日本におけるブロッキング

   このエントリをはてなブックマークに登録    2010/12/13-1

ブロッキング、ネット検閲、傍受という文脈で真っ先に思い浮かべるのは中国の金盾でしょうが、最近のインターネットでは、中国以外でもそれらが徐々に増加しています。 日本も例外ではなく、来年4月から児童ポルノを対象としてISPによるブロッキングが行われる予定であると思われます。 来年から開始すると言われているブロッキングですが、「ISPによる自主的な取り組み」というのが大きなポイントの一つです。

児童ポルノを取り締まるということそのものは正しいだと思いますし、通信の秘密とブロッキングに関して今まで非常に時間をかけて検討がなされてきたこともわかります。 しかし、技術的な視点で言えば、今まで存在していなかったブロッキングの仕組みがISPに入ることになり、日本のインターネットに大きな変化が発生すると言えます。

この記事は、以下のような構成で書いています。

  • フィルタリングとブロッキングの違い
  • ISPによるブロッキングへの流れ
  • 今年に入ってからの動き
  • 一部ISPが来年4月から運用開始へ
  • オーバーブロッキングの問題
  • 児童ポルノブロッキングの後に続きそうな話を妄想
  • その他、色々
  • 最後に

フィルタリングとブロッキングの違い

この話題では、フィルタリングとブロッキングの違いを理解することが重要です。

フィルタリングは、ユーザの同意を得たうえで一定のサイトやURLに対するアクセスを遮断するものです。 一方、ブロッキングは、ユーザ側の同意を得ずに一定のサイトやURLに対するアクセスを強制的に遮断します。

このように、ユーザ側の同意を得ているものをフィルタリング、得ずに強制的に行うものがブロッキングと呼ばれています。

ISPによるブロッキングへの流れ

日本におけるブロッキングは、突然湧いて出た話ではありません。 インターネットインフラ屋界隈では今年に入ってから大きく話題になっていますが、流れとしてはそれ以前から続いています。

話題の中心は基本的にWebです。 議論の大まかな流れとしては、携帯電話フィルタリングから始まり、PCを含むインターネットへのフィルタリング及びブロッキングへと向かっています。

携帯電話フィルタリング(2005〜2007)

2005年6月に、政府の「IT安心会議」が「インターネットにおける違法・有害情報対策について(PDF)」を公表しました。 そこでは、集団自殺志願者募集サイトなどの違法・有害情報を念頭に、フィルタリングソフトの普及啓蒙、フィルタリング技術の開発、プロバイダ等による自主規制の支援に関して述べられています。

2006年9月に警察庁の「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」が「携帯電話がもたらす弊害から子どもを守るために-これまでの審議から-(PDF)」を公表しました。 そこでは、携帯電話による子どもへの弊害が述べられています。 それらの弊害に対処するために、携帯電話でのフィルタリングが重要であるとしています。

2006年11月に総務大臣から携帯電話事業者3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル)及び業界団体である電気通信事業者協会に対して、未成年者が使用する携帯電話におけるフィルタリングサービスの普及促進に向けた自主的取組を強化するように要請しました。 同日、総務省からの要請を受けた事業者3社と電気通信事業者協会は、フィルタリングサービスのさらなる普及促進を表明しました。 参考:フィルタリングサービスの普及促進に関する携帯電話事業者等への要請(2006年12月、PDF)

2007年12月に総務大臣が、携帯電話・PHS事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、ウィルコム)と電気通信事業者協会に対して、フィルタリングサービス導入促進のために、18歳未満の既存契約者に対するフィルタリングの原則化と、不使用の場合には親権者の意思確認を行うことを要請しました。 要請を受けた携帯電話事業者各社と電気通信事業者協会は、同日付で大臣要請を実施する発表が行われました(参考:青少年が使用する携帯電話・PHSにおける有害サイトアクセス制限サービス(フィルタリングサービス)の導入促進に関する携帯電話事業者等への要請)。

このような流れで、18歳未満に対する携帯電話でのフィルタリングサービスが原則化されました。

インターネットに関する議論 (2008〜2009)

