トップレベルドメイン「.canon」と「.日本」

2010/3/18-1

キヤノンが新トップレベルドメイン名「.canon」の取得活動を開始 - キヤノン : ニュースリリース」というニュースがありました。 プレスリリースには書いていませんが、ICANNでの審査費用は18万5千ドル(1ドル90円と考えると1665万円)です。

このニュースに関連して、ドメインの世界を取り巻く全体的な流れを含めて調べてみました。

ICANN

「.canon」取得への動きは、キヤノンが単独で行っているわけではありません。

IPアドレスやAS番号などの割り当てや、トップレベルドメインに関するポリシー策定を行う組織であるICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)での議論や方針の流れに応じた動きとして、キヤノンがgTLDを取得しに行っているという構図です。

ICANNでは、過去2回gTLD(分野別トップレベルドメイン)の種類増加を承認しています。 ICANNとgTLDの関係を以下にリストします。

ICANN設立以前からのgTLD.com .edu .mil .gov .org .net .int
2000年に追加が承認されたgTLD.biz .info .name .pro .museum .aero .coop
2003年に追加が承認されたgTLD
(申請期間は2004年)
.jobs .travel .mobi .cat .asia .tel

3回目のgTLD追加は、過去2回のように個別のgTLDを発表するのではなく、申請者が任意のgTLDを申請できるようにするという方向性でした。 これにより、過去2回とは異なり、募集期間が区切られなくなり、gTLD数の上限も撤廃されました。 申し込みに必要な条件が従来に比べて大幅に緩和されたという特徴もあります。

このようなgTLD導入プログラムの勧告がICANNに提出されたのが2007年9月で、ICANN理事会にて承認されたのが2008年6月です。 その後、「新たなgTLD応募者用ガイドブック草案(Draft Applicant Guidebook、現在はバージョン3)」が公開/改訂されていきました。

このgTLD導入プログラムの申請開始は今年中に行われる予定のようです。 gTLDにも、意義申し立てや紛争処理などの仕組みはありますが、基本的にクレームが発生した後の対応となります。 ドメインの世界は、昔から占有や紛らわしいドメイン取得が問題となり続けていることもあり、他者によるドメイン取得への防衛策としてのドメイン取得が良く行われます。 世界的なブランドなどに対してのgTLD取得基準は長い間議論されてきましたが、恐らくgTLD申し込み開始とともに防衛的にトップレベルドメイン取得に動く組織は色々ありそうです。

ICANNが米国政府(米商務省)から独立したと発表したのが2009年9月末ですが、あらためて今回のgTLD関連ニュースを調べてみると、最近ICANNまわりの動きが多い気がします。 (参考:ICANN : ICANN CEO Talks About the New Affirmation of Commitments)

gTLD運用費用

gTLDを取得した後にも、運用のために各種費用がかかります。

四半期ごとに6250米ドルの固定手数料および、その後のドメイン登録および更新ごとに発生する取引手数料0.20米ドルの2種類の手数料がかかります。 さらに、そのTLDでの登録数が5万件を超えた場合、四半期毎に0.25米ドルを支払う必要があります。

申請手続き、審査基準、運用費用などに関しては「ICANN : Applicant Guidebook」をご覧下さい。

.shop

積極的にgTLDを取得するために活動をしている組織もあります。 たとえば、.shop gTLD取得を目指した活動をしているGMOドメインレジストリ株式会社です。

.shop取得のためのサイトとして「dotshop.org」があり、前回のナイロビICANNでのdotshopパーティの様子などが掲載されています。

「.日本」

gTLDとともに2010年に開始されるトップレベルドメインとして、IDN ccTLD(多国文字による国別トップレベルドメイン)があります。

ICANNのIDN ccTLDの動きに関連して、「総務省 情報通信審議会 情報通信政策部会 インターネット基盤委員会 地理的名称に関連するトップレベルドメイン検討ワーキンググループ」では「.日本」導入に関する検討が行われてきました。

そこでの議論を経て「21世紀におけるインターネット政策の在り方〜新たなトップレベルドメイン名の導入に向けて〜(案)に対する意見募集」が2009年(平成21年)4月28日に公表され、その後同年7月31日に「21世紀におけるインターネット政策の在り方 新たなトップレベルドメイン名の導入に向けて (案)に対する意見募集の結果」が公開されました。

ここで決まった事は、"「.日本」の導入" と "我が国の地理的名称に関連するトップレベルドメインの導入"などです。

総務省によって公開されたPDFには、たとえば以下のように「.日本」というIDN ccTLDを日本として申請することに関して以下のように書かれています。

2008年10月にICANNから示された「多国文字による国別トップレベルドメインの実装計 画」ドラフト案(2009年2月改訂、同年6月再改訂)では、多国文字による国別トップレ ベルドメインの文字列は「国連の「地理学的名称の標準化のための技術参照マニュアルを基 本として」、「『国か領土の名前』又は『その一部若しくはその縮小型』に限られる」とされ ている。また、「1つの公用語あたり、1つの文字列に限られる」とされている。

日本の場合、漢字、平仮名、カタカナ、アルファベットが混在したスクリプト(文字集合) を利用しており、また、名称としては「日本」、「日本国」の二つが、「日本」の読みとして は、「にほん」、「にっぽん」の二つが基準を満たすこととなる。

