ネットで実名を出せない理由

   このエントリをはてなブックマークに登録    2009/10/5-1

日曜日夜に、毎日新聞社主催で勝間和代氏がTwitterユーザと語り合うクロストークイベントがに参加しました(イベントURLが消えていたのでリンクできていません)。 非常に興味深い話題が多いイベントで面白かったです。

そのイベントの最後の方で、実名匿名議論に関しての話題があり、Twitter上で@manameさんが以下のような発言をしました。

maname #crosstalk 実名出すこと、会社に禁止されているサラリーマンもいるってこと忘れないでください。目立つことが仕事の人もいれば、目立ってはいけない仕事の人もいますよ。
http://twitter.com/maname/status/4601234589

その発言を「ですよね。」というコメントを付加してReTweetしたところ、以下のような反論がありました。 しかも、色々見てみると、様々な所に議論が飛び火しているっぽかったです。

osamu_tamura なるほど。 個人は歯車の感覚なのかな。でも、そんなに禁止されていて皆さんそれでよいと思っているのでしょうか?RT @nounom: ですです。RT @clione: RT @geekpage: ですよね。RT: @maname :#crosstalk 実名出すことを会社に禁止・・
http://twitter.com/osamu_tamura/status/4601451557
puku_puku このイベントの良くない副産物がこれ。 RT @osamu_tamura: なるほど。 個人は歯車の感覚なのかな。でも、そんなに禁止されていて皆さんそれでよいと思っているのでしょうか?RT @nounom: ですです。RT @clione: RT @geekpage: です ...
http://twitter.com/puku_puku/status/4601544024
dankogai ということは、そのサラリーマンにとっては、自らの名より会社の方が大事だということだよね? @geekpage ですよね。RT: @maname :#crosstalk 実名出すこと、会社に禁止されているサラリーマンもいるってこと忘れないでください。
http://twitter.com/dankogai/status/4602347391

小飼弾さんが「そのサラリーマンにとっては、自らの名より会社の方が大事だということだよね?」という面白いテーマで議論を振って頂いたので、文章としてまとめてみる事にしました。 本当は、Twitter上で話せば良かったのかも知れませんが、色々あって気がついたら数時間経過していたので。。。

まず、全体的にですが、おっしゃることは確かにその通りであり、確かに社畜っぽい匂いを出しているメンタリティだと思います。 私も会社に所属している時は自主規制を行っており、匿名でサイト運営をしていました。

ただ、やはり「ことなかれ主義」というの文化が強い組織というのもあるんですよね。。。 組織全体が「ことなかれ主義」の場合もあれば、組織の一員が「ことなかれ主義」で発言を自主規制している場合もありそうです。

以下、ブログによる個人実名の発言関連ネタです。

社名を出すと発生すること

社名を出していると、会社側で何かが起きたときに、それを元にして批判して来る人がいます。 例えば、自分が「○○社」で働いていたとし、その「○○社」が何らかの事故を起こして全国ニュースになったとします。 そのとき、自分は全く関係が無い部署にいたとしても「お前は○○社の社員だろ!恥を知れ!」と言う人が発生します。

逆に、自分が不適切な発言をすると「○○社の社員がこんな事を言っています」という感じで情報が一人歩きしてしまい、会社に損害を与える可能性があります。 直接的な損害が発生しなくても、社内で問題になることもありそうです。 どちからということ、こっち側を恐れる人が多いと思います。

ただ、アメリカ企業では情報発信を推奨する企業も多く、その代わりに各社員が「大人の社会人として」ネット上でも振る舞うことを求めます。

ネット上で「活躍」しているのはベンチャーとフリーランス

ネットでの顔出し発言を積極的に推進するかどうかは、企業の雰囲気や規模に依存するかも知れません。 日本の大企業に所属している社員ほど実名顔出しを嫌う気がします。

個人的な感想としては、ネット上で目立ったり「活躍」している方々は、ベンチャー企業に属していたり、フリーランスだったり、社長だったりという事例が多い気がします。

要は、自分の責任範囲が自分でわかっていて、自分の言動に対して自分で責任を取れる環境に居る人々です。 そして、ネットで顔出しをすることでメリットがある人々でもあると思います。

日本的な空気が強い大企業に居ると「顔出しすることのデメリット」を強く嗅ぎ取ってしまう気がしています。

自分の裁量で判断出来る人は顔出し名前出し

例えば、重役とか部長などは自分の裁量で顔出しや実名出しをしながら活動する場合もありますが、主にメディアの取材に答える形だと思われます。

社外に向けて自分でブログを書いて積極的に公開する大企業幹部は、まだまだ少ないのかも知れません。 もしくは、書いていても目立たないような無難な話しか公開していないというものありそうです。

その他の多くの社員は匿名でネットを利用していると思われます。 大企業の社員などがネットを使ってないわけではありません。 身元を明かしてないだけだと思います。 とはいえ、大企業に勤めていてTwitterで実名でアカウントを取得して発言している人を結構知っているので、状況は少しずつ変わっているのかも知れません。

