焼酎酵母研究開発者魂

   このエントリをはてなブックマークに登録    2008/4/1

ASAHI SHOCHU LABブロガーミーティングの参加レポートです。 開発担当者である酵母エンジニア松木さんの魂が感じられるイベントでした。

ASAHI SHOCHU LABは、研究所で開発段階の商品を実験的に数量限定Web販売するという試みです。 Web販売結果やアンケートを参考にしながら、正規の製品として販売するかどうかを模索するようです。 酒類としては今までになかったのではないかと思える面白い企画だと思いました。

松木さん

研究所で「もろみが見た夢」の開発を担当された松木さんの熱い語りが聞けるイベントでした。 いわゆるプレゼン慣れした感じではなく、微妙な発表がまた「エンジニア畑の人だなぁ」と親近感を覚えました。

一番印象的だった発言が、「これ、私の手なんですよ!で、米の写真が二つあるんですが、片方が酵母の蒸米でもう片方が主原料の蒸米です!うれしくなっちゃって写真とっちゃいました。」でした。

「もろみが見た夢」はトップダウンではなく、ボトムアップ的な製品だそうです。 松木さんは、一時は中断となった開発計画だったのを密かに作り続けて、社内のアイテム提案会に出したそうです。 アイテム提案会で好評で、さらなる開発の道が開かれてついにASAHI SHOCHU LABでの実験的公開となったとのことでした。 大学から数えると10年以上酒造系研究の道を歩んでこられた、松木さんが執念で実現した製品と言えるのではないでしょうか。 (何かどこかの大手家電製品企業の昔話のような話ですね。。。)

構想、研究、実験、開発、製品化、マーケティングまで全部に関われるというのは非常に凄いことですし、羨ましささえ感じます。 ここまで一貫して活動できると専門家(エンジニア)冥利に尽きるのではないでしょうか。


酵母用蒸米と主原料蒸米と松木さんの手


樽詰めと樽転がしをする松木さん

「もろみが見た夢」の独自性

「もろみが見た夢」は今までになかった全く新しい製法で作られているそうです。 最初は何がどう新しいのかが全く理解できなかったのですが、途中で質問をして初めて理解しました。 寝かせるタイミングが独自性だったんですね。

酵母が活動をしながら増殖することによってアルコールが生成されます。 酵母が一定量まで増殖すると、その後は増殖しなくなるそうです。 その理由としては、自分が輩出したアルコール分等によって自分が増殖に不適切な環境を作り上げていくからだそうです。 そして、増殖をしなくなった酵母は次々と活動を停止し、様々な物質をロッパー(えの素用語)すると紹介されていました。

従来方式であれば、増殖が停止した時点で蒸留に移りますが、新方式では蒸留前に樽詰めしてしまいます。 普通は樽詰めは蒸留後です。 樽詰めした酵母入りのもろみは3ヶ月間熟成されます。 その後、蒸留されて製品になります。

樽詰め熟成後に蒸留するというのも大きなポイントで、蒸留することによって熟成中に酵母が撒き散らした味を乱すよからぬ物質を除去できるそうです。

この製法に関する特許も現在申請中であるようです。

マーケティングに関して

プレゼンの後の懇談会にて、マーケティング本部チーフプロデューサーの方のお話を伺うことが出来ました。 今回のブロガーミーティングは初の試みであったようです。 今まではマスに対して広告をうつのがメインでしたが、今回はマスに行わずまずはブログのみでスタートしたとのことでした。

この決断をした背景には松木さんの個性があったようです。 曰く「彼女のキャラも理由の一つなんですよね」。

「味」や「香り」はブログなどを通じて伝えることが出来ません。 逆に、製品に対する想いや情熱はブログを通して伝えやすいのかも知れません。 もちろん、製品の「味」が駄目駄目であれば、製品への想いがあっても意味がないのですが、今回の焼酎は独特の風味があり、そして製法も独特であることがわかったので、ブログマーケティング向きな題材であったと思うというような話をチーフプロデューサーの方と焼酎を飲みながら話しました。

さらに曰く、「今回これだけインパクトのある内容にしてしまったので、第二弾はどうすればいいかがちょっと心配」であるそうです。 ASAHI SHOCHU LABでは現在第4弾まで企画されているようなので、第2弾、第3弾、第4弾を発表される担当者の方々も頑張って下さい。

特許

特許を出願されたということで検索をしてみましたが、発見できませんでした。 以下の二つはあったのですが、恐らくこれではないと思います。 出願日が2005-10-05となっているので、「もろみが見た夢」の開発構想よりも前のものでした。

プレゼンでは公開されているとされていましたが、恐らくまだ公開になっていないのだと思います。 出願はされているようなので、出願から1年半すれば自動的に公開されると思われます。