2007年に18歳未満のユーザに対する携帯電話でのフィルタリングの原則化が行われましたが、その次に話題の中心になったのがインターネットです。

2008年6月に「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」が国会で成立しました。 この法律は、18歳未満の青少年に対する携帯電話フィルタリングの義務づけとともに、ISPが利用者の求めに応じてフィルタリングソフトやサービスを提供することを義務づけています(参考:INTERNET Watch: “青少年ネット規制法”が成立、携帯事業者にフィルタリング義務付けなど)。

2009年1月に総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめが公表されました。

同報告書では、諸外国での事例を紹介していますが、そこではブロッキングまでをISPに法的に義務づけている国は少ないとしています。 別紙1-3(PDF)の97〜98ページに以下のような文章があります。

以上のように、諸外国では、ISPに対する法的な義務は児童ポルノ情報を発見した場合の通知義務等にとどまることが多く、自主的なパトロールや、ブロッキング等の対策まで義務付けている国は少ない。 ブロッキング等の対策は民間の自主的取組として実施されている国が多い。 例えば、北欧諸国においては、民間の自主的取組として後述するDNSポイズニングという手法でブロッキングが行われており、イギリスでも、やはり後述するハイブリッドフィルタリングといわれる手法でブロッキングが行われている。 これらの手法の詳細は後述するが、海外のコンテンツにも対応可能であること、ISP側の設定のみで機能するのでユーザーの意向に左右されないことなどの利点を持つ。

このような背景から、日本においても「ISPの自主的な活動」としてブロッキングを行うことが、ISPに対して要請される方向性で議論が進んでいるのだろうと推測しています。 「これはあくまでISPの自主的な取り組みですよ」という話になっているようです。 しかし、この「自主的な取り組み」というのはISPに重くのしかかっています。 たとえば、「通信の秘密を侵している」という訴えを起こされるのは各自の判断でブロッキングを行っているISPということになります。

2009年3月に警察庁の、平成20年度の報告書として総合セキュリティ対策会議が「インターネット上での児童ポルノの流通に関する問題とその対策について」を公表しました。 この報告書は、児童ポルノ流通防止協議会によるもので、ブロッキングによって児童ポルノ流通を防止するための具体的な仕組みの提案も行っています。

今年に入ってからの動き

ISPによるブロッキングの話は、2010年に入ってから大きく動きました。 同時に、インターネットインフラ界隈でもブロッキングの話題が急激に増えていきました。

アドレスリスト作成管理団体運用ガイドライン

2010年3月25日に児童ポルノ流通防止協議会が「児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体運用ガイドライン案」に対する意見の募集結果についてを公表しました。 2010年1月15日〜1月29日まで行われた意見募集に対する対応などが公開されています。

児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体運用ガイドラインでは、アドレスリストの作成や対象に関して以下のように記しています。

(1)アドレスリスト作成時の情報提供元の範囲
原則として、警察庁及びインターネット・ホットラインセンターからの情報提供を受けるものとする。

(2)アドレスリストの対象とする範囲
アドレスリストの対象とする範囲は、特定のURL 上に掲載された児童ポルノであって、次のいずれかに該当し、警察庁及びインターネット・ホットラインセンターからの情報提供を受けたものとする。
・サイト管理者等への削除要請を行ったが削除されなかったもの
・海外サーバに蔵置されているもの
・サイト管理者等への削除要請が困難であるもの
・その他、既に多くのウェブサイト又はウェブページを通じて流通が拡大しているなど、迅速かつ重層的な流通防止対策が必要で、事前に専門委員会の承認を得たもの

ブロッキングに関する法的解釈

2010年3月30日に、安心ネットづくり促進協議会児童ポルノ対策部会法的問題検討サブワーキンググループが「児童ポルノ対策作業部会 中間発表 法的問題検討の報告」を公表しました。

