Jストリームさんに行ってきました

   このエントリをはてなブックマークに登録    2008/2/7

昨日、Jストリーム社長の白石氏にお話を伺う機会を頂きました。 電話をかけて手元のPCで再生されている映像ストリームをリアルタイムに変更する手法を実装したり、映像を使ったUIを作りこんで成約率を20%向上させたり、Podcastingを行ったり、と非常に面白い話をうかがうことが出来ました。 (取材実現までの経緯は、昨日の記事をご覧下さい。)

Jストリームとは

Jストリームは、日本を代表するストリーミング企業の一つです。 国内の多くのISPやデータセンター内等にキャッシュサーバを配置する体制を整える事により、各種ストリーミングをスケーラブルかつ高品質に実現しています。 携帯動画配信なども行っています。

Jストリームでは、配信を行うだけではなくコンテンツの制作も行える体制を整えてあります。 例えば、PIP(Person In Presentation)等のコンテンツを制作するためのブルーバックシステム用スタジオがあったり、録音用スタジオがあったりします。

取材内容

今回は「ネット&モバイル通販ソリューションフェア2008」で行われるセミナーの内容を中心に聞いてきました。 取材の前半はセミナーで紹介される内容がメインでしたが、途中で質問などを行っているため、実際の講演内容とは多少異なっていると思われるのでご注意下さい。

以下、取材内容です。 「Q:」部分が質問で、それに続く文章がJストリーム社代表の白石氏による回答です。

Q: 現在の問題意識やフォーカスを教えて下さい

インターネットでのマーケティングというと、多くはサイトへの誘導(集客)をどうするかということです。 例えば、テレビでは「続きはWebで」という誘導を試みが多く行われるようになりました。 このような、サイトへの集客方法に関するノウハウはかなり充実してきていると思われます。

しかし、我々が注目しているのはそこではありません。 折角集客しても、コンバージョンに結びつかなければ意味がありません。 「集めた後にどうするのか?」そこが大きな課題です。 実は、最終的なコンバージョンで苦労されている企業様は非常に多いです。 商いとしては、そこでお手伝いが出来るのではないかと考えています。

私達は、リッチコンテンツによるWebホスピタリティを実現したいと考えています。 ホスピタリティとは、すなわち「おもてなし」です。 サイトを訪れた後の「おもてなし」をどのように表現するか、これを追求し続けたいです。

Q: リッチコンテンツの事例を教えて下さい

ヘアシーダ直電LIVEディランに訊け!

もうプロモーションとしては終わってしまったのですが、アデランス様の案件として「ヘアシーダ直電LIVEディランに訊け!」がありました。

これは、電話をかけて話しかけると映像の中のお笑い芸人が会話の内容に応じた行動を取るというものです。 映像内に固有IDが表示され、そのIDを利用して映像ストリームと電話による通話を関連付けています。 音声認識技術、携帯電話の普及、レスポンスの高速化などによって実現が可能になったプロモーションだと思います。

このプロモーションでは、PCで映像を見ながら電話を気軽にかけるというコンセプトが含まれています。 さらに、特定のキーワード(ヘアシーダという商品名)を電話で言うと、アデランス様のコールセンターにそのまま接続されるという仕組みも入っています。 「電話をかける」という行為への敷居を低くしたい、という狙いです。

オリックス・クレジット

オリックス・クレジット様のオリックスVIPローンカードでは、PIP(Person In Presentation)を使ったナビゲーションシステムが導入されました。 ナビゲーター付きのお申し込みに進むとFlashによるPIPナビゲーションが開始されます。

手続きの説明がスムーズに進むようになり成約率が20%向上しました。 この時は、一度に入力させる項目数や間違いを軽減させるためのチェック機構などに対しても、同時に大きな注意が払われました。 そのため、PIPがあったから成約率が上昇したのか、UIを再構築したから成約率が上がったのかについての正確なデータは残念ながら弊社の手元にはありません。 しかし、評判は良いようです。

Q: 最近のお仕事はFlash中心ですか?

弊社では、全ての案件に対して営業が付き、それぞれに対してカスタマイズされたコンテンツを制作しますが、Flashの案件は非常に多いですね。 インタラクティブ性やバッファリングが短いことがうけているようです。

Windows Media Playerでもクリックなどの処理をすることは出来るようですが、現状、Flashで行う方が簡単です。

弊社では、ストリーミングの主要フォーマットはすべて配信可能な体制を整えているのですが、実は、長い間、QuickTimeで配信したいという顧客はごく少数だったんです。 セカンドライフではQuickTimeしかサポートされていないので、セカンドライフ内展示会で映像配信を行うためにQuickTimeを久しぶりに使いました。

Q: リッチコンテンツは今後どのように発展するでしょうか

もしかすると当たり前の話になるかも知れません。 ネット&モバイル通販ソリューションフェア2008でもあまり難しい話をするつもりはないのですが、今のWebでは昔ほど「映像は重い」といった状況ではありません。 今あるWebサービスでも、アニメーションなどと組み合わせるともっと楽しくできるものは、まだまだたくさんあります。