うーん。残念ですね。 でも、これらの特許を見ると松木さんは酵母のプロだというのが良くわかります。

どうでもいい事ですが「官能的にも遜色のない甘酒を」という表現がちょっとウケました。 気になって調べてみると、色々な特許の中で「官能的」という表現が良く出て来るようです。 その業界では人間が知覚すること全般を「官能的」と表現するのかも知れません。 なおGoogle先生に「官能的」とは何かを聞くと、なかなかアレな結果になります。

特開2007-097496 液体麹を用いた甘酒の製造方法

【課題】 従来の固体麹を用いた甘酒と同程度の品質を持ち、官能的にも遜色のない甘酒を、液体麹を用いて効率よく製造する方法を提供することを目的とする。

【解決手段】 液体麹を用いた甘酒の製造方法であって、培養原料として、表面の全部又は一部が少なくとも穀皮で覆われた穀類を含む液体培地と、表面が外皮で覆われた豆類及び/又は芋類を含む液体培地と、細砕や粉砕などの前処理をしないアマランサス及び/又はキヌアを含む液体培地と、から選ばれた少なくとも1種の液体培地で麹菌を培養して得た液体麹を使用することを特徴とする液体麹を用いた甘酒の製造方法を提供する。

【特許請求の範囲】

【請求項1】
液体麹を用いた甘酒の製造方法であって、培養原料として、表面の全部又は一部が少なくとも穀皮で覆われた穀類を含む液体培地と、表面が外皮で覆われた豆類及び/又は芋類を含む液体培地と、細砕や粉砕などの前処理をしないアマランサス及び/又はキヌアを含む液体培地と、から選ばれた少なくとも1種の液体培地で麹菌を培養して得た液体麹を使用することを特徴とする液体麹を用いた甘酒の製造方法。

【請求項2】
麹菌が、白麹菌及び/又は黒麹菌である請求項1記載の液体麹を用いた甘酒の製造方法。

特開2007-097406 液体麹を用いた清酒の製造方法

【課題】清酒の製造に必要な酵素活性を十分に有する液体麹を開発し、当該液体麹を使用して効率的な清酒の製造方法を提供する。

【解決手段】液体麹を用いた清酒の製造方法であって、培養原料として、表面の全部または一部が少なくとも穀皮で覆われた穀類を含む液体培地と、表面が外皮で覆われた豆類又は芋類を含む液体培地と、細砕や粉砕などの前処理をしないアマランサス及び/又はキヌアを含む液体培地と、から選ばれた少なくとも1種の液体培地で麹菌を培養して得た液体麹を使用することを特徴とする清酒の製造方法。

【特許請求の範囲】

【請求項1】
液体麹を用いた清酒の製造方法であって、培養原料として、表面の全部または一部が少なくとも穀皮で覆われた穀類を含む液体培地と、表面が外皮で覆われた豆類又は芋類を含む液体培地と、細砕や粉砕などの前処理をしないアマランサス及び/又はキヌアを含む液体培地と、から選ばれた少なくとも1種の液体培地で麹菌を培養して得た液体麹を使用することを特徴とする清酒の製造方法。

【請求項2】
麹菌が、白麹菌及び/又は黒麹菌である請求項1記載の清酒の製造方法。

イベント

マーケティングを目的としたブロガーイベントは、今回が初参加でした。

受付や誘導等をAsahiの方々とAMNスタッフの方々が行っていました。 非常に良くコーディネートされたイベントであると思いました。 このようなイベントのコーディネートにも様々なノウハウがありそうです。 例えば、最初に撮影可能人物の範囲を特定したりするのもノウハウなんだろうなぁと思いました。

司会を徳力さんが行っており、時折笑いなどが混じる明るい雰囲気のイベントでした。 プレゼンの途中で徳力さんが質問をしたり、ブロガーの質問に対してトークンを割り当てたり、ブロガーの質問の意図が発表者に伝わらないときには翻訳をしたりしていました。

最後の懇談会では、Asahiの方々にお話を伺うことができて勉強になりました。 やはり、自分とは全く異なる分野の方々の話は面白いです。

なお、余談ではありますが、酵母に関わるAsahiの方々の多くは「もやしもん」をご存知ではありませんでした(どうでもいいことですね。。。ごめんなさい。。。)。

最後に

ちょっと変わった風味で凄くおいしい焼酎でした。 帰りにお土産で一本頂きましたが、追加で数本購入しようと思えるおいしさでした。

いや、でも実は松木さんの酵母に対する熱い情熱が発生させるプラシーボ効果なのかも知れません。 それぐらいエンジニア(研究者)魂を感じました。

今回はあえて焼酎自体の写真を掲載するのをやめてみました。 興味のある方はASAHI SHOCHU LABをご覧下さい。

追記 : 2008/4/1

松木さんは「もやしもんを読んでいる」と発言していたというご指摘を頂きました。 すみませんでした。

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