同報告書の4ページで、ブロッキングは通信の秘密の侵害となるという解釈が示されています。

ウェブサイトの閲覧においては、閲覧のためのアクセスに係るホスト名、IPアドレスないしURLは、いずれも通信の内容ないし通信の構成要素として通信の秘密の保護の対象となる。 そして、ブロッキングは、アクセスの途中、すなわち電気通信事業者の取扱中にかかる通信について、ISPにおいて、一定のサイトへのアクセスに係るホスト名、IPアドレスないしURLを検知・遮断する行為であるから、当該サイトへのアクセスを要求している通信当事者の意思に反して通信の秘密の構成要素等を「知得」し、かつ、利用すなわち「窃用」するものであり、通信の秘密の侵害となる。

しかし、例外的に通信の秘密を侵すことが許容される場合があることを6ページで述べています。

通信当事者の同意を得ることなく通信の秘密を侵した場合、原則として電気通信事業法に違反するものとして、違法性が認められる。 しかし、正当防衛(刑法第36条)・緊急避難(刑法第37条)に当たる場合や正当行為(刑法第35条)に当たる場合など違法性阻却事由がある場合には、例外的に通信の秘密を侵すことが許容されることになる。

そのうえで、ISPによるブロッキングは正当業務行為とは認められないとしています。 OP25B/IP25B、DDoSへの対処、帯域制御などはネットワーク安定運用等に必要であるため正当業務行為と認められますが、ネットワーク安定運用等に必要というわけではないブロッキングは正当業務行為とは認められないとしています。 10〜11ページに小括として以下のように記述されています。

以上の検討によれば、電気通信事業者による通信の秘密の侵害が正当業務行為となるか否かを検討するにあたっては、基本的に、従来の実務の運用どおり、電気通信役務の提供にとって正当・必要といえるかという観点から検討されるべきである。
しかし、ブロッキングについては、電気通信役務の提供にとって必ずしも正当・必要なものではなく、電気通信事業者の事業の維持・継続に必要ないし有用な利益をもたらすものとも言い難いことから、正当業務行為とみることは困難と考えられる。

次に「正当防衛」ですが、正当防衛と解することは困難であると述べられています

正当防衛では、急迫不正の侵害の存在が要件となるところ、ここにいう「急迫」とは、法益侵害の危険が切迫していることをいい、「不正」とは違法であることをいう。「侵害」は、他人の権利に対して実害または危険を与えることをいい、必ずしも犯罪であることを要しない。
もっとも、「防衛」行為は、侵害者に向けられた反撃でなければならないところ、児童ポルノサイトへのアクセスをブロッキングする場合、侵害者は基本的に児童ポルノ画像をアップロードした者と考えられるが、反撃に相当する行為は個々のユーザのアクセスの検知・遮断であって少なくとも直接アップロードした者に向けられたものではないから、防衛行為とは言い難い。侵害行為を個々のユーザのアクセスと捉えれば防衛行為といい得るが、その場合、常にアクセスという侵害行為があるわけではない以上、常時監視することを侵害の急迫性との関係で整理することは困難である。
よって、児童ポルノサイトのブロッキングの問題については、正当防衛により違法性が阻却されると解することは困難である。

次に「緊急避難」ですが、報告書では児童ポルノは緊急避難に該当し得るとしています。 20ページに以下のように記述されています。

以上の検討によれば、児童ポルノがウェブ上において流通し得る状態に置かれた段階で児童の権利等に対する現在の危難の存在を肯定する余地がある。そして、検挙や削除が著しく困難である場合に、より侵害性の少ない手法・運用で、著しく児童の権利等を侵害する内容のものについて実施する限り、補充性及び法益権衡の要件も満たし得ると考えられる。
もっとも、ウェブ上において流通し得る状態に置かれた段階で一般的に危難の存在を肯定することができるのは、児童ポルノ流通による法益の侵害が類型的に著しく重大かつ深刻であるというきわめて特殊なケースだからであり、およそ他の違法有害情報一般に妥当するものではなく、安易に他の侵害行為一般への応用が許されるものではないことに留意することが必要である。