中でもE-commerce業界は非常に遅れていると思います。 E-commerce業界が次のリッチコンテンツのターゲットになるのは当然の流れだと思います。

今まで映像は大手のプロモーションで使われるのみでした。 今後は、実際に商品を売っている人達のコマースサイト、通常の購入サイトもつかって行くべきだと思っています。

ただ、予算が合わないということがあると思うので、例えば楽天やYahooショッピングのナビゲーション部分などでリッチコンテンツを使うようなところからではないかと思っています。 細かい話では、例えば楽天がキャンペーンに使うのか、自分のところで全て揃えるのか、入っているショップ全部までリッチコンテンツ化するのかなどの話もあります。 商品一つ一つまで行けるのが理想ですが、そこまでの道のりは長いような気がしています。

Q: 映像や音声コンテンツ制作を依頼するにはお金がかかりますよね?

はい。 確かに、現状では中小企業にとっては高価であると思います。 そのため、現在リッチコンテンツを利用しているのは大手企業が中心になっています。

しかし、今後は徐々にストリーミングコンテンツ制作や配信にかかるコストが下がってくると思います。

Q: どのような要因でコストが下がっていくのでしょうか?

10年前、5年前と比べていただければ解りやすいと思いますが、ネットワークを利用するためのビット単価は大きく変化しています。 10年前ではあり得ない帯域が今では非常に安価に提供されるようになっています。 それと同時にインターネットでの映像配信も普通に行われるようになってきています。

そのため、関連ソフトウェアもストリーミングの概念を取り入れたものが多くなってきています。 例えば、新しいFlashであればストリーミングの実現が非常に簡単になっています。 弊社調査では、動画視聴が可能なFlash6以降を使っているユーザは98.81%にのぼります。 そのため、コンテンツの制作にかかる時間と費用も大幅に削減できるようになってきました。

これらの要因が重なって、今後ストリーミングに要するコストは低下していくのではないでしょうか。

Q: 御社Webに記述されている、CDNとP2Pのハイブリッドについて教えて下さい

BitTorrentの商用版であるDNAサービスとの協業です。 このサービスを使うと、CDNとP2Pのハイブリッドシステムが簡単に実現できます。 手元にBitTorrentがある人も無い人も普通に使えます。 凄く良いシステムで非常に良く出来ていると思います。

まだ正式にサービスとして使っているわけではないので何とも言えない面もあるのですが、このサービスを使うのは日本で初ではないかと思っています。 現状では、弊社のPodcastingサービスなどに実験的に使っています。

P2Pの仕組みを使うとサーバにかかる負荷が劇的に下がりますね。

参考:BitTorrentの商用版DNAサービスで協業

Q: Podcastingについて教えて下さい

Podcastingを行っていてわかったのですが、日本ではほとんどの人がポッドキャスティングを行ってくれず、PCで聞いているようです。 例えば、私のブログでは80%の人がPCで聞いていると思われます。 私の知人でPodcastingをしている人達も同様の感想を持っているようです。

そうなってしまうと、RSSでPCに運ばれてくる音声のようになってしまっています。 「持ち歩く」というポッドキャスティングの大きな特徴がなくなってしまっている状態ではないかと思います。 Podcastingというよりも、単なる音声配信サイトになってしまいます。

Q: アメリカと日本で大きな違いがあるのでしょうかね?

日本ではPodcastingというよりも、事実上PCへの音声配信がメインになってしまっている背景には通勤事情などがあるのかも知れませんね。 アメリカでは、圧倒的に車通勤が多いですよね。 そのため、音楽と触れている時間が相対的に長くなるのではないでしょうか。 例えば、AudioBookを1年で何冊読みましたか?というような調査をすると大きな違いが出そうだと思います。 まあ、良くわかりませんが。。。

Q: 日本でPodcastingが普及するには何が必要ですかね?

私の場合は、PCを立ち上げるのにかかる時間がネックですね。 あんなに待ってられないので、朝は家でPCを立ち上げないです。 携帯型RSS Podcastingデバイスがあれば、もっとPodcastingも普及するかも知れないですね。 携帯電話なのか、音楽デバイスなのか、どちらにしても5秒で立ち上がってくれる物が欲しいですね。

Q: 本日はお忙しいところありがとうございました

ありがとうございました。

最後に

終始和やかな雰囲気で、気さくにかつ明確に説明をして頂けて非常に感動しました。 今回の取材は「個人のブロガーさんの取材は初めてです」という会話から始まりました。 個人のブロガーに対して東証マザース上場企業の社長自ら時間を割いて取材に答えて頂けるという事になり大変恐縮及び感動でした。

どうもありがとうございました!

リッチコンテンツ・マーケティングの時代

織田 浩一(著), 須藤 慎一(著), 橋本 雄一 著), nikkei BPnet(編集)
協力:Jストリーム
¥ 1575 (税込)
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