Optixia XM2 IP Performance Testerによって生成されました。

ホットステージでは、大手町と幕張にIxia Optixia XM2が設置されました。 それぞれのIxia Optixia XM2内に仮想的なASを構築しつつ、BGPで相互が接続し、相互の仮想的なAS間で100Gbpsのトラフィックが流れました。

Ixia Optixia XM2は、GPSユニットとの連携が可能であり、その機能を利用して大手町と幕張のIxia Optixia XM2同士のクロックは同期された状態に保たれていました。 このGPSユニット(AFD1, Auxiliary Function Device 1)を接続することで、幕張と大手町の間の100Gbps回線のスループットを測定するだけではなく、回線遅延まで測定できたそうです。 なお、AFD1とOptixia XM2は、シンクケーブルもしくはUSBケーブルで接続可能です。

このように、限りなく実トラフィックに近い状態のデータ転送によるスループット測定とともに、遅延に関するデータまで測定することで、100Gbps回線検証が行われました。


Ixia optixia XM2 IP Performance Tester

Ixiaブースは4ホールのShowNet NOCブースの隣です。 Ixia optixia XM2による100Gbps回線テストは、ホットステージ中に行われた物であり、展示会本番中には機器が直接接続されているわけではありません。 実際にホットステージで計測に利用された機器は、イクシアコミュニケーションズ(株)のブース(4Z04)にて展示されています。


Ixiaブース

Ixiaのテスタは、仮想的にASを構築して実トラフィックが実際に存在しているように振る舞ったりできる非常に面白い機器です。 テスタなのにBGPが話せたり、AS内に複数の機器を仮想的に存在させたり、仮想的なAS内でOSPFを使って経路制御したりと凄いテスタです。

一昨年、初めて知ったとき結構衝撃でした。

100GbEサービスの開始時期を推測

動画の流行もあり、インターネットを流れるトラフィックは増加し続けています。 この傾向は、今後も続くと思われるため、様々な通信事業者が現在利用している10GbEから100GbEへと乗り換えて行くものと思われます。

では、10GbEから100GbEへと移行が開始される時期は、いつ頃になるのでしょうか? 今回、世界初の100GbE実運用が行われましたが、実際にサービスとして開始されて、100GbEが日本国内で普及し始めるのは、2011年(来年)ぐらいからになりそうです。

ShowNetでの構成でもわかるように、今回のInfinera DTNが担っている伝送を行う部分は早期に サービスとして実現可能であるように見えます。 しかし、問題は100GbEの通信インターフェースです。 今回のShowNet実運用用に100GbEインターフェースを確保するのも、非常に大変であったという噂をチラホラききます。

規格の標準化決定が今月であり、まだ完了していないということで、物理的な100GbEインターフェースカードの量産体制はできていません。 最終的な規格の詳細が決定し、量産体制が確立してから、製品として100GbEインターフェースが登場するには、恐らく半年ぐらいかかるものと推測されます。

そうなると、恐らく今年中に様々な事業者が接続用に100GbEを揃えるのは難しそうです。 このような100GbEの供給状況もあり、100GbEによるサービスがNTTコミュニケーションズのサービスラインナップに登場するのは、恐らく2011年中なのではないかと、勝手に推測してみました。

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