このため、基本的には下記の表の10種類の文字列の中から1つを選定することとなるが、 我が国の新たな国別トップレベルドメインの名称(文字列)は、

(1) 平仮名やカタカナを用いた場合には、例えば「にほん」と「にっぽん」で混同するお それがあること

(2) 覚えやすく短い漢字の方がドメイン名に適していること(「日」も「本」も小学校1 年生が学習する平易な漢字)

(3) 『.日本国』よりも『.日本』の方がなじみやすいこと

等から、「.日本」とすることが適当である。

その他、業務運営の基本ルールや事業者選定に関しても述べられていますが、基本的に大枠を言及した形であり、具体的な内容はこれから決まるという状態だと思われます。

なお、現在「.日本」に関してパブコメ募集がおこなれています。 「JPNIC : JPNICによる、IDN ccTLD「.日本」に関するご意見募集について (19日、明日まで)」と「日本インターネットドメイン名協議会 : 選定基準(案)に対する意見募集 (19日、明日まで)」です。

「.広島」などの地域とgTLD

総務省のワーキンググループの議論の中で、地域名とgTLDに関する議論も登場しています。 たとえば、議事録に以下のような文章があります。

  • (第1回,検討事項)例えば、「.nippon」や「.大和」もgTLDとして否定はされていないが、各国からccTLDとgTLDとの区別がつきにくいとの意見が出ている。
  • (第1回,検討事項)gTLD新規申請の際に政府や自治体からの「反対がないこと」が必要となるが、申請が開始された後に異議申し立て等で介入することは可能なのか。原理上重要な問題だと思われるため、このように後々の対応に窮する問題は十分議論されたい。たまたま日本地名と、海外の商品名が重なった場合どうすべきかといった問題も考えないといけない。
  • (第1回,検討事項)「.広島」のようなドメインを申請する場合、広島県、広島市のどちらの同意が必要なのか。→ その場合は広島県、広島市の両方の同意が必要と考えている。
  • (第1回,検討事項)現在は一般に使用されていない古い地名、山や川の名称についても利用可能か。→ 個別具体的な事例については申請が出てきてからの対処になる。
  • (第1回)海外では地理的名称に関連したgTLDについてロイヤリティを取っている例もあり、日本の地名についても、観光、地域振興も視野に、ある程度オープンにすることも議論すべきである。
  • (第1回)日本では地名として認識されているが、外国では商品名の可能性もある。そうした場合、商品名として登録申請されるおそれがある。 そうした申請に対し、誰がチェックすることとなるか。 全国1800の自治体にチェック作業を行わせることは現実的ではなく、何らかの支援策が必要。
  • (第1回)台湾では高級マンションの代名詞として「軽井沢」という単語が用いられており、こうしたことで地理的名称のブランドを高めることもある。当然、デメリットも考えられるが、積極的な議論を進めてもらいたい。
  • (第2回)インターネットを利用する際にURLを直接入力する利用者は、日本では利用者全体の2割以下、世界全体だと7割程度となっている。また、ドメイン名の取得率は米国で数十%という比率に対し、日本は3%となっている。
  • (第2回)歴史的地名や旧国名(旧藩時代の名称)、例えば「.江戸」というドメインについて、誰が登録者になれるかという議論は難しい。地名学ではいろんな議論が存在する。市町村合併により消えた地名もあるだろうし、消えたものが復活するということもあるかもしれない。地理的空間の歴史性も十分に考えていく必要がある。
  • (第2回)ニューヨークについては「.nyc」、ベルリンについては「.berlin」を新たに作ろうとするグループが活動している。例えば、ベルリンについては、世界に複数箇所の同じ地名があるため、それらの連携を図る動きもあり、このほか、表に出ている動きとして、おそらく10カ所以上はあると思う。
  • (第3回)コミュニティベースのgTLDとは地理的名称だけでなく、たとえば大学の同窓会といったものも含まれ、それら以外がオープンベースのgTLDとされている。
  • (第3回)地理的名称は個人名と重なる可能性があり、それぞれから申請があった場合、どちらがドメインを取得できるかという判断はICANNが行う。
  • (第3回)経済的な負担の観点も考えないといけないのは確かだが、自治体側で審査を適切に行うために必要な体制についても考える必要がある。
  • (第3回)最近の行政は一件ごとに説明責任を問われる。我々の自治体名を冠したドメイン名の創設を期待しているが、「支持」等の相談・申請があった場合、財務面や技術面から見て問題がないかをチェックできるか、自信がない。事前に総務省の方で審査していただければ、安心できる。

実際に新しいgTLDが開始してみないと、どうなるのかはわからないのでしょうが、この問題はどうなるのでしょうか。。。

最後に

お金がかかりますが、大企業などによるgTLD取得は今後増えるのだろうと思います。 今回のICANNの変更によって、今までのインターネットの仕組みが変わって行きそうです。 財力があれば、自らのドメインのためにレジストラになれる世界になったようです。

インターネットは「フラット化」している気がする今日この頃です。 今回の件とは関係ありませんが、GoogleやAkamaiなど、世界中のASと接続するコンテンツ界の巨人が登場して、従来のTier1を頂点とするインターネットそのものの形が変わってますし。 gTLDの大量発生によってDNSの階層構造も変わりそうですし。

「集中」と「フラット化」が進んでますね。

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