キャズムを超えそうなTwitterについて色々

2009/7/21-1

最近、Twitterがキャズムを超え始めてる気がしてなりません。 新聞やテレビでチラホラ「ツイッター」という単語が出現し始めていますし、今年5月ぐらいから急激に新規アカウントが増えている気がします。 私の周りでもフォロワーが5月ぐらいから急激に増加した人が多い気がします。

1. 政治家、芸能人が利用開始

アメリカのオバマ大統領が使っていたと解説されることが多いTwitterですが、日本でも政治家による利用が増えて来ています。 個人的な感想では、日本の政治家がTwitterを利用し始めたというニュースと供に急激にユーザが増えて行ったような感じさえあります。

wikipedia : Twitter議員

有名人や芸能人の参加も徐々に増えて行っています。 先日も歌手の広瀬香美氏がTwitterを開始していました。 芸能人コミュニティ内で「Twitterイイよ!」という話題が広がれば、さらに参加者は増えて行くものと思われます。

早いうちに参入すれば、様々なブログなどで「政治家一覧」「有名人一覧」「芸能人一覧」などが作成されて、後発組よりもフォロワーが増えやすくなる傾向がありそうです。 また、今のうちであれば「Twitterを開始した」という事実そのものがニュースになり、露出効果があるという点も利点だと思われます。

2. 1対多の意味

ただし、政治家/有名人/芸能人がTwitterを開始するのは、普通の人がTwitterを開始するよりも敷居が高いかも知れないと思う事があります。 普通の人であれば、急激にフォロワーが増える事もなく、徐々にTwitter上の「空気」に慣れて、他ユーザとの適切な「距離感」を構築して行く事が可能です。

しかし、最初から注目されるような人々は、いきなり1対多のコミュニケーションの中に投げ込まれます。 多くの人々が注目していて「失敗がしにくい世界」でいきなり活動しなければなりません。 職業によっては、相手の失言を拾って陥れるために発言を逐一チェックしているフォロワーが居ても不思議ではありません。

私の観測範囲内での日本のTwitter界隈では、気軽に会話のやり取りを行う雰囲気が非常に多いと感じています。 ある程度の会話のキャッチボールが行われて当たり前という認識のユーザも存在しており、「話しかけても答えてもらえない事」に対して不快感が示されることもあります。

一般ユーザ間での利用では、フォロー数と被フォロー数の数値はさほど乖離していない場合が多いので、ある程度の発言に対して返答をするのは一般的かも知れません。 一方で、非常に注目される政治家や有名人や芸能人の場合、話しかけたい人の数が極端に上昇します。 最初のうちにある程度のやり取りをすることが当たり前な雰囲気を作ると、次から次へと答えなければならなくなります。 そこら辺の匙加減が難しさとしてありそうです。

ただ、元々そのような方々は1対多のコミュニケーションを行う事そのものが職業であるため、実は非常に上手にTwitter上でもコミュニケーションを取れるのかも知れません。

3. SNSじゃありませんから

mixiと同じようなSNSだと勘違いしている人をたまに見ますが、Twitterはmixiとは全然違うものだと考えるべきです。

まず、非公開(protected)設定にしない限りは、誰でも発言を見られる状態になります。 フォローしていない人が発言を見るということも良く行われますし、ソーシャルブックマークやTumblrなどの外部サービスで発言が転送されることもあるので「フォロワーだけに届いている」と信じるのは危険です。

Twitterは「マイクロブログ」と呼ばれる事もあり、公開度合いはブログと変わらないのかも知れません。 誰かに届いてしまうとマズいような発言はTwitter上であったとしても慎む事がお勧めです。

個人的には日本におけるTwitter利用は「本文が無くコメント欄だけが存在しているブログ」みたいなものだと感じています。

4. 発言が残る

Twitterには「発言を消す」という機能がありますが、実は完全には消せないので注意が必要です。 例えば、Twitterの公式検索サービスである、search.twitter.comでの検索結果は消す事が出来ません。 ユーザが手元で消した後も、そのまま発言が残ってしまいます。 試しに、自分で行った発言を削除してから、自分のユーザ名を検索キーワードにして検索してみるとわかりやすいと思います。

外部の検索エンジンに登録されていたり、フォロワーの手元のTwitterクライアントに保存されている場合もあります。 手元に様々な人々の発言情報のコピーを保存するようなTwitterクライアントを利用するユーザは非常に多いです。 ブログだとRSSリーダ利用者数をWebブラウザ利用者数を比べると多くの場合はブラウザでの閲覧者が多くなりがちですが、Twitterだと専用クライアント利用者の割合は非常に高いです。

実は、Twitterはブログ以上に「発言の取り返しがつかない」ツールなのかも知れません。

5.「答えたこと」だけではなく「答えなかったこと」も注目される

Twitterでは、自分の会話は自分だけが見えていると錯覚されている方々もいます。 しかし、実際には@をつけてユーザを指定した会話を列挙するのは比較的容易です。 search.twitter.comで、任意のアカウント名を検索キーワードにして検索すると、そのユーザのやり取りが時系列順に列挙されます。

このため「何に答えて、何に答えなかったか」が全て晒されてしまいます。 良く新聞や週刊誌で目にする「質問しましたが答えて頂けませんでした」に似た表現がブログなど行われる日も近いのかも知れません。