実名顔出しネット活動は勝ち取るもの

個人的な感想としては、日本国内にある巨大な組織では、いまだに個人の発信の自由は部署内で「勝ち取るもの」だと考えています。 誰かが積極的に顔出しで情報発信を行った後であれば、前例が出来て次の人からは、ある程度スムーズに進めるという状況が強いと思われます。

逆に言うと、前例が無ければ誰かが前例となるべく、切り開かなければならない組織も多いのではないでしょうか。 その「切り開く」という所に踏み込む人がいるか居ないかですかね。

実名、匿名、ハンドル名に関しての議論

余談ではありますが。。。

と、このような話をすると、実名と匿名とハンドル名や、発信した情報の価値と実名であることにリンクがあるかどうかに関しての議論を蒸し返すわけです。 このようなときには、「もう何周目だよ?」というコメントを記事に対して付けることが推奨されています。

「ガイドライン」を作りたがらない日本企業

基本的に大きめの日本企業は「ブログに関するガイドライン」を作りたがらない気がします。

以前、探してみたのですが日本企業のブログガイドラインはあまり発見できませんでした(参考 : ブログ/ソーシャルネットガイドラインをまとめてみた)。 アメリカ企業が多い気がしますね。 ヨーロッパはどうなんですかね?まあ、ヨーロッパと言っても国ごとに違いそうではありますが。。。

探し方が悪いだけかも知れませんが、日本企業の公開ブログガイドラインが少ない理由として個人的に推測しているのは、ガイドラインを作らない方が社員が自主規制を行うと企業側が知っているからだと思います。 ガイドラインを作ってしまうと、白黒はっきりし過ぎてしまうからです。

日本企業内部用にガイドラインがあったとしても、結構広い範囲で解釈できる内容で駄目な事が書いてあって、「○○を行っても良い」というような推奨するような文言は少ないと思われます。 あくまで勝手な推測ですが。。。

「業務上知り得た知識ではないこと」

例えば「業務上知り得た知識を口外してはならない。業務上身につけた技能を使ってはいけない」のような文言があったとします。 これが結構くせ者だったりします。 プログラミングを職としていて、プログラミングに関してブログで書こうと思った時に、どこまでが業務上知り得たかどうかがグレーなんですよね。

例えば、プログラミング技術を就職前に持っていなかった人が、会社の業務でプログラミングを覚えて、それをブログに書いたらどうなるの?とか、会社で得た技能を使って休日にフリーソフトを作って公開したらどうなるの?など境界線を真面目に考え始めるとハマります。

明確なガイドラインが無いというのが、こういう所で自主規制を産むわけです。

私は在社時代にRTP本の監訳をしたことがあります。 2003年に入社したのですが、本は2004年に出版されています。 学生時代にIETFでRFC3189やRFC3190の標準化に関わっていた関係で「学生時代からの延長で業務時間内に得た知識ではない」という主張が出来たので行えたのだと思います。 例えば、会社員としてRTPの標準化を行っていての監訳であれば、社内決裁が必要だったかも知れませんし、許可して頂けたかどうかは定かではありません。

最後に

でも、実際に私が「会社に勤めながら実名を出してどこまで行けるか実験」をやってみたわけではないので、何とも言えないといえば何とも言えないのも確かではあります。 私の場合は「自らの名より会社の方が大事」というよりも、問題発生や解雇のリスクを嫌ったという感じでしたが、組織の中に居ながら実名で情報発信をするという方向性で何かを切り開いたわけではないので、恐らく私はそういう面ではチキンだったんだと思います。。。

ということで、2年前に「ネット上で名前を出して発信を行う」ために会社を辞めて「職業:ブロガー」と名乗る道に進んでみた次第です(参考:退職報告及び自己紹介)。 安定した収入は失いましたが、発言の責任は自分自身だけに振って来る状態になりました。 ただ、当時の選択を今も後悔していません。

実名で活動したければ活動すればいいし、匿名でもハンドル名でもやりたいようにやれば良いと思う今日この頃です。 要は、立場と状況に応じて、メリット/デメリットの算定を個々の判断で行って下さいという感じですかね。 二元論じゃないと思うわけです。

追記

shimon_yamada 派遣とか、登録型派遣ってのもいるのも、たまに思い出してやってくださいwRT @geekpage: #crosstalk ブログ書きました: ネットで実名を出せない理由 http://www.geekpage.jp/blog/?id=2009/10/5/1
http://twitter.com/shimon_yamada/status/4607701607

shimon_yamada @geekpage 会社の胸先三寸で、如何なる理由であろうが、契約更新を断られたらそれでオシマイな人たちですよ(苦笑。我々がなにを語りえるのか、ずっと悩んでいます。
http://twitter.com/shimon_yamada/status/4607760362