最終的には以下のように総括されています。

通信の秘密の保護は、国民の安全・安心な通信のための不可欠の前提であり、安易に侵されてはならないものである。とりわけ、ブロッキングは、適切な内容を含む通信全般を監視し、不適当な内容の通信を遮断するというものであり、事実上の私的検閲行為であること、技術的には児童ポルノ画像のみならずいかなる情報内容に対しても適用可能であることから、民間で自主的に実施するものとはいえ、その実施には明確な基準に基づくなど、特に慎重を期すべきである。いったんこうした仕組みを導入すれば、ブロッキングの対象が際限なく拡大していく懸念も払拭できない。
しかしながら、児童ポルノは、児童からの性的搾取ないし性的虐待というべきものであり、児童の時点ではもちろん成人した後になっても、心身及び社会生活に重大かつ深刻な被害をもたらすものであって、生命又は身体に対する重大な危険の回避に比すべき重大な法益侵害であり、しかもそのことは、児童ポルノ法の存在が示すとおり、社会共通の認識となっている。その意味で、ウェブ上を流通する多様な違法有害情報の中でも別格というべき類型ということができ、検挙や削除が著しく困難である場合に、より侵害性の少ない手法・運用で、著しく児童の権利等を侵害する内容のものについて実施する限り、児童ポルノのブロッキングにつき、緊急避難として、現行法のもとでも許容される余地はあると考える。
ただし、その実施にあたっては、電気通信事業法を所管する総務省の見解も踏まえつつ、その手法、ブロッキングの対象等について通信の秘密や表現の自由の不当な侵害が生じないよう、十分な配慮が求められるだけでなく、今後、電気通信事業者等が、緊急避難に基づいて自主的取組としてのブロッキングを実施するに際しては、その対象や手法等について、可能な限り明確性と透明性が確保されることが必要であることから、事業者や利用者、法学者等の幅広い関係者の参加を得て、引き続き検討していくことが望ましい。

個人的には、ISPによるブロッキングは緊急避難阻却事由により通信の秘密の保護を規定した電気通信事業法に抵触しないという検討結果がまとめられたのが非常に大きな影響を与えているという感想を持っています。 これにより、一気にブロッキング実現に向けた動きが加速したようにも思えます。

ただし、来年4月に多くのISPで一気にブロッキング導入が進むかどうかはわかりません。 阻却事由を公式に満足させるためには、業界によるガイドライン作成とその遵守が慣例となってていることもあり、通信関連4団体(電気通信事業者協会、テレコムサービス協会、日本インターネットプロバイダー協会、 日本ケーブルテレビ連盟)によるブロッキングのガイドラインが策定されるまでは、対応を保留するISPもありそうです。

日本インターネットプロバイダー協会の見解

2010年5月18日に、日本インターネットプラバイダー協会(JAPIA)が見解を発表しました。

児童ポルノブロッキングについての当協会の見解

要約すると以下のような内容となっています。

  • 安心ネットづくり促進協議会児童ポルノ対策部会法的問題検討サブワーキンググループで、児童ポルノに関するブロッキングと通信の秘密の保護を規定した電気通信事業法に関しての整理が行われた
  • ISPがブロッキングを行うかどうかは、各自で判断をする問題
  • ISPがコンテンツに対して個別に児童ポルノであるかどうかの判断はできないので、第三者機関が必要
  • 児童ポルノブロッキングを実現するには多大な負担が発生する。ISPのみにその負担をおしつけないで! (参考:INTERNET Watch: 児童ポルノのブロッキングリスト作成・運用に年間3000万円との試算結果)
  • 児童ポルノ以外にブロッキングを拡大されるべきではない

さらに、最後の方に拡大に関する懸念が詳しく述べられています。

ブロッキングは技術的には児童ポルノ以外のコンテンツに対しても適用が可能であり、実際に他の分野の情報もブロッキングの対象になっている国もある。 仮にわが国において児童ポルノのブロッキングが実施されるとしても、その範囲がなし崩し的に広がってはならないことは当然である。 一般的な違法情報、著作権侵害コンテンツ等にしても、被害児童に自己の画像が流通すること自体に怯えることを余儀なくさせるような児童ポルノとは根本的に異なるものであって、ブロッキングの対象とすることは許されない。

