不況の影響で実名ブロガーが増える?

2009/3/6-1

asahi.com : 日産、休業日のアルバイトを容認 賃上げはゼロ回答」という記事がありました。 記事には以下のように書いてあります。

5日の労使交渉で経営側が組合に伝えた。アルバイトについては、従来は全面的に禁止だった。しかし、販売不振を受け、大幅な減産を実施しており、工場の操業休止に加え、間接部門の社員にも休業日を設定。賃金の8割を支給している。アルバイトを条件付きで認めることで賃金の目減り分を補う狙いがある。

今まで全面的に禁止だったアルバイトが減産に伴う休業日に限ってOKということのようです。 これって、パンドラの箱を開けている気がします。

この元記事を読んでブログの匿名/実名論議に話が飛ぶのは突拍子が無いと思われるかも知れません。 しかし、私は元記事を読んで「このような動きが様々な方面に広がると、それがトリガーになって実名ブログが増えるかも知れない」という感想を持ちました。 以下、その理由を述べます。

匿名が多い理由

匿名でブログを書く人が多い理由の一つに「正社員の職業が安定していること」があると個人的に感じています。 全ての正社員の職業が安定しているわけではありませんが、例えば大手企業などに入社して定年までずっとその企業で過ごす場合などがあります。

そのような状況では、「会社生活から足を踏み外さない事」が重要になります。 定年までの長期間を無難に過ごさなければならないというプレッシャーがあると「クビになる原因を作らない事」は切実だろうと思います。

例えば家庭を持ったり、子供が大きく成長したりした人が「俺は何としてでも会社にしがみつかなければならない」と言ったりする場合もあります。 人は状況が変わればスタンスも変わる事があり、子供が生まれた後に、結構真面目に仕事をしていると思われる人が普通にこのような発言をするように変化したという事例もあるかもしれません。 まあ、そういう発言をしつつも仕事を今まで通り続けているので問題はないのでしょうが、やはり置かれている状況によって色々と変わるのだろうと思います。

「ブログが炎上」という話題がネット上で散見される中では、「ブログ炎上→解雇」という状況を恐れる人もいそうです。

なお余談ではありますが、その他にもプライバシーや危機回避などの目的で匿名活動を続ける場合もあります。 今回は「正社員」という理由にフォーカスしてみました。

実名を晒す理由

日本では匿名で活動する人が多い反面、目的を持って実名を晒す人も世の中にはいます。 「それが利益になるから」という理由で実名を晒す方々です。 「知名度があるから仕事が来る」とか「知名度があるから○○が売れる」といった利益がありがちだと思われます。

ここでやっと「正社員のアルバイト」と「実名ブログ」の話題に戻ります。 正社員として働いている人のアルバイトとして、例えば講演活動や有期でのプログラム開発などをするようになった場合、限定された時間内にうまく仕事を得るためにはある程度のコネか知名度が必要になってきます。 また、プログラミングなどではなく、その他分野でも色々あるかも知れません。

仕事依頼者から見て「この人だから依頼する」という形です。 で、問題は「この人だから」の部分をどうやって構築するかです。 そのように「自分をブランド化する」方法の一つとしてオンラインでの活動を選ぶ人も出てくるはずだと考えています。

そして、この「自分をブランド化する」という手法はアルバイトだけではなく転職にも有利に働くと考えられます。 「会社が危ないかも」とか「この会社に一生を捧げる気は無い」と感じる人が増えれば、転職への布石としてブログ等によるオンラインプレゼンスの構築を行うという戦術に走る人も増えそうです。

結局、安定が減れば減るほど流動性も高くなって、流動性が高くなればなるほど足掻く人も増えるのだろうと個人的に妄想しています。

実名じゃなきゃいけないのか?

必ずしも「実名」でなければいけないわけでもありません。 例えば、芸能人の芸名や作家のペンネームなどがあります。

要は、個人を認識出来る何らかの文字列や記号列が周知されれば何でも良いと言ってしまえばそれまでですが。。。 (元プリンスなんて記号を読む事すら出来ませんし。)

最近ではオンラインでハンドル名+顔写真という活動方法の方々も徐々に増加して来た気がします。 日本のネット上ではペンネーム+顔写真がスタンダードするのかも知れません。

オープンソースソフトやwikipediaだって無関係じゃない

実は、wikipediaの質が上昇したり、オープンソース活動が多少活性化する可能性もあると感じています。 例えば、英語版wikipediaで実名編集をしている人の中には「売名」を目的として活動をする人もいます。 自身の編集能力や知識を証明したり、オンラインでのプレゼンス(存在感)を誇示するのが目的です。

転職活動のlifehackを読んでいると「オープンソース活動に貢献する」という項目を発見することがあります。 これは自分のプログラミング能力を誇示したり、転職時に「実績」として記載できるためです。 オープンソース活動を行っているときのコネで転職が出来るというのもあるだろうと思います。

でも、今までの方が幸せな場合も多い

と、ここまでは前向きな話しか書いていませんが、実は「実名が増える」という事は薔薇色なわけでは無いと個人的には感じています。

実名が増えるのは、実名にすることによるメリットが無ければ生活が苦しくなる人が増えるという側面を持つのだろうと思います。 言い換えると、実名を晒して自分を売り込まなければ食べて行けないというツライ世界なのかも知れません。

なんといっても匿名で趣味でやるぐらいが楽しいんです。 オンラインでの自分の見え方を気にしながら書く文章に楽しさを感じる人は少ないだろうと思います。 義務化した情報発信は苦痛かも知れません。 例えば、「芸能人は得意でもないのにブログを書き続ける事が事務所から要求されて苦しむ人もいる」という話を聞いた事があります(噂なのでどこまで本当かは知りません)。

また、生活のために「売名」を本気でやる人の割合が増えて行くと、ライトに楽しむ人が埋もれ易くなります。

同時に、匿名による誹謗中傷も増えるだろうと予想しています。 正確には「匿名書き込みにおける誹謗中傷の割合が上昇する」だろうと思います。 実名で活動する人が批判や誹謗中傷を行うときだけ「匿名」を利用するという「使い分け」が多くなると、匿名書き込みによる発信の質の偏りが今よりも顕著になる気がします。 今まで匿名で「良い事」を書いていた人が匿名でそれを書かなくなるという状況です。 良い事は実名で発言し、悪い事は匿名で、という使い分けが加速する形かも知れません。 まあ、匿名だったとしても度が過ぎれば身元を暴かれちゃう危険はありますが。

最後に

何か、ここ数年で世の中凄く変わって行きそうだと思った今日この頃です。 まあ、私の限定された観測範囲からの視点ではありますが。。。

ここに書いた事を数年後に見て「嘘ばっかりだ」とか「予想が外れ過ぎ」と言えると嬉しいですね。

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