追記

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コメント

「業務上知り得た知識」の件について。
ブログに業務とは関係のない技術的な事を書いて注意をうけた人がいます。
大きな会社だと、上の人間が技術に詳しくなく、業務に関係あるかないかの判断ができません。
その為、技術的な事を書くだけで、業務上知り得た知識とされてしまいました。
日本のIT系の会社多くは、どこか他業種の会社の子会社であったり、そのような会社から仕事を請けています。
子会社では社長から管理職まで出向が占めています。
この様な状況で実名でブログを書くのはリスクが高過ぎます。
業界の構造が変わらないとどうにもならないのではと...。
社内の立場の悪化や解雇•契約解除を恐れるのは当然ではないでしょうか。
前述の人はブログを削除したそうです。
ウェブ日記を書いていた女性が風俗系雑誌に取り上げられて会社を首。
マグロの解体ショーを見てきましたと書いて会社に抗議が数十通いって首。
30代独身の人がアニメオタクであることを会社に通報されて左遷。

こんなことが起きてみんな必死にネット上から自分の名前を消してまわったのですけどね。
ぐぐり
> 自分の責任範囲が自分でわかっていて、自分の言動に対して自分で責任を取れる環境に居る人々

これが全てだと思います。
それは日本だろうが海外だろうが同じ。
国や組織や立場違うのは責任範囲を担保する仕組みだけ。
その仕組みに沿えば誰だって実名で語れる範囲があるわけです。
独裁オーナーの社長様だって差別記事やセクハラ記事や法律に反する行動の記事を実名で書けば終わるわけで。

これが分からず「俺は俺」という連中は後で痛い目を見ます。
sぱn
ウェブ日記を書いていた女性が風俗系雑誌に取り上げられて会社を首。
マグロの解体ショーを見てきましたと書いて会社に抗議が数十通いって首。
30代独身の人がアニメオタクであることを会社に通報されて左遷。


うわ、悲惨だな
なるひこ
「余談」に反応しますが、「ハンドルと実人格と匿名」の関係に毎回ムズムズしているものです。
私のような愚か者のために、そういう風に高い目線で切り捨てずに、どのような結論が出ているのかをポインタ付きでご教授いただけませんか?
わたしゃ mixi のようなハンドル固定の SNS で「ここは匿名じゃないよ」というのに疲れたので、リンク一個で済めばありがたいのですが。


それと、私いちおう大企業と言われる会社の社員で、実名で微力ではありますがコミュニティ活動もブログもやってます。

もちろんそれは私の業務がオープンソースである故、オープンな情報源から得た情報をオープンに返すのは当然、という論理でやっているわけですが、それでも社内の軋轢はものすごく、場合によっては懲戒の対象になりうるといわれたことも、どこの許可をとればいいか聞きまわってヘトヘトに疲れたりも、いろんなことを経験しました(ぶっちゃけ、おかげで精神を病んで今休職中です)。それは社員がオープンの場で発言できた方が社にとってもメリットがあるしコミュニティにもメリットがあるはずという信念でやってるのですが、このエントリの結論が「自由に発言したかったら会社やめたら?」と読めてしまう物になっているのは少し残念でした。
t
そうですね、やっぱり匿名じゃないと厳しい環境の人もいるわけでよく考えるべきですね。
そして弾氏がいつもどおりの発言で安心しました。まったく・・・
anonymous
止むを得ない事情(虐められた、先生に怒られたなど)だったら実名を出して良い。
寝坊多発
「業務上知り得た知識を口外してはならない」的な誓約書を書く場合がある場合にもかかわらず、技術的なBlogから業務にかかわる情報を得ることも多い場合、何かしらネットに還元する際には、とりあえず匿名でという行動だったりするのかもしれませんね。
小倉秀夫
そういうことをやっていると会社にばれたらやばい,自分の気に入らない発言をする人間への中傷コメントの投稿や,特定の人間を退職・退学に追い込むための電凸等の謀議等を,我が身の安全を確保しながら続けるには匿名でいることが大切ですね。

また,私は,お医者様らしい匿名ブロガーの方から,その方の病院に私が入院したときには点滴の中に雑巾の絞り汁を混ぜてやると脅されているわけですが,そういう脅しも匿名でやるからこそ効果がありますね(その方の実名がわかっていれば,その方の勤めている病院を回避すれば,脅しに屈する必要がなくなりますから。)。

2ちゃんねるでひろゆきさんが敗訴した案件で,問題の書き込みをした人間が名乗り出てきちんと賠償金を支払ったというケースがない以上,いくら立派なこと言っても,「責任をとらずに違法行為をしたいだけでは?」と思わざるを得ません。
石川
個人の自由。ただし、社会的に認知されていたり、とくにネットの中で実名を認知されている方は、匿名はやめられた方がいい。ただし、もどって、個人の自由です。それから、実名を伏せられている人が、ネットや実社会で評価されても、実名は永遠に伏せた方がいいと思いますよ。これも、自由ですけど。つまり、私利私欲に名前を使ったり使わないというのは、どうみても下品だというだけです。もし、ネット社会は下品であっていいというスタンスならば、そもそも議論も必要はありません。やりたいようにやればいいだけです。個人というものはそういうものです。ちなみに、目立つ人は、たいてい目立たなくなって、惨めなもんです。目立つための、名前って、そもそも、あれですよ。

話は、それて、コメントの画像認識に、漢字を使うのはいいですね。「薔薇」とか、「韜晦」とか、スゲー難しい字をいれて、年齢制限できるし。この点、日本語は、なんて素晴しいのでしょう。
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あきみち

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