「発見しだい即時遮断」

2010年6月2日に、「発見しだい即時遮断」という報道による誤解について日本インターネットプロバイダー協会が声明を公開しています。

インターネット接続サービスをご利用の皆様へ

その声明は、以下のような文賞で始まっています。

インターネット上の児童ポルノの流通防止対策の一環としての「ブロッキング」について、現在様々な報道が行われており、インターネット接続サービスをご利用の皆様には、様々な疑問や懸念をお持ちのことと存じます。
特に、「発見しだい即時遮断」とする一連の報道については、事業者団体だけでなく学識経験者など各方面の構成員から成る協議会や研究会で取りまとめられた報告書やガイドラインの枠を大きく超えるものですが、国民の皆様の間にブロッキングについて誤解が広まることを懸念しております。
報道では、「国内外を問わず、発見しだい即時遮断」という点について、「政府の省庁間で合意がなされた」とされています。記事を良く読むと、インターネット・ホットラインセンターなどが発見した児童ポルノがアドレスリスト作成管理団体に送られ、確認された後にプロバイダーに要請する手続きが紹介されていますが、見出しだけを見ると発見された児童ポルノをISPが即遮断するかのような印象を与えかねず、これは現状の法的整理やガイドラインでは認められておらず、誤解を招きかねないものと困惑しております。

報道も一部加熱していたようです。

犯罪対策閣僚会議

2010年7月27日に、内閣府の犯罪対策閣僚会議が「児童ポルノ排除総合対策」を公表しました。

その中で、ISPによるブロッキングに関して述べられています。

仮想環境で2011年3月まで実験中

現在、実際にブロッキングをISPで行うための試験運用が行われています。 ブロッキングを行うことを検討しているISPが試験運用に参加できるというものです。 この試験運用は2010年9月から2011年3月までです。

INTERNET Watch: 児童ポルノのブロッキング、ISPはやらなきゃダメ? 近く試験運用開始

このように、日本のインターネット上でブロッキングを行うための環境が2010年後半に、ほぼ揃いつつあります。

一部ISPが来年4月から開始へ

このような流れの中で、来年4月には自主的に取り組みとして一部のISPが2011年4月にブロッキングが開始すると言われています。 直接関係あるかどうかはわかりませんが、今のところ、ぷららがブロッキングに関するプレスリリースを出しています。

ぷららと言えば、Winny遮断を開始して総務省から違法性を指摘された事件を思い出す方々も多いと思います。 実際、今回のブロッキングの話題がネット上で語られるときに、Winny遮断の事例を出す人がいます。

ぷららは、2006年にWinny遮断を行おうとしましたが、通信の秘密の保護を定めた電気通信事業法に違反していると総務省が見解を示し、一度実施を中止しています。 その後、ユーザがWinnyのブロッキングを選択可能である形でサービスが提供されました。

2006年当時は遮断に関する発表直後に計画を変更するという事態になっていましたが、今回のブロッキングに関しては事前に総務省や警察庁と調整のうえ行われているので、2011年4月にブロッキングを開始したとしても、同様な状況にはならないだろうと思います。

今回は時間をかけて法的解釈等が議論されていますし、どちらかというと粛々とブロッキングの実績を作るための作業が進められていくという形になりそうだというのが感想です。

オーバーブロッキングの問題

ブロッキングには、オーバーブロッキングの問題があります。

たとえば、DNSブロッキングを行った場合、児童ポルノであると判定されたコンテンツと同じホスト上にある他の全てのコンテンツがブロックされてしまいます。 複数の組織や利用者が巻き添えを喰らってブロックされてしまうこともあり得ます。

そのような問題は実際に発生しています。 今年の7月に行われたJANOG26で楠正憲さん(@masanork)がフィンランドでのオーバーブロッキングの事例を紹介しています(JANOG26 ブロッキング)。

