Wikipediaアドミンが持つ特徴

2008/4/16-2

「Taking Up the Mop: Identifying Future Wikipedia Administrators, Moira Burke, Robert Kraut, CHI 2008(ACM)」という論文を読みました。 Wikipediaにおける管理者権限を与えられた人が持つ特徴に関して過去のデータから考察しています。 なかなか面白い内容でした。 以下要約です。

Requests for Adminship(RfA)を通過して、管理者権限を与えられる事を「成功」としていました。

全体的な傾向

Wikipediaの巨大化とともに、管理者としての仕事も増加し、管理者の数が足りなくなっているそうです。

さらに、管理者として「成功」する割合も低下していると記述してありました。

2001年から2700名が管理者としてノミネートされ、「成功率」は53%です。 ただし、2006年と2007年には43%に低下しています。 また、初期に管理者になった人は、「今RfAを受けてもうからない」と述べているようです。

データから見る特徴

今回のデータは2006年〜2007年のものを利用しています。 これは、最近の傾向を見るためであるようです。

2006年から2007年のデータでは1551件のリクエストがあり、うち49件は失敗したばかりの人だったり、ボットだったり、同じ人物による複数アカウントであるため排除されています。

各種データと「成功」の間には以下のような関係が観測されたそうです。

編集回数

記事編集回数は、あまり参考になる指標ではない。 記事編集回数1000回に対して「成功率」は1.8%しか上昇しない。 一方で、Wikipedia (policy) namespaceやWikiProjectに対する編集は、「成功」に対して記事編集の10倍の関連性があった。 例えば、1000回編集でpolicyであれば19.6%、WikiProjectであれば17.1%の「成功率」上昇が観測された。

ユーザインタラクション

記事でのtalk編集1000回に対して「成功率」は6.3%上昇した。 管理者の仕事にはユーザとのインタラクションが含まれるため、この値は当然かも知れない。 ユーザのtalk pageへの編集と「成功率」には関連が認められなかった。 Arbitation,Mediation Committee,Wikiquette noticeへの書き込みは紛争への関わりなどを表しており、ここへの書き込みは「成功率」を0.1%下げた。 「thanks」という単語を発信する事は0.3%「成功率」を上昇させた。 「Please」は「成功率」に影響を与えなかった。

コンセンサスの構築

他のRfAへの参加やVillage Pumpへの参加は「成功率」に影響を与えなかった。

コメント

編集に対するコメントがあることも要素として認められた。 コメントの長さは「成功率」に影響を与えなかった。 一部のRfA投票者は、編集者が残すコメントが100%近くなければ管理者として認めない。

将来の管理者権限委譲者を探すアプリ

論文の後半では、このような統計情報を利用して未発掘の管理者を探し出すアプリケーションが考えられると述べています。

ただ、あまりにシステム化し過ぎると、それに対してoptimizationをかけようとする人が出てくるので、痛し痒しかも知れませんね。 また、編集を頻繁に行っている人であっても管理者になりたくない人もいるので、プライバシーなどは考慮する必要があるという話も書いてありました。

感想

wikipediaの持つ力が時間と共に巨大化していっていますが、それとともに管理者にかかる負担が増えたり、政治的な意図に関わらざると得なくなったりと大変なのかも知れません。 価値や力が集約していくと、それを制御するための労力が指数関数的に上昇していってしまうのではないかと思いました。

インターネットそのものも、その力が強くなってくると「インターネットを国連で扱わせろ!」という話題が出てきました。 「Wikipediaの管理権限を国連にヨコセ!」という今では冗談としか思えない議論が、将来的には勃発してしまうのではないかと妄想してしまった今日この頃です。

いや、でもそれならばバレないように国家が編集者を大量導入して、IPアドレス等も分散させたうえでwikipedia上で編集合戦というのが定常化するんですかね。。。 というか、既に発生していそうな気もしますね。

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