6. 企業がTwitterを利用する際の「演出」

企業によるTwitter利用事例も徐々に出現していますが、企業が営利目的でTwitterを利用するためには「演出」が必要になるのではないかと考えています。

例えば、Webやブログでは一方通行の情報発信だけが行われるのが一般的ですが、Twitter上で行われる販促活動はコミュニケーションが伴う事が多いです。 今まで一方的に都合の良い情報だけを配信することに慣れている企業にとっては非常に難しいメディアなんだろうと思います。 さらに難しい事に、ウィットに富んだ発言を過度に求められる風潮もありそうです。

一般ユーザなら「自分の雰囲気」を各自の思いつきと責任の範囲内で実行可能ですが、企業が公式にこういうのを実現するのって、どうやるのがいいんですかね。。。 一見非常に簡単に参入できるTwitterですが、企業がやってみると実はかなり難しいのかも知れません。

7. コンサルタントが増えるんだろうなぁ

このような流れの中で、今後はTwitterコンサルタントとか、Twitterマーケティングコンサルティングというサービスを開始する広告代理店などが増えそうだと感じました。 既に、いくつかそのようなサービスを提供している会社はあります。

アメリカでは「Twitterコンサルタント」という職業の方々がいらっしゃるようです。 Google TechTalksでTwitterコンサルタントの方が「TwitterはGoogleよりどう凄いのか」という話をしていました。

Twitter WTF? - Why is Twitter Called a Threat to Google?

Laura Fitton氏(以下、pistachio氏) Twitterなどのソーシャルネットワーキング利用方法に関するマーケティングコンサルタントのようです。 Twitterでは、3万人以上のフォロワーがいるようです。

pistachio氏は、ビデオ中で「Harvard Business School でもTwitterを教えている」と述べていますし、「Twitter for Dummies」という本も出しているようですね。 for Dummiesは日本で言う所の「できる!シリーズ」に近いのかも知れません。

pistachio氏は講演で「Twitterはマーケティングチャネルだ!という人が多くて困る。そういう問題じゃない。まずは、その世界でのエコシステムやリテラシーを正しく知る必要がある」という感じの発言をしていますが、確かにその通りだと思います。

Googleとの違いとしてpistachio氏はユーザからの情報取得量の違いを述べています。 pistachio氏によると、Google検索は多い人で一日20回ぐらいで、一回の検索単語は2個か3個ぐらいではないかとビデオ中で述べています。 Googleは、どんどん投入される検索単語を見て行くと、世の中の人が何を考えているかの流れが見えて来るそうです。

一方で、twitterだとgoogleで検索をしている人数よりももっと少ないのですが、普通の人が一日に10〜30回ぐらいtweetして、一回のtweetが例えば25単語ぐらいだそうです。 それらのtweetは、ユーザが何を見ている、何を考えている、何をしている、何に価値を感じているなどが含まれているため、検索キーワードよりも情報としての価値が非常に高いとのことです。 多くのユーザの脳内にある情報をより多く引き出せているという意味なんだろうなぁと思いました。

pistachio氏は、Twitter上での活動の広がりの例として自身が取り組んだ募金活動を上げていました(募金かよ!という突っ込みはあるとは思いますが講演ではそう述べています)。 それによると、1万人の個人が2ドルを募金して、2万5千ドルを3週間で集めたそうです。 募金の呼びかけはReTweetによって国境を越え、ヨーロッパでも活動が広がったそうです。

PISTACHIO : Well Wishes $2 You

日本ではpistachio氏のようなコンサルタントとは違う雰囲気になりそうな気はしますが、Twitter界の権威である○○さんのような人は登場するのだろうと思います。

8.「価値」が出て来た

今のTwitter加熱の背景には、Twitterに「価値」が出て来たという側面があるような気がしています。 人々が多く集まっているというのは、一種の「価値」であり、「価値」があるからこそ、さらに多くの人々が集まってくるのだろうと思います。

ブログのトラックバック利用形態が徐々にSPAMだらけになったり、mixiの利用目的が出会い系メインな人々が登場するなど利用者の層が増えれば、当初の世界とは違った世界が形成されていく気がします。

最近、単なる宣伝目的でTwitterアカウントを取得して、ひたすら多くの人をフォローするような日本語アカウントが増えてきました。 数ヶ月前までは、そのような行動は海外のエロサイト宣伝目的ばかりでしたが、最近は日本国内で似たような行為を散見するようになりました。

これもTwitter利用者層が徐々に変化して来ているために発生している現象なのではないかと考えています。

9. Pay Per Post問題再び

そのうち、Pay Per Tweetのサービスが登場して、倫理的な論争が発生するんですかね。。。 今でも、何となく意図的に特定の何かを継続的に宣伝するような動きはありそうな気はしますし。

最後に

今年後半までに、日本におけるTwitter利用は色々と変化して行きそうな気がしています。 前から利用しているユーザにとっては不便さを感じる事が発生することもありそうです。 今後、日本での利用者数が極端に増えたとき、どのようにTwitter内の「空気」が変わるのか、非常に興味がある今日この頃です。

なお、私のアカウントは @geekpage です。 私はTwitter利用開始に関しては後発組で、今のところ使い始めて1年ぐらいです。 色々思いつきで深く考えずにダラダラ書いてます。

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