JANOG26で紹介された事例は、まさにオーバーブロッキングそのものでした。 xdvi日本語化のページが、オーバーブロッキングによってフィンランドでは見られなくなっているという事例です。

ブロック対象となっている日本のホスト名がリストにあるのですが、そのホスト内には、たとえば「xdvi日本語化・機能拡張パッチ」というページがあります。 しかし、そのホスト名と一緒に「ロリ」という単語で検索を行うと、検索結果から削除されているページがあるので、何かがそこにはあるのだろうとのことでした。

このように、同じホスト内に複数のコンテンツが存在しているときに、一気にホスト単位でブロックされてしまうという事例があります。

児童ポルノブロッキングの後に続きそうな話を妄想

来年から日本においても一部のISPでブロッキングが運用開始されそうですが、恐らくそれはゴールではなく始まりであると妄想しています。

一度ブロッキングの仕組みが出来れば、その仕組みを活用して著作権侵害コンテンツを即時遮断すべきだという主張が登場するのは時間の問題だろうと思います。 アメリカで、著作権侵害コンテンツを掲載するホストをインターネットから遮断するという内容を含む法案を出そうとしているという記事が11月にありましたが、こういった試みは今後世界中で増えそうです。

そして、ブロッキングの仕組みが既にあるのであれば、それを著作権侵害コンテンツに対しても使いたくなる人が多く発生するのだろうと推測しています。 そのため、そのような法律を作ろうという動きも出てきそうな気がしています。

法的検討を行った、安心ネットづくり促進協議会児童ポルノ対策部会法的問題検討サブワーキンググループの報告書では、その法令そのものが通信の秘密の保護及び検閲の禁止を規定した憲法21条2項に反しないものであることが前提であるとしつつも、法令に基づく正当行為であればISPによるブロッキングは可能であるとしています。

さらに、著作権侵害だけではなく、名誉毀損等に関してもブロッキングの仕組みを適用させたい人々が登場するものと思われます。 たとえば、東京都が独自に条例を作ってISPに対して「自主的な規制が条例を遵守するように」と強く要請するということが発生するかも知れません。 JAIPAの発表資料でも懸念が示されていますが、このような感じで、「ISPによる自主的な取り組み」に対する要求は、際限なく広がりそうだという感想を持っています。

その他、色々

  • 非実在青少年が登場するアニメがいつのまにかブロッキングされたりするのだろうか?ただし、その場合は緊急避難に該当しないので、どういう解釈になるのだろうか?
  • 不特定多数のユーザによるコンテンツ投稿を許すCGM(Consumer Generated Media)は時間をかけて徐々に存続が難しくなるかも
  • CGM上で行われる著作権侵害行為に対抗するために、児童ポルノを理由としてCGMサイトに対するブロッキングを行うという方法も可能になりそう
  • DNSブロッキングは基本的にISPのDNSキャッシュサーバで行うけど、Google Public DNSを使えばユーザはDNSブロッキングを回避可能?
  • DNSポイズニングによるブロッキングや、ハイブリッド方式など、ブロッキングを行う製品は今後増えるだろうし、その技術はこれから急激に発展しそう
  • DPIやブロッキングは世界的に大きなマーケットになりそう。言い換えると、世界中がそういう方向に動いているように見える
  • 検索エンジンの表示結果からの児童ポルノの削除は、インターネット・ホットラインセンター(IHC)の提供している情報を検索エンジン側が自主的に受け取る形で既に行われています。これはフィルタリングソフト会社に対するURLリストのフィードと同じ仕組みです。海外では、GoogleがNCMEC(National Center for Missing & Exploited Children)やIWF(Internet Watch Foundation)からのリストを基に検索結果からの削除が行われています。(参考1:Official Google Blog: Building software tools to find child victims, 参考2:IWF Members)

最後に

今まで速度やアクセスの向上が主軸だったインターネットのインフラの発展ですが、最近は外部から要求される「機能」が徐々に変わりつつあり、その結果、10年前の「インターネット」と10年後の「インターネット」は大きく異なるものに変化してそうな気がしてならない今日この